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テロなしに終わったエルサレムのヨム・キプール
一夜あけて25日、ヨム・キプールの日は、国民の祝日である。エルサレムはじめ、テルアビブも含めて、ほとんどの町で、道路を走る車の姿はほとんどない。タリートをつけたユダヤ教徒たちや、女性たちが嘆きの壁や近くのシナゴーグへ、ゆっくりと歩いていく静かな日である。
断食していることもあり、朝の礼拝を終えたあとは、家の中で寝ている人も多い。日中は特に、1年で一番静かな日といえるだろうか。からっぽになった道路では、子供たちが自転車を乗り回して遊んでいる様子が、この日の風物詩である。
以下はエルサレムの嘆きの壁の様子。裁きがおわって、罪許されて新しい年の始まりを共に喜び、断食を終わらせる時となる。
www.jpost.com/western_wall/article-760327
今年は、かなりのテロ警告があったため、警察や国境警備隊が、警備体制を強化していたが、テロについては、無事に終わった形である。
しかし、自転車などの事故での負傷者は307人、交通事故での負傷者は中等度が5人、継承が301人。救急搬送車は3025人。このうち295人が脱水など。この日に生まれた新生児は4人であった。
www.timesofisrael.com/medics-treat-over-3000-during-yom-kippur-deliver-4-babies/
テルアビブのヨム・キプールはユダヤ人同士が衝突
テルアビブは世俗派の町で、神を中心とするエルサレムと対照的に、人間とその力を謳歌する町である。
このため、ユダヤ教団体ローシュ・ヤフディが、少しでもユダヤ教の生活を経験してもらいたいと、2019年から、ヨム・キプールの終わりに、町の中心地で合同の祈りのイベントを開催するようになっていた。
いわば、世俗派ユダヤ人へのユダヤ教宣教活動のようなものである。
しかし、実際のところ、テルアビブでも、ヨム・キプールだけは守る、断食するという世俗派は多いことから、これまでは特に問題になることもなく、2000人程度の参加で、イベントが行われてきたようである。
ところが、今年は、司法制度改革問題を通して、右派宗教派と左派世俗派の間に、大きな亀裂が生じている。そのためか、これまでのイベントでは、問題なく、ユダヤ教の教えに従い、座席が男女別とされ、その間に分離壁が設置されても問題なかったのに、今年は、これに反発する声が出るようになっていた。
先月、テルアビブ市は、市の声明として、公共の場で、男女の席を分けるだけでなく、その間に分離壁を設けることは禁止すると発表。これを受けて、主催側ローシュ・ヤフディ側は、それは自分達の宗教的な規定に合わないからと今年はイベントを中止すると発表した。
宗教的価値観と世俗的価値観:反司法制度改革デモの影響
この問題について、テルアビブの地方裁判所は、市内で公に行うイベントを、宗教的な違いを理由に中止することは認められないと発表。加えて、公の場での男女間の分離壁設置は認められないと発表した。それが受け入れられない人は、市内に多数あるシナゴーグ(男女区別がある)に行くようにと付け加えた。
これについては、2000年に、最高裁が、公の場で交通を著しく妨害するイベントの場合、男女隔離の強制は違法であるとの判決を出していたことに基づいている。
しかし、この後、ローシュ・ヤフディは、人々から祈りを取り上げることはできないとして、方針を変え、イベントの中止声明を撤回。24日夕刻と、25日午後に予定されていたイベントの準備を開始した。
ところが、男女の席の間にはやはり、分離壁が設置されたことから、リベラル派たちが怒りを爆発。数百人が、「恥を知れ」などと叫びながら、準備さされていた椅子や、旗などを撤去し、言い争い、もみあいとなり、24日(日)の夜のイベントは結局中止となった。この騒動で、リベラル派の一人が一時、警察に、数時間だが、拘束された。
25日(月)のヨム・キプール最後のイベントも同様に、中止となった。こうした抗議行動に出た人たちは、司法制度改革に反対するデモに参加している人々であった。こうした衝突は、ヤッフォ、ハイファ、ヘルツエリアなどの地域でもみられたとのこと。
1年で最も神聖な日とされる日に、ユダヤ人同士が争う、悲しい様相となった。
*ユダヤ教でも改革派など男女ともに座るグループもある
כיכר דיזנגוף ת"א: עימותים בין חילונים למנכ"ל ראש יהודי, ישראל זעירא. pic.twitter.com/uChFOxhwRa
— חזקי ברוך (@HezkeiB) September 24, 2023