シリアでは先週末から、首都ダマスカス周辺やアレッポなどで、政府軍と反政府勢力が激戦を繰り広げている。反政府勢力によると、アラブ同盟諸国から高度な武器の供与を受けたという。欧米からの供与はまだ確認されていない。
<カタールでアラブ同盟とケリー米国務長官>
22日、カタールのドーハで、アラブ同盟(湾岸アラブ諸国を中心とした穏健派アラブ諸国同盟)と、ケリー米国務長官がシリアに関する会議を行った。
両者は、できうる限りの手を尽くして(武力供与も含む)政治的解決を目指すということで同意した。アメリカが武器を供与するかどうかはまだ不明。しかし、ケリー国務長官は、改めてシリア情勢の危険性について警告する発言を行った。
アメリカは現在、ヨルダン政府の要請に基づいて、アメリカ軍精鋭部隊900人とF16戦闘機をヨルダンとシリアの国境に待機させている。ヨルダンが恐れるのは、シリアが国境のシリア難民キャンプに対して化学兵器を使うことである。
<目指すはアサド大統領の大政奉還>
ところで、反政府勢力への武器供与の目的は、アサド政権を打倒するということではない。ロシアの支援を受けて現時点で圧倒的に上回っている政府軍の軍事力に対し、反政府勢力の軍事力を上げてバランスととるということである。
日本ではかつて徳川幕府が、軍事的な力をつけた薩長にせまられて政権を返上するという大政奉還が行われた。アメリカが目指すのはそういう政治的移行である。
<イスラエルの元モサド(イスラエル諜報機関)長官の見解>
シリア情勢とは直接関係はないが、上記のように、アラブ同盟とアメリカがかなり接近している。これはアラブ同盟がイスラエルに対してもこれまでになく柔軟になっている可能性を指している。
元モサド長官のメイール・ダガン氏は、アラブの春以降、中東が予測不能になっているが、それは危険がせまっているのではなく、イスラエルにとっては地域で新しい関係を築くチャンスの時だとの見解を語った。
その上で、イスラエルは今、早急にアラブ同盟が提唱するイスラエルとパレスチナの和平案を再検証し、そこから交渉する道を真剣に探るべきだと語った。