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ゼレンスキー大統領とベネット首相電話会談:イスラエルは動かず or 動けず
上記のように、キエフへの戦闘が始まる前日の24日、ベネット首相はゼレンスキー大統領と電話で会談し、イスラエルは、ウクライナの人々とともに立っていると伝え、人道支援を申し出たと首相付は報じた。
しかし、その直後、イスラエルのテレビメディア、カンが、ゼレンスキー大統領は、ベネット首相に、イスラエルとロシアとの深い関係を使って、エルサレムで、両国の仲介交渉をしてほしいと要請したと伝えた。ゼレンスキー大統領は、ロシアの提案によるベラルーシでの交渉(代表団を派遣するとの交渉)には、乗り気でなかったとのこと。
イスラエルには、実に多くのウクライナ出身者がおり、多くの家族がまだウクライナにいる。一方で、ロシアにも家族を持つ市民も多い。また、イスラエルは、イランから自衛するためにロシアの機嫌を損ねることがどうしてもできない。ウクライナとロシアの仲介交渉は、議会も承認しなかった。結局、この時も、ベネット首相は、ロシアを名指ししないで、人道支援の話だけになったということである。
www.ynetnews.com/article/bktehn8x9
いずれにせよ、この翌日、首都キエフへの攻撃が始まったので、もはや時を逸したといえるだろう。
ロシアが在モスクワ・イスラエル大使を召喚:なぜ“ナチス”を支援する?
右派で、ディアスポラのユダヤ人への想いはかなり強いと思われるベネット首相が、ここまでになってもロシアを名指しで非難しない、要請に応じてウクライナを助けに行かないということは、その背後にあるイスラエル本国への危険性が、予想以上に高いのだろうと思う。
イランの脅威は、もう目の前なのであり、その拠点となっているシリアでの防衛活動を、ロシアに妨害されたら、イスラエルが手に負えないほどの脅威にとりまかれることになる。
しかし、同時に、ウクライナへの想いも伝えたいことと思ったのだろう。ベネット首相は、ロシアを名指し非難しない中、おそらくは相談の上、ラピード外相が、はっきりとロシアを非難する声明を出していた。
ところが、25日、ロシアのミハエル・ボグダノフ副外相が、在モスクワのイスラエル大使、アレキサンダー・ベン・ツビ氏を召喚。ラピード外相の発言をあげて、「イスラエルはなぜ“ナチ”を支援するのか」と苦言を伝えた。
ロシアは、ウクライナを麻薬中毒やナチスのように悪いとし、侵攻は、“反ナチ”のためと主張しているのである。
ボグダノフ副首相は、イスラエルに、ロシアの行動を理解してくれるものと“希望”していると、なんとも強迫的な言い方をしたという。さらには、イスラエルのユダヤ人大使に向かって、「第二次世界大戦中の歴史的事実(ホロコースト)は保護しないといけないだろう」と言ったとのこと。
www.timesofisrael.com/russia-summons-israeli-envoy-said-to-ask-why-are-you-backing-nazis/
石のひとりごと
イスラエルの立場は本当に難しい。ロシアは非常に冷酷に、イランというイスラエルにとっての急所とともにホロコーストという題材まで出して、イスラエルが動けないようにしている。なんとも恐ろしいほどの計算である。
今、西側諸国は、先制主義という非聖書的な勢力におされまくっているという状態にみえる。イスラエルは、いわばこの西側の聖書的勢力の先鋒に立っているような国である。下手に動けば、真っ先に攻撃対象になり、その際は、ロシアにイランも加わってくるだろう。
このままエゼキエル戦争になるというような声もあるが、今の所、トルコがじわじわとイスラエルに接近しているので、そこは少し違う部分でもある。しかし、それはどうなるかはまだわからないので、今後、特にロシアとイスラエルの関係がどうなっていくのかは、注目していかなければならない点である。