シリアの内戦は6年目となる。もともとシリア人とシリア政府の内戦のはずであったが、まずは様々なテロ組織が入り込み、ISISが登場してきた。これにより、アメリカと有志国、ロシア、イラン、トルコなどがからむ代理戦争に発展し、さらにはその構図が変化し、複雑化がすすむ一方である。
1)イランがISISへ地対地中距離ミサイル
19日、イランがイラン領内からシリアのISISをターゲットに地対地中距離ミサイル(射程700キロ)7発を発射した。イラン革命軍は、これは、6月7日にテヘランの市議会などが主撃され、17人が殺害された(ISIS犯行声明)ことへの報復だと発表した。
www.timesofisrael.com/iran-launches-missile-strike-into-syria-for-tehran-attacks/
イスラエルの報道によると、実際には、ミサイル7発のうち目的地に達したのは2発で、2発は目標をかなりはずし、3発はイラクに着弾していたもようである。
しかし、攻撃自体がどこまで成功していたかとは別に、イランが、中距離ミサイルを使用するのは30年ぶりであったことが注目されている。「イランは報復する」というメッセージをISISだけでなく、敵対するアメリカとその友好国にも誇示した形である。
また、イランは、これまでシリアで、アサド政権とロシアに協力して大きな犠牲をはらってきたにもかかわらず、最終的に中東で支配力を発揮するのは、イランではなくロシアになる様相になってきた中、イランの存在感を主張したとの見方もある。
www.presstv.ir/Detail/2017/06/19/525815/Iran-Syria-missile-strike-Daesh-Dayr-alZawr-terrorism
2)アメリカがシリアの戦闘機、イラン製ドローンを撃墜
イランがシリアへ中距離ミサイルを撃ち込んだ数時間後、シリアのISIS支配域上空で、アメリカの戦闘機がシリアの戦闘機を撃墜した。初めてのことである。
これを受けて、シリアとロシアは、互いに戦闘機の衝突を避けるためにアメリカとかわしている合意を破棄した。さらにシリア上空に入ってくるアメリカとその有志軍の戦闘機を撃墜する脅迫もしている。
www.nytimes.com/2017/06/19/world/middleeast/russia-syria.html
95e87428-54ca-11e7-9e18-968f6ad1e1d3_story.html
これに続いて火曜、アメリカはシリア上空で、イラン製のドローンを撃墜した。同様のイラン製ドローンは、8日にも、アメリカが支援する反政府勢力に爆弾を投下したため、アメリカに撃墜されている。
アメリカがシリアの内戦に徐々に深みに入りこみはじめているとみられている。
こうした中、ニューヨークタイムスは、イスラエルがゴラン高原で、軍事的にも反政府勢力を支援してアサド政府軍やイランが近づかないようにしていると伝えた。イスラエルは、今も極秘にシリア難民を救出する働きは継続している。
イスラエルとしてはできるだけ関わりたくないが、大きな戦いがすぐそばで繰り広げられているため、まったく関わらないというわけにもいかなくなりはじめている。