ガザからのロケット弾攻撃は、日曜朝になり、再び激化。朝だけで40発がふりそそぎ、アシュケロンでは、工場が直撃を受けて3人が負傷した。このうち、男性1人(22)、ベドウィン男性(50)が、後に死亡した。
スデロットでは、走行中の車が攻撃を受け、乗っていた男性(60)が、重症を負い、意識を失っているのを、アシュケロンへ向かっていた救急隊が発見した。この男性も、搬送先の病院で死亡した。これで、ガザからの攻撃が始まってから死亡したイスラエル市民は、4人になった。
www.ynetnews.com/articles/0,7340,L-5504165,00.html
ロケット弾攻撃は、日曜午後からも再び激化しており、警報は、今現在も、ガザ周辺の町や、ヤド・モルデハイなどキブツで、断続して鳴り続けている。ロケット弾の到達地点が徐々に内陸へとひろがってきている。南部では、学校は休校。人々はシェルターにいる。
イスラエル軍は、ガザへの空爆を継続するとともに、国境に駐留する戦車隊を増強している。そこへドローンが飛来しているという。
ガザから飛来するロケット弾は、日曜5時までの段階で600発。このうち70%は空き地に着弾。迎撃ミサイルが撃墜したのは、150発以上で、市街地に着弾すると予測されたロケット弾の大部分は防いでいるといえる。
しかし、ロケット弾は着弾すると、するどい金属片が数百メートルにわたって、広範囲に飛び散るため、たとえ一発でも市街地に着弾すると非常に危険である。
イスラエル軍スポークスマンのロネン・マネリス少佐は、今のこの状態が数日は続くとの見通しを語っている。
www.timesofisrael.com/liveblog-may-5-2019/
*これまでのイスラエル・ガザ双方の犠牲者数
金曜夕刻に攻撃が始まってから、イスラエルでは,アシュケロン在住で4人の子供の父親であるモシェ・アガディさん(58)が、死亡。日曜に死亡した3人とあわせて4人。負傷者17人の中には、重傷者もいる。イスラエル南部農場では、出稼ぎに来ていたタイ人男性(30)も中等度の負傷。被害に遭っているのは、すべて一般市民である。
www.timesofisrael.com/ashdod-man-killed-by-rocket-raising-death-toll-to-4-amid-massive-bombardment/
ガザでは、IDFによると、戦闘員8人が死亡。ガザ側情報によると、死者は20人。*数字はメディアによって相違あり
ガザ側が、イスラエルの攻撃で1歳の幼児とその母親が死亡したと言っていることについて、イスラエルは、これはガザ内部に落下したロケット弾によるものであって、イスラエルの責任ではないと発表した。
www.timesofisrael.com/gearing-up-for-days-of-fighting-idf-sends-tank-reinforcements-to-gaza-border/
<ハマス指揮官でイラン関係者を暗殺:IDF戦略の変化>
イスラエルは、ガザへの空爆を継続しており、これまでの攻撃対象ラインを超えて、攻撃の規模や範囲を広げているもようである。これまでに、ハマス省庁のビルなどを破壊している。
また、ハマス指揮官の一人で、イランからの資金をハマスやイスラム聖戦に届けていたハメッド・ハマダン・アル・コダリ(34)をピンポイントで暗殺したと発表した。
今回のガザからの攻撃については、背後にイランがいると指摘されていた。ハマスも、指揮官であるアル・コダリが死亡したことを認めた。
イスラエル軍は、この他にも、ハマスやイスラム聖戦の指揮官らのピンポイント攻撃を行っている他、彼らの自宅を破壊する作戦に出ているもようである。
www.ynetnews.com/articles/0,7340,L-5504389,00.html
現在、イスラエル軍は、ガザとの国境に戦車隊を増強し、地上軍投入の気配もあるが、これについては、閣議決定がないと実行には移せない作戦である。
ネタニヤフ首相は、新政権がまだ発足していないため、前の閣僚による治安閣議を行っている。ネタニヤフ首相については、明確なビジョンがなく、その場その場でしか動いていないとの指摘があるが、確かに今回もいったいどう対処するのかどうにも見えてこない感じは否めないと、これは記者の印象・・・
<イランのねらい:戦略専門家ヤアコブ:アミドロール大佐(退役):電話会見>
1)イスラム聖戦の背後にイラン
前回の記事で紹介した元イスラエル軍大佐で、治安問題専門家のクパワッサー氏と同様、戦略専門家のアミドロール氏も、今回のエスカレートの原因(イスラエル兵2人をガザ国境で攻撃)を作ったのがイスラム聖戦であったことに注目する。
イランは、イスラム聖戦を使って、ガザ情勢をエスカレートさせることで、内戦後のシリアに進出するイラン軍関係施設を、容赦なく攻撃し続けるイスラエルの目を引き離そうとしているとアミドロール氏は分析する。
また、イランは、エジプトが仲介となってすすめているハマスとイスラエルの合意を妨害したいとも考えている。
今回、イランは、イスラム聖戦を使ってガザ情勢をエスカレートさせ、ハマスをイスラエル攻撃に加わらせることで、イスラエルとの合意に向けたプロセスを妨害することに成功したといえる。
アミドロール氏によると、イスラム聖戦は、イランが発足させたテロ組織で、実質イランであり、ガザのパレスチナ人にはまったく興味がない。一方、ハマスは、イスラム聖戦より組織としては大きく、一応、ガザのパレスチナ人を管理する立場にある。
ハマスは、イスラム聖戦に振り回されず、逆にこれを制する立場にたってもらいたいとアミドロール氏は語る。
2)カイロでの動き
カイロでは、エジプトが、ハマスとイスラム聖戦の指導者とともに、沈静化の落とし所、つまり、イスラエルに、”停戦”する見返りの条件として、何を提示するのかをさぐっているとみられる。
これまで何度か、ガザから攻撃をしかけておきながら、”停戦”をする代わりとして、イスラエルは多数の譲歩をのんできた。その一つが、カタールの現金搬入である。
イスラエルはガザを再支配したくないので、総攻撃はしそうでも、実際にはしない計算が高い。ここに目をつけたハマスが、時々イスラエルを攻撃しては、イスラエルに譲歩させてきたのである。しかし、今回については、イスラエルがこれに応じようとする様子は、今のところない。
3)ほくそ笑むパレスチナ自治政府のアッバス議長?
イスラエルが、ガザを攻撃することで利益を得るのは、イランと、もう一人、パレスチナ自治政府のアッバス議長である。ガザとライバルであるとしても、同じパレスチナ人である。パレスチナ人が、イスラエル軍によって殺されたら、それは、国連で武器として使える。
また、ガザが崩壊すれば、アッバス議長がその支配に入る可能性もなきにしもあらず。経済危機で破綻しそうな今、ガザ地区でのエスカレートは、アッバス議長には歓迎といったところである。
4)今後の見通し
今後どうなるかについて質問されたアミドロール氏は、それは、ハマスの方針、また地上での各組織の動きによるとして、現時点では、予測できる点はないと語った。