先週月曜にイスラエル軍が、ガザからイスラエル領内にまで掘り進んでいたテロ目的の地下トンネル爆破したことはお伝えした通り。これまでに、イスラム聖戦2人、ハマス2人を含む7人の死亡が確認されている。しかし、この他にも、まだ5人の遺体が現場に残っていると考えられた。
ハマスは、赤十字を通して、イスラエルに5人の捜索活動をするため、現場に入ることを要求。イスラエル国内からも、左派少数アラブ系市民組織が、高等裁判所に対し、ハマスに現場を捜索させるようにとの訴えが出された。
現場は、ガザ地区ではない。イスラエル領内へ300mも入ったところである。イスラエル軍は、高等裁判所に対し、テロリスト5人はすでに死亡していると宣言。イスラエル軍もまだ一帯で作業中だとして、これを拒否した。
この後、5日夜、イスラエル軍は、イスラム聖戦5人の遺体を発見したと発表した。イスラエル軍は、遺体がイスラエル領内にあったこと、すなわち、テロ用トンネルが、イスラエル領内にまで至っていたことを強調した。
<遺体をめぐる対立>
ハマスは、2014年のガザとの戦争の際、ガザ内部で戦死した2人の兵士、ハダール・ゴールィンさんと、オロン・シャウルさんさんの遺体をまだイスラエルに返還していない。
2人の家族は日曜、記者会見を行い、2人の遺体返還がないならテロリスト5人の遺体は返還しないでほしいと訴えるとともに、政府を高等裁判所に訴える構えであると発表した。
兵士2人の家族によると、2人の遺体をとりもどすために強硬な姿勢に出ることを求める家族に対し、政府指導者らは、「次の戦争では、アシュケロンやアシュドドにミサイルが降ってくる。そうなればあなたがのせいだ。」と逆に脅されたという。
また、先の神殿の丘テロ事件のテロリストの遺体を交渉なしに返還したこと、今もガザからイスラエルに収監されているテロリストの面会を許可していることなどをあげ、政府は、ハマスに屈服していると非難した。
www.ynetnews.com/articles/0,7340,L-5038816,00.html
なお、ガザ地区には、この他にも自らガザに入ったとみられる精神的弱者のベドウイン男性など3人が捕虜になったままとなっている。
ネタニヤフ首相は6日、ハマスに対し、「ただの贈り物はない。」と、2人の兵士の遺体、3人のイスラエル人の返還がない限り、5人の遺体をただで返すことはないと示唆した。
www.ynetnews.com/articles/0,7340,L-5039192,00.html
<イスラム聖戦の反応>
イスラム聖戦は、イスラエルが5人の遺体を収容したとの発表を受け、遺体に関する交渉はないと宣言。「戦いは終わっていない。イスラム聖戦の”自由の”トンネルは、まだ他にもまだ多数ある。」と豪語した。
実際のところ、パレスチナ人たちの文化に、仲間の遺体を取り戻すために代価を支払うという概念はない。これが交渉になるとは考え難いところである。
www.timesofisrael.com/idf-says-it-has-the-bodies-of-5-terrorists-buried-in-gaza-tunnel-demolition/
ところで、執拗なまでにトンネルを掘って、テロリストを送り込もうとする困った隣人に対し、イスラエルはとほうもない代価を払わされている。ガザとの間には、特殊な地下(数十メートル)、地上(6メートル)のバリアが建設中で、完成までにはまだ2年かかるという。
これにかかる費用はなんと30億シェケル(約100億円)。当初は20億シェケルと伝えられていたが、最近の報道によると、30億シェケルになった。
この作業は、単にバリアを建築するだけではない。地下を掘っている最中に、ミネラルの水を流しながら掘っており、もしトンネルにぶつかった場合は、その存在を知ることができるようになっている。
また、地下に設置されるバリアには、センサーが仕組まれており、新たなトンネルが掘り近づいてきた場合、すぐに察知できる。イスラエル軍はこのシステムをガザ沖の海中にも設置を計画中だという。
イスラエルがこれだけの資金を使うのは、それだけ市民を守ろうとする意志の表れであろう。しかし、隣が平和であってさえいれば、使わなくてもよい100億円・・・。
余談になるが、ハアレツ紙が、イスラエル軍からの情報として伝えたところによると、ガザとの国境にはセメント工場が建てられ、スペインや、モルドバ、アフリカ難民など外国人1000人ほどが雇われて、24時間体制で建築にあたっている。
外国人が雇われるのは、当然、危険地帯での作業だからであるが、これもまた、なんとも虚しい点である。。。