キーフ近郊ロシア軍による市民虐殺:ラピード外相も戦犯と非難 2022.4.4

Neighbours gather next to a mass grave in Bucha, in the outskirts of Kyiv, Ukraine, Sunday, April 3, 2022. (AP Photo/Rodrigo Abd)

キーフ周辺で市民への虐殺発覚:戦争犯罪追及の機運

ロシアとの間の微妙な関係にあるイスラエルだが、もはやロシアの行為が、戦争犯罪の域に入ってきたためか、もはやベネット首相による仲介といったニュースはほとんど出てこなくなった。首脳会談も今はトルコが積極的に、場所の提供に乗り出している。

こうした中、ロシア軍が首都キーフ周辺から撤退しはじめ、イルピン、ホストミル、ブチャで、制圧中にしていた恐ろしい虐殺行為が明らかになってきた。

報道によると、キーフ周辺で、ウクライナ市民430人分の遺体が確認されたが、このうち21人はブチャの路上で発見されている。9人は、近距離から銃撃され、少なくとも2人は、両手を後ろ手に縛られていたという。

www.timesofisrael.com/430-bodies-ukraine-accuses-russia-of-massacre-city-strewn-with-bodies/

破壊された車に縛り付けられているもの、暴行されて殺され、その後、火で焼かれたとみられる女性の遺体もあったという。また、ビニールに入れられ、細い穴に置かれていた遺体もあった。

ブチャでは、集団埋葬か、280人の遺体が、松林の間にある穴に放り込まれているのをウクライナ軍が発見している。まるで、第二次世界大戦の時のような光景に世界中が震撼させられている。

ゼレンスキー大統領によると、撤退したロシア軍は、遺体の付近や建物の周辺などに地雷を埋めているらしく、家に戻ろうとする市民に警告を発している。せレンスキー大統領は、これはロシアによる「ジェノサイド(大量殺戮)」だと、世界に訴えている。

www.timesofisrael.com/ukraine-retakes-towns-where-280-receive-mass-grave-burial-20-left-dead-on-street/

この様子を受けて、国際社会の指導者たちは、次々に犯罪という言葉でロシアを非難する声明を出している。またロシアの天然ガスに依存しているヨーロッパだが、それを購入したら、殺戮に加担することになるので、もう購入してはならないといった声も出ている。

ところで、武装していない民間人を殺害する行為は、戦争犯罪をみなされ、ICC(国際刑事裁判所)が捌くことになる。ロシアとウクライナは加盟国123カ国には含まれていないのだが、ICCは個人を裁くので、プーチン大統領が戦争犯罪を問われる可能性はあるという。

しかし、その場合、プーチン大統領が、実際に国際法廷に出廷しなければならず、そのためには、国外に出て逮捕される必要が出てくるので、まだどうなるかは不透明である。いずれにしても、ICCは、捜査を開始したとのこと。

ロシアは、これについて否定しており、ウクライナによる宣伝だと反論している。

イスラエル外務省はコメントを控えたが、ラピード外相は、3日、恐怖の「戦争犯罪」と、まともにロシアを非難する声明を出した。

www.timesofisrael.com/lapid-says-scenes-from-ukraines-bucha-horrific-targeting-civilians-a-war-crime/

ウクライナ情勢まとめ:4月4日

ロシアがウクライナへの侵攻を開始して6週間目に入った。ウクライナ軍が西側諸国の支援を受けて、意外にも善戦を続けており、キーフそのものは陥落せずに、ロシア軍を撤退させた形である。アメリカがウクライナ軍に戦車(旧ソ連製)を支援するとの情報もある。

一方、ロシア軍は、その武力では圧倒的に強大であるにもかかわらず、後方支援がうまく行かないことや、無計画であるのか段取りが悪いこと、武器も最新ではないと分析が出ている。

チェルノービリ周辺もウクライナ軍が奪回したが、ロシア兵が甚大な放射能汚染を受けていたもようで、IAEAが調査に入ることになっている。放射能漏洩が懸念されるとことろである。

しかしながら、その分、南東部での戦闘は激化しており、特にマリウポリでは、赤十字の人道支援や、人道回廊も十分に機能できない様相になっている。マリウポリはもうすぐ陥落するとみられているが、中にはウクライナ市民10万人がまだ、市内に残されたままである。

ロシア軍は、今南東部地域の支配を狙っているとみられているが、4日、これまでまだ攻撃対象になっていなかったオデッサの燃料貯蔵施設などにミサイルが撃ち込まれた。ウクライナとモルドバとの国境、沿ドニエステル共和国にいるロシア軍に動きがあるとの情報もあり、緊張が高まっている。

こうした中、ウクライナ軍が、ウクライナとの国境に近いロシア領内ベルゴロド州の燃料施設を攻撃したとのニュースが流れた。ウクライナ軍はこれを否定も肯定もしないとしている。オデッサへの攻撃や、ウクライナ軍がロシア領内を攻撃したとするならば、戦争が新たなステージに入ったかもしれないと専門家らは、解説している。

なお、これまでのウクライナ人の死者は、国連によると、キーフ近郊での虐殺が明らかになる前の3月29日時点で、少なくとも1100人。国外へ避難した人は、400万人を超えた。受け入れ側にも限界が来つつある。

news.un.org/en/story/2022/03/1115042

ロシア軍の死者は、ウクライナ側は1万8000人といっているが、NATOは、7000―1万5000人とみている。

www.cnbc.com/2022/04/02/russia-ukraine-live-updates.html

石のひとりごと:アメリカについて

テレビでは連日、この話題でさまざまな専門家が解説をしている。その中で、慶應義塾大学の政治学者、廣瀬陽子博士が、今回の戦争が、2008年以来、2014年のクリミア半島での戦争、またその後、鍵となる時々に、アメリカが効果的に介入してこなかったことが原因だと思うと指摘していた。

今も、アメリカは、世界ダントツの大国であるにもかかわらず、ウクライナに資金や、軍事物資を支援するだけで、外交的な動きはほとんど見えてきていない。逆にバイデン大統領は、プーチン大統領を怒らせるような発言をしているだけである。アメリカは、ロシアを軍事的に敗北させることで、この問題を解決しようとしているのだろうか。

そうではなく、たとえば、NATOの代表としてのアメリカが、外交的にロシアと話し合い、互いに攻撃はしないとの保証で合意するなどの外交努力が可能ではないかとも考えられるわけである。

しかし、そういう動きはなく、逆に今、アメリカは、ウクライナに戦車を送るとの情報もある。これはもう、ロシアが降参しない限り(今はあり得ないとおもわれるが)、戦争が続いていくとしか考えられないわけである。

一方で、マリウポリやキーフ周辺の破壊の凄まじさを見ると、もはやこれは話し合いとかの人間的レベルの話ではなく、背後にサタンの影響も感じざるを得ない。

やはり、世界は、今、クリスチャン国代表のようなアメリカが、不在に向かう時代に突入しており、ウクライナでの戦争は、ひょっとしたら、ただ終末の混乱の世の入り口であって、今後、世界には、混乱が拡大してくのではと、ぼんやりだが、緊張させられている。

石堂ゆみ

ジャーナリスト、元イスラエル政府公認記者、イスラエル政府公認ガイド、日本人初のヤド・ヴァシェム公式日本語ガイドとして活動しています。イスラエルと関わって30年。イスラエルのニュースを追いかけて20年。学校・企業・教会などで講演活動もしています。