サウジアラビアの反体制派カショギ記者がトルコのサウジ大使館で殺害されたとされる件について、CIA(アメリカ中央情報局)は16日、様々な証拠からモハンマド・ビン・サルマン皇太子の指示によるものであったと断定するコメントを発表した。
しかし、トランプ大統領は、CIAの調査結果にもかかわらず、「CIAが断定したわけではない。」とし、今後もアメリカとサウジアラビアとの同盟関係が崩れることはないと発表した。サウジアラビアへの武器の調達にも変化はないと言い、物議をかもしている。
この件に関して、これまでにアメリカ、イギリス、ドイツ、最後にフランスが、サウジアラビア人18人に対し、制裁措置をとっているが、とりあえず、この中にモハンマド皇太子は入っていない。しかし、皇太子への視線は以前厳しいままである。
11月末には、ブエノスアイレスで、G20が開催予定で、サウジアラビアからは、モハンマド皇太子が出席予定となっているが、皇太子にはさぞ気まずい時になりそうである。
<なぜモハンマド皇太子が疑われるのか>
カショギ記者は、反体制派ジャーナリストで、2017年からは、ワシントン・ポストに、モハンマド皇太子を批判する記事を発表していた。
しかし、サウジアラビア当局は、モハンマド皇太子の関与を否定。サウジのジュビエル外務相は、「トルコが証拠をもっているというなら、それを出していただきたい。そうすればはっきり釈明する。なぜださないのか。証拠がないからではないか。」と強く反発している。
www.bbc.com/news/world-us-canada-46309654
モハンマド皇太子には、もう一つの課題がある。イエメン問題である。サウジアラビアは、イエメンと舞台に、イランとの代理戦争の真っ最中である。この戦争に関わっているのがモハンマド皇太子とされる。
イエメンでは、長引く戦闘で、イエメン市民たちが餓死している。アメリカのペンタゴンでは、マティス国防相が、イエメンでは、2015年以降、5歳未満の子ども約8万5000人(セーブ・ザ・チルドレンの調査データ)が、餓死したとして、来月、スウェーデンで和平会議を開くと発表した。
イエメンでの戦争による飢餓はすさまじく、1400万人が餓死するおそれがあるという。
www.nytimes.com/2018/11/21/world/middleeast/yemen-famine-children.html
<サウジアラビアの没落はイスラエルにも問題?>
このように、サウジアラビアの現状は、非常に厳しく、アメリカとしても、これを擁護することはできにくいというところだろう。
しかし、トランプ大統領は、「サウジアラビアが、中東では唯一アメリカに軍大きな基地を提供するなど、大きな助けになっているとして、実質を考えれば、サウジアラビアを失うことは得策ではない。」と言っている。また、サウジアラビアを失うことは、イスラエルにとっても大きな損失になると語った。
サウジアラビアは、アメリカとイスラエルにとって、イランへの対処を考える時に、失いえない同盟国なのである。
この件について、イスラエルの反応は、カショギ記者殺害の件が明るみに出た際、「イスラエルが、アメリカにサウジアラビアとことを構えないよう要請した。」というニュースが流れた。その後、ネタニヤフ首相が、「殺人は恐ろしいことではあるが、サウジアラビアの安定を維持することも必要だ。」とコメントしている。
アメリカは、モハンマド皇太子個人を擁護する必要はないのではないかとの声もある。もし後に、モハンマド皇太子がこの件に、本当にかかわっていたことが明確になったら、アメリカが犯罪を黙認したことになるからである。モハンマド皇太子は擁護せず、サウジアラビアそのものは擁護することは可能ではないかという意見である。
しかし、今のところ、トランプ大統領は、大きな目的達成のために、モハンマド皇太子の容疑を黙認する立場をとっている。もし将来、この件からサウジアラビアが、危機に陥ることがあれば、アメリカとイスラエルも共に危機に陥る可能性が出てくるということである。
www.timesofisrael.com/trump-israel-would-be-in-big-trouble-without-saudi-arabia/