今日:六日戦争から50年 2017.6.5

今日6月5日は、ちょうど50年前の1967年に六日戦争が勃発した日である。*5/24の統一記念日はユダヤ歴による記念日

神殿の丘を征服し、エルサレムが統一されたのは、3日後にあたる6月7日。戦争が終わった6月10日、イスラエルは、シナイ半島、エルサレム、ヨルダン川西岸地区、ゴラン高原を征服し、中東の地図は大きく塗り変わった。

しかし、この地域は、実際のところ、638年から今にいたるまで、十字軍とイギリス統治時代をのぞいては、基本的にイスラムの支配下にあった地域である。

日本史でいえば、大化の改新、飛鳥・奈良時代以降、つまり日本史のほぼすべての時代、ずっと基本イスラムであったということである。それをたった六日で覆した六日戦争というのは、歴史的をはるかに超えて、奇跡そのもであったといえる。

したがって政治的には、いくらこの地域を征服したとはいえ、全世界のイスラムを敵に回す恐れがあり、大々的な勝利宣言を出すことに慎重になったというのが、当時のイスラエル政府の判断であった。

しかし、このときのあいまいが、今に続くパレスチナ問題の元凶になったといわれている。

あいまいな形で征服した地をとりあつかったことで、後に国際社会からは、イスラエルは「占領」していると非難され、エルサレムを統一したことも国際法上、違法と言われる。

そういうわけで、50年たった今、イスラエルでは、「イスラエルは戦争に勝ったのかどうか」とか、「六日戦争はまだ終わっていない。」などと議論されるようになっている。

*六日戦争について

5日、BBCは、この戦争に関するビデオを出したが、6月5日にイスラエルが、エジプト空軍基地を先制攻撃した、というところから始まっていた。なぜ先制攻撃したかというところは完全にカットされている。

www.bbc.com/news/av/world-middle-east-40136166/six-day-war-what-happened-in-60-seconds

実際には、当時エジプトは、イスラエルに対する挑発をし続けており、アラブ4カ国軍が国境に迫っていて、総攻撃されることはもはや時間の問題となっていた。そのため、イスラエルは、攻撃されるのを待たずに先制攻撃することにより、圧倒的不利を有利に変えたのであった。

www.youtube.com/watch?v=H1-ZZObkSI8 六日戦争をアニメーションで説明

www.sixdaywarproject.org 六日戦争を時間を追ってビデオで紹介するサイト

<国連のイスラエル偏見を指摘:ヘイリー米国連代表>

六日戦争以来、50年もくすぶっているパレスチナ問題において、イスラエルは常に悪玉となった。国連では、イスラエルを非難する決議が圧倒的に多いという、非常に不自然なことがずっとまかり通っている。

ところが、今年、それをはっきりと指摘した人がいた。トランプ政権が、国連のアメリカ代表として指名したヘイリー代表である。

ヘイリー米国連代表は、国連の人権保護委員会についての記事の中で、「この委員会では、”人権は守られている”と記録されているイスラエルを非難する決議を70以上出している。

一方で、”人権は守られていない”と記録されているイランへの非難決議は7回しか出されていない。何かがおかしいのは明らかである。」と主張した。

ヘイリー代表は6日、ジュネーブでの人権保護委員会でこの件について発言するみこみ。その翌日7日には、就任後初のイスラエル訪問が予定されている。

www.jpost.com/Israel-News/Nikki-Haley-UN-must-stop-wrongly-singling-out-Israel-for-criticism-494670

<ネタニヤフ首相・西アフリカを訪問>

国連は、多数決が原理の組織である。その国連ではどうしてもイスラム国が多数派なので、理屈はどうあれ、常にイスラエルに勝ち目がないのである。

パレスチナ自治政府が、国へのアップグレードを目的に、イスラエルとの直接交渉をスキップして、国連へ嘆願書をもちこんでいるのもこのためである。

そこでネタニヤフ首相は昨年からアフリカ諸国に目をつけている。多数の国からなるアフリカ諸国(54カ国)の中から、イスラエルに友好的な国をできるだけ増やすことができれば、国連で有利になるとみこんでいるのである。

そのためイスラエルは、貧しいアフリカ諸国の技術支援などに投資しはじめている。結果、すでにトーゴ、ギニア、ガーナなど西アフリカ諸国が国連においてイスラエルに有利な票を投じるようになっている。

www.jpost.com/Israel-News/Netanyahu-Africa-key-to-UN-support-for-Israel-480999

ネタニヤフ首相は、4日、ECOWAS(西アフリカ諸国経済共同体)からの招致を受け、この会議で演説するため、ステイニッツ・エネルギー相や、ウリ・アリエル農業相を伴って、1日だけの予定でリベリアを訪問した。

ECOWASが、アフリカ諸国以外の首脳を招致するのはイスラエルが初めてである。

ただし、ネタニヤフ首相招致に同意しなかったモロッコは、大統領が欠席し、他の複数の国も出席代表のレベルを下げるなどしたもようである。

しかし、開催国のリベリアでは、ネタニヤフ首相は暖かく迎えられた。イスラエルは、リベリアに2000万ドルの太陽エネルギー施設への投資を約束し、ECOWASにもこの先4年で、加盟諸国のための、エコエネルギープロジェクトに10億ドル以上を投資すると約束した。

ネタニヤフ首相はWCOWASにおいて、こうした支援をする代わりに、国連ではイスラエルに好意的な票を投じてほしいということをはっきりと述べている。

なお、西アフリカは、昨今、猛威をふるったエボラ熱の収束が、昨年宣言されたばかり。今回イスラエルが多額の支援を決めたリベリアは、貧困率80%ともいわれ、世界で5番目に貧しい国。シエラレオネも、貧困から世界で最も寿命が短い国である。

www.jpost.com/Arab-Israeli-Conflict/To-avoid-bumping-into-Netanyahu-Moroccan-king-cancels-participation-in-Africa-meeting-494642

余談になるが、こうしたエコエネルギー支援は、地球の温暖化を防ぐだけでなく、政治的な利点を生み出す可能性もあるということのようである。

パリ協定を蹴ったアメリカはそれを放棄したわけで、今後、アメリカに変わってこの分野で進出するとみられる中国のアジアでの動きが注目される。

石堂ゆみ

ジャーナリスト、元イスラエル政府公認記者、イスラエル政府公認ガイド、日本人初のヤド・ヴァシェム公式日本語ガイドとして活動しています。イスラエルと関わって30年。イスラエルのニュースを追いかけて20年。学校・企業・教会などで講演活動もしています。

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