ユダヤ教では、8月2日(土)安息日日没から、ティシャ・べ・アブ(アブの月の9日)に入り、3日(日)日没まで断食する。この猛暑の中、食べ物も飲み物も断つことになる。
この日、ユダヤ人たちが覚えるのは、紀元前423年にエルサレムにあった神殿が、バビロンによって破壊されたこと。またその後、再建した第二神殿もまた、紀元後70年にローマ帝国によって破壊されたことである。
しかし、それだけではない。紀元前1313年、出エジプトで約束の地に入る直前、モーセが遣わした12人のスパイがネガティブな報告をしたため、ヘブル人たちは、約束の地に入れなかったことも覚える。
また、133年に、ローマ帝国との戦いの際に立ち上がったバルコフバがベイタルの戦いで敗れ、ユダヤ人の敗北が決定したこと。
その他には、1290年にイギリスにいたユダヤ人が追放されたこと、1492年にスペインにいたユダヤ人が追放されたことも覚える。いずれもが、ユダヤ暦のティシャベ・アブに起こったと考えられている。
国難を覚える日なので、ユダヤ人たちは、断食をしながら、エレミヤが、第一神殿崩壊を悲しんだときに書いた哀歌を読んで、主の前に出る。そうして、①悔い改め、②神に近づき、③感謝をささげるのである。
「主よ。あなたのみもとに帰らせてください。私たちは帰りたいのです」(哀歌5:21)神との関係が回復する。新しい一歩をスタートするということである。
www.chabad.org/library/article_cdo/aid/144575/jewish/What-Is-Tisha-BAv.htm
石のひとりごと
神戸には、ユダヤ教のシナゴーグがあり、昨日、久しぶりに行ってきた。イスラエルから複数の旅行者の家族が集まって、安息日の時を過ごしていた。異邦人のクリスチャンだと知りつつ、暖かく迎えてくれて、心が温まる思いだった。
一つの家族は、最近、イランのミサイルで家を破壊された家族だった。幸い、家族は全員無傷だった、奇跡だったと皆で喜んでいた。イスラエルでは、今、家を修理中だという。どうぜホテル住まいなので、日本に旅行に来たとのことだった。日本には、8月26日まで滞在するとのこと。
この家族の父親は、アイアンドーム(迎撃ミサイル)の開発エンジニアチームの一人とのことだった。本当に元気な笑顔で、日本に来れてよかった、日本人に感謝すると話しかけてくれた。家が破壊された怒りや悲しみの色は、全くなく、こちらの心が温まるような笑顔だった。
シナゴーグでは、今日夜から、共に断食して、ティシャ・べ・アブを覚えるとのこと。
アメリカのラビ・フォールマンは、ティシャ・べ・アブのティーチングの中で、イスラエルの全ての苦難(多くは不信仰という失敗からくる)には、別の一面、そうはならなかった場合があると教えている。
私たちなら、過去を悔やんで、落ち込みそうな気がするが、ユダヤ人たちは、逆に、将来にやってくる苦難にもそういう可能性(別の一面)があると知って、これまでの失敗を悔い改めるとともに、逆に、将来への希望にするのである。
イスラエルは今、ガザ問題で、世界中から非難され、さまざまな失敗は、国内からも指摘されるようになっている。しかし、悲観して、落ち込む様子はない。
サル外相は、「イスラエルが滅ぼされることはない」と言っていた。「私たちには悲観的というぜいたくはゆるされていない」という、かつてのゴルダ・メイヤー首相の名言そのものである。
今日、非常に苦しい状況の中でイスラエルでは、ティシャ・べ・アブを迎えている。人質家族たちはどんな思いだろうか。
実際のところ、心理学者は、安息日など例祭を守る中で、主を覚えることが、イスラエル人たちを支えていると言っている。
今日、苦難の中で、イスラエル人たちが、主に立ち返っている。主がどのようにこれから導かれるのか期待したい。
