横浜沖クルーズ船に乗船しているイスラエル人15人のうち3人から陰性反応が出た。
先にイスラエル人女性1人が病状悪化で下船していたが、陽性反応は出ていなかった。しかし、その後、2人から陽性反応が確認された際に、この女性からも陽性反応が確認され、イスラエル人でCOVID−19に感染した人は、16日現在で3人となった。
Times of Israelによると、船に残されている、今の所検査されていないイスラエル人12人の一人、シャルバ・ダーランさんは、「とにかくここから出してほしい。帰国後1ヶ月隔離されてもいい。なぜここに置いたままにするのか。」と緊急に船から救出するよう政府に訴えている。
イスラエルにいる家族の葛藤も大きい。
母と妹が船にいるヨニ・レビさんは、「政府の(乗船者の帰還陽性に対する)動きは遅すぎる。国を必要としている時に国は役立たずだ。」、両親が船にいるラフィ・ダーハンさんは、「最初から対処が間違っていたことは明らかだ。情報が届かない。」と、遠くにいるがゆえの怒りや無力感からの葛藤を述べている。
www.ynetnews.com/article/ryNNAWPmI
3人の陽性が発表されてから、イスラエル国内のテレビニュースでもこの問題が、トップニュースになっている。
www.mako.co.il/news-world/2020_q1/Article-92ee41f1adf4071027.htm?sCh=31750a2610f26110&pId=173113802
*アメリカ、カナダ、オーストラリア政府が自国民救出を表明
アメリカ政府は、ダイアモンド・プリンセス号にいるアメリカ人約400人の中から、ウイルス反応が陰性で、健康上問題がない人々をとりあえず帰国させるとして、特別機2機を派遣した。船からの移動は、自衛隊がバス約20台を準備して実施する。この記事が出ることはすでに移動が始まっていることと思う。
アメリカに続いて、カナダ、オーストラリアが同様に自国民の救出を申し出たとのこと。
イスラエル政府は、こうした動きに先立ち、イスラエル人の帰還について日本政府の許可を仰いで拒否されていた。アメリカは独自で決めてしまい、そうなると日本は協力せざるをえないようである。こうした経過からも、イスラエルにいる関係者家族の怒りが爆発しているものと思われる。
しかし、これについては、移動中に感染する可能性もあり、アメリカ人乗客の中からは、この迎えに応じたくないと言っている人もいるとのこと。
www.youtube.com/watch?v=3kpVKK-Eng8
また、COVID-19の感染力が、予想以上に強く、十分な防護服下でも感染の可能性が否定できないことから、船から帰国させることで、各国にウイルスを逆に持ち帰る結果になるのではないかとの懸念も出ている。
www.ynetnews.com/article/rJFvFA87I
日本政府は、船の隔離が始まって2週間になる19日以降、陰性の乗客は下船させる計画だが、2週間の間に、逆に大きな感染源を作ってしまったのではないかとの批判が出始めている。
先週、カンボジアが、日本や台湾から寄港を拒否されたクルーズ船ウエステルダム号を受け入れ、乗客全員を下船させたが、案の定、下船してマレーシアへ移動したアメリカ人乗客から陽性反応が出た。カンボジアが観光まで促したため、どこまでウイルスが広がっているかはただ懸念されるのみである。
<イスラエル政府の対処>
イスラエルは、通常、大地震などでは、どの国よりも早く、自国民を救出に行くが、今回は、むしろスローな感じである。
イスラエル国内には今は、まだ陽性反応者はでていないことから、国を守るという最優先事項の上に、状況を慎重に見守っているのかもしれない。しかし単に他の治安問題や、総選挙などで、忙しすぎるのかもしれない。家族の葛藤はここにある。
ネタニヤフ首相は、ウイルス反応が陰性で、病状もでていないイスラエル人は帰国させ、イスラエルで隔離するとの方針を明らかにしている。具体的な動きについては、まだ伝えられていないが、健康相高官が日本に到着し、現在、交渉がすすめられているとみられる。
国内では、シェバ・ホスピタルで準備されている感染者を収容する臨時病棟が準備されている。
<タイ、香港、シンガポール、マカウからの帰国者も自主隔離義務付けへ>
イスラエルでは、中国から帰国した人は、2週間の隔離が義務付けられているが、16日、健康省は、これにタイ、香港、シンガポール、マカウを加えると発表した。これらの国から帰国したイスラエル人は、自宅待機など義務付けられる。
この中に日本が入っていないことから、イスラエルは慎重に、クルーズ船の感染と、日本国内での感染状況を見極めているのかもしれない。報道によると、シェバ・ホスピタルなどの大きな病院で、テント張りの隔離病棟がすでに準備されている。
www.ynetnews.com/article/Sk9iAA8m8
チャンネル12のニュースインタビューによると、これらの国々へ今から出国するイスラエル人たちは、ともかくも行くようだが、混乱と不安を訴えつつも、「いまのところは行くかな・・」という反応であった。
18日朝には、該当国からさっそく帰国者がイスラエルに到着した。その人々は、元気そのものだが、2週間、仕事を休むなど自主的な隔離をすることになる。健康省の言うことには従うしかないかなと、失笑しながら言っていた。
<石のひとりごと>
日本では、感染者やその疑いのある人は、顔も名前も公開されていないが、イスラエルでは、全部オープンで、それについて疑問を持つ人は全くないようにみえる。おそらく、感染したとしても、冷たい目で避けられることもないのだろう。陰気な感じはほとんど感じられない。
とはいえ、アジア人への目は違ってきつつあるようでもあるので、やはり、これもイスラエル人どおしの不思議な結びつきの表れのひとつだろうか・・・。