トランプ大統領の外交手腕は、全体像が隠されているだけに、どこまでどう計算し、実際に何を動かそうとしているのが不明瞭なまま世界が振り回されているようである。
トランプ大統領がサウジアラビアでイスラム諸国50カ国の首脳代表をに向かって、「アメリカに頼らず、それぞれがテロと戦う必要がある。アメリカはそれを支援する用意がある。」と訴えてから約2週間。中東諸国が異例の動きをみせた。
4日、中東4諸国(サウジアラビア、エジプト、アラブ首長国連邦(UAE)、バハレーン)に続いて、イエメンが加わり、中東5国が、カタールとの国交を遮断すると発表したのである。
カタールは湾岸諸国の一つで、サウジアラビアにくっつくようにして存在する半島の国。サウジアラビア、バハレーン、UAEからの国交遮断は、まさに湾岸諸国からの村八分といえる。
これら5国がカタールと外交を遮断するの理由は、カタールが、ムスリム同胞団はじめ、ISISやアルカイダなどのテロ組織を支援し、イランとも関係して、中東の治安を脅かしているというものである。
なお、トランプ大統領は、これらのテロ組織に加え、ハマスとヒズボラも撃滅すべきテロ組織にあげていた。
Yネットによると、今回の国交遮断の発表に先立ち、カタールは、ハマスメンバーに、国外へ退去するよう、通告していた。すでに2人がカタールから出たもようである。しかし、いずれにしてもこの国交遮断が発表されてしまった形である。
www.ynetnews.com/articles/0,7340,L-4971577,00.html
なお、今のところ、カタールからの声明はまだ出されていない。
<ハマスとイスラエルへの影響>
カタールは、ハマスの主な経済的支援国である。カタールは、この4月にも、燃料不足で電気の供給が極端に少なくなったガザ地区のために、トルコとともに燃料を緊急支援してた。
そのカタールが、ガザと隣接するエジプトを含む中東5国と国交を遮断されたとなると、これはガザのハマスにとっても締め付けとなりうる。カタールの支援なしにハマスは生き残れないという見方もある。
加えて、ハマスは今、パレスチナ自治政府のアッバス議長からの締め付けも経験している。前々回お伝えした電気代の肩代わりを停止されたことで、ハマスは、深刻な電気不足にみまわれている。
また、Yネットによると、アッバス議長は、イスラエルで囚人となっていて、人質となっていたイスラエル兵のシャリート軍曹との交換で、釈放され、ガザへ送られたハマスメンバー277人への給与を差し止めたもようである。
www.ynetnews.com/articles/0,7340,L-4971474,00.html
単にハマスとファタハの内部闘争の一面と思われるが、イスラエルに関連したハマスメンバーが、対象となっていることから、アッバス議長が、トランプ大統領とイスラエルの圧力で、この給料差し止めを実施させられたのではないかとの見方もある。
しかしながら、こうしたハマスへの締め付けが、全部イスラエルにとって益になるかどうかはわからない。
たとえば、電力不足で、下水処理ができないため、ガザからは地中海に下水がどんどん垂れ流しになっている。エレツ検問所では、悪臭がただようほどだという。
最悪なことに、ガザ地区とイスラエルの境目に海水の無塩化工場があるが、採取する付近の海水が下水で汚染しているため、工場は今も操業できないままである。
また、ハマスがカタールの支援から遮断された場合、不満が爆発して再びイスラエルとの戦争になっていく可能性もあるし、
その反動でイランがハマスを支援しはじめる可能性もある。
今回の中東5国のカタール村八分政策が、ハマスにどう影響してくるのか、イスラエルにどう影響してくるかは、まだ先行き不透明である。
<保安官・中東に戻る!?>
イスラエルやアメリカのメディアでは、トランプ大統領が、前のオバマ大統領が積み上げたものを全部ひっくり返しながら、中東で影響力を取り戻そうとしている様について、「Sherif in Middle East returned.(中東に保安官戻る)」といった言い方がなされている。
保安官かどうかは不明だが、中東諸国は、イスラエルも含め、ハマスに至るまで、皆が振り回されているのは確かである。ただトランプ大統領が、どこまで計算しているのかはわからず、非常に危険なゲームをしているようでもあり、はらはらさせられているところである。
www.jpost.com/Middle-East/Analysis-Whats-the-new-US-sheriff-in-the-Middle-East-up-to-494767