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ガザでイスラエルにとって非常に難しい悲劇的なことが起こった。人道支援をしていた国際団体の7人が、イスラエル軍によるとみられる空爆で死亡したのである。
まだ断定はされていないし、イスラエル軍が人道支援の車両を狙うとは考えられない。しかし、このままであれば、国際社会で孤立するイスラエルが、さらに窮地に陥ることは避けられないとみられる。
世界中央キッチン(WCK)の働きと今回の悲劇
1)海路からガザへ食料搬入計画:民間チャリティ団体・世界中央キッチン(WCK)
ガザでは、人道支援物資を陸路で搬入することが困難になっているため、空からパラシュートで落下させる方法、また最近始まったのが、海から搬入するという経路である。
しかし、国連でその役割を担うはずのUNRWAは、ハマスとのつながりが発覚したため、ガザで活動することをイスラエルが受け入れることはない。またWFP(国連世界食料計画)が動くにも危険すぎて、活動が難しい。
こうした中、海路からの搬入を担うと手を挙げたのが、民間国際団体、ワールド・セントラル・キッチン(世界中央キッチンWCK)であった。WCKは、全世界での食料配布のチャリティ活動(3億5000万食提供)を行なっている団体である。
WCKは、イスラエル軍の護衛とコーディネートにより、先月、地中海からガザへ200トンの食料支援物資を搬入するテストを行い、2日からは、本格的に400トンの食料(UAE提供)をガザへ運ぶ計画であった。WCKは、ガザ中部と南部60カ所に厨房を立ち上げており、避難民たちに米やレンズ豆などを使った料理の提供をはじめていた。
2)ガザへの食料搬送計画実行中の悲劇
WCKは2日、キプロスから海を経由して届いた食料を、北部へ搬送し、その後中央部へも搬送しようと、デイル・アル・バラの保管庫を出たところで空爆を受けた。
これにより、現地パレスチナ人人と外国人スタッフ人7人が死亡した。死亡した外国籍の人は、イギリス人、オーストラリア人、ポーランド人、アメリカとカナダ二重国籍の人であった。
この事件を受けて、WCKは、ガザでの活動をただちに停止すると発表した。
WCKの創始者ホセ・アンドレス氏は、「イスラエルの攻撃で何人かの兄弟姉妹を失った。彼らの家族を思うと心が痛む」と述べ、「悲劇だ。食料支援物資を運ぼうとする市民たちが、こんな目にあうことは絶対にあってはならないことだ」とXに投稿した。
イスラエル軍は、WCKとコーディネートし、これを保護する役割を担っていたため、そのトラックを攻撃するなどあり得ないと思われるが、現在、詳細な調査を進めていると表明している。
なお、攻撃は、イスラエル軍が2週間かけて行なっていたシファ病院での戦闘を完了したとして停止した数時間後のことであった。
オーストラリア首相が攻撃を非難
死亡した外国人の中で、最初に判明したのは、オーストラリア人のズミ・フランコムさん(44)であった。オーストラリアのアルバニス首相は、「これは絶対にあってはならないことだ。オーストラリアは、その責任を追求する。」と言っている。
ガザは食糧難ではない!?:食料価格下落
先月グテーレス国連事務総長は、ガザのラファ国境を訪問(エジプト側)。
そこでガザに入れない状態にある食料人道支援物資を積み込んだ7000台のトラックを目撃している。グテーレス事務総長は、イスラエルがトラックの検査を理由に、ガザに入ることを差し止めているとして、「道徳的な怒り」を感じると述べた。
これに対し、イスラエル軍のCOGATは、ガザに入ったものの、そこからの配布を担当するUNRWAや国連機関が不在であるために、搬送されずに止まっている様子を公表した。これほどに溜まっているから、ガザの外にもトラックが溜まってしまうのである。
COGATによると、戦争勃発以来、24万トン以上の食料と、水27トンを配送する車1万9000台がガザに入ったとのこと。
This aid has all accumulated and is waiting for @UNRWA and other @UN aid orgs to distribute it. This is the equivalent of hundreds of aid trucks—which isn’t being distributed to Gazan civilians.
We remain committed to the transfer of aid to Gaza. pic.twitter.com/mEWpUtOLwx
— COGAT (@cogatonline) March 23, 2024
www.timesofisrael.com/in-egypt-un-chief-decries-non-stop-nightmare-of-gaza-war/
しかし、国際社会は、イスラエル軍が国境で食料人道支援を差し止めているので、ガザの人々が食料難となり、餓死する人が出ると懸念している。しかし、配送に問題はあるものの、実際には、そこまでの食糧難に陥っていないのではないかとイスラエル軍は反論している。
理由として、次の点を挙げている。
① ハマスが国際社会に訴えている餓死者懸念のデータは、イスラエルを陥れようとする目的で出しているものである。パレスチナ人のSNSによると、市場に食料は並んでいる。
② ガザに入る支援物資のトラックは1日に、150-200台で、戦争勃発の10月7日以前の80%にまで回復している。
③ 水道については、これまでに海水の淡水化施設を二カ所設立しているほか、UAEの」パイプラインで一人1日20リットルがかのうんいなっている。
④ ガザ北部への食糧配送が特に困難と指摘されて以来、イスラエルは1日に500台のトラックが入れるようにしている。ガザ中部と南部には、パイプラインがあって、イスラエルから水の補給も行われているとのこと。
ガザが食糧難に陥っていないことの一つのサインとして見られるのが、ガザ北部での食糧価格の低下である。小麦粉は、1キロ30シェケルが今は10シェケル。缶詰は10シェケルだったものが、今は5シェケルである。
www.ynetnews.com/article/syns3cuk0
とはいえ、食料の搬送がうまくいっていないこと、ガザでは電気もなく、十分な下水施設もなく、厳しい生活が続いていることが全部偽情報ということはないだろう。
イスラエルは、ハマスが、国際社会でイスラエルを孤立させるために、ガザをあえて厳しい状況に置き続けようとしていると非難している。
石のひとりごと
それにしても、イスラエルを非難する項目が次々に出てきて、頭が痛くなる。世界はどんどん、イスラエルを憎み、世界に散らばっているユダヤ人たちが迫害を受けるようになるかもしれない。
著名な映画監督でユダヤ人のスティーブン・スピルバーグ氏は、「私たちは、再びユダヤ人として生きる権利のために戦わなければならないかもしれない」と語っている。
聖書は、終わりの日に起こることとして、イスラエルが世界の重荷、いわば厭われる存在になることを預言している。やがて、イスラエルはない方が良いと世界は考えるようになり、世界中がイスラエルに攻め込むこともありうるかもしれない。しかし、まさにそのような時に、主が出てこられると聖書は教えている。
その日、わたしはエルサレムを、すべての国々の民にとって重い石とする。すべてそれをかつぐ者は、ひどく傷を受ける。地のすべての国々は、それに向かって集まって来よう。(エゼキエル12:3)
・・・主が出て来られる。決戦の日に戦うように、それらの国々と戦われる。その日、主の足は、エルサレムの東に面するオリーブ山の上に立つ。(エゼキエル14:3-4)
私たちは、この大きな枠組みを確信して気落ちせず、今苦難の中にあるイスラエルとその人々、またその周囲にいる国とその人々の救いを覚えてとりなしていきたいと思う。