シリア・クルド人をめぐるアメリカとトルコ対立 2019.1.17

<アメリカとトルコの対立>

トランプ大統領が、シリアからの米軍撤退を宣言し、今はまだ機材だけではあるが、すでに撤退を開始していることは、前回お伝えした通りである。

米軍の撤退で、まず懸念されることは、トルコがクルド人領域に攻め入ることである。もしそうなると、トルコがクルド人地域を制覇するか、または、クルド人がシリア政府に助けを求めることで、地域はシリアに取り込まれることになる。

いずれの場合でも、クルド人の地域がイランの影響下に置かれるようになることを意味する。このため、イスラエルと中東は、シリアから米軍が撤退することに懸念を表明したのであった。

これを受けて、トランプ大統領は、ツイッターにて、トルコにクルド人地域を攻撃しないよう要請すると同時に、もし攻撃したら、トルコは経済的に大打撃をうけることになると脅迫も付け加えた。また、米軍はシリアから撤退しても地域にはまだ十分な戦力があるので、すぐに戻ってトルコを撃退することが可能だと付け加えた。

またこの直後には、クルド人勢力に対し、トルコを攻撃しないよう自制を促すメッセージを発した。

この翌日、トルコリラの価値は、アメリカドルに対し、1.6%も落ちた。トランプ大統領は、8月にアメリカ人牧師をトルコが逮捕した一件で、トルコに経済制裁を始めているが、これに上乗せしてまたトルコ経済に新たな困難を与えたことになる。

トルコのエルドアン大統領は、トルコにとってシリアのクルド人勢力(YPG)はテロリストであるという事情を、アメリカには、地域での戦略的パートナーとして理解していただきたいと反論した。

<シリア北部クルド人地域での自爆テロ:米兵ら含む18人死亡>

エルドアン大統領はこの後、アメリカに対し、シリアとトルコの間に20マイル(32キロ)の非武装地帯を提案。公式ではないが、アメリカもこれに合意したとの情報がある。

この非武装地帯には、クルド人勢力域の大きな部分がこの中に食い込まれてしまうため、クルド人勢力はこれに反発していると伝えられた。

www.telegraph.co.uk/news/2019/01/14/donald-trump-warns-turkey-economic-devastation-kurdish-forces/

こうした中、16日、入ったばかりの情報だが、シリア北部、クルド人勢力で、トルコ軍がすぐ近くまで迫っている町マンビジで、大きな自爆テロが発生。18人が死亡したが、この中に米軍兵士が複数含まれていた模様である。

このテロ事件については、ISが、「PKK(トルコがテロ組織と対立するクルド人勢力)離脱者」との協力で決行したとの犯行声明を出している。現時点ではまだアメリカからの反応に関する報道はない。

www.bbc.com/news/world-middle-east-46892118

<ケニアで自爆テロ犯(14人殺害)エルサレム問題でトランプ大統領を非難>

トルコとは関係ないが15日、アフリカのケニアの首都ナイロビのホテルで、アルカイダ系組織によるテロが発生。14人が死亡した。犠牲者の中には、9:11事件を生き延びたアメリカ人(ユダヤ人)が含まれていた。

犯行声明はアルカイダ系組織が出したが、この時、エルサレムをイスラエルの首都と宣言したトランプ大統領を非難している。

www.timesofisrael.com/kenya-terror-group-says-deadly-attack-over-trump-recognition-of-jerusalem/

<恐るべし豪傑:トランプ大統領>

絶大な権力と影響力で世界を振り回しているトランプ大統領。御歳72歳だが、世界中の注目あびつつ、バッシングをうけるとともに、アメリカ国内からも、政府の一部閉鎖が史上最長になって、批判が高まっている。

政府機関の一部閉鎖は、メキシコとの間の防護壁建設資金を含んだ予算を民主党が受け入れなかったために、新予算案がまだ稼働できないためである。しかし、粘っている間に、どうやら、国民の間で、トランプ大統領の意見を支持する割合が上がってきているらしい。

しかし、政府機関の一部が閉鎖になっていることで、ホワイトハウスのキッチンも稼働できなくなっているらしく、ホワイトハウスに招かれたアメフト全米優勝校選手たちに、ふるまった料理は、マクドナルドや、バーガーキングからのハンバーガー300個やピザなど、ファーストフードであった。しかも、トランプ大統領の自腹だったという。

その際、トランプ大統領は、「これがアメリカの食だ。どれもすばらしい。」と言ったという。豪傑とはまさに彼のことではないだろうか。

www.businessinsider.jp/post-183252

石堂ゆみ

ジャーナリスト、元イスラエル政府公認記者、イスラエル政府公認ガイド、日本人初のヤド・ヴァシェム公式日本語ガイドとして活動しています。イスラエルと関わって30年。イスラエルのニュースを追いかけて20年。学校・企業・教会などで講演活動もしています。