<ガザでの死者数3万800人:餓死者少なくとも20人>
ガザでは、ハマスとイスラエルの戦闘で死亡した人数が3万800人となった。イスラエルによると、ハマスの戦闘員1万3000人近くが含まれていることや、軍服を着ていないハマス戦闘員を市民と数えている可能性も高いことから、実際の市民の死者数はわからないといえる。
しかし、ここへきて、いよいよ餓死者が出始めている。ガザ保健省(ハマス)によると、これまでに少なくとも20人が、餓死したとのこと。
多くは乳幼児で、母親の栄養失調により母乳が出ないことや、感染症併発で栄養失調に脱水も加わってしまうのである。
特にガザ北部での食糧不足が深刻で、栄養失調に陥っている市民の割合は、南部の3倍だという。南部は、2つの検所があり、食糧がなんとか手に入るが、そこから北部にまでが届きにくいのである。
先週には、南部から北部へ向かっていた支援物資のコンボイに人々が一斉に押しかけて、少なくとも118人が死亡するという大惨事になった。イスラエルは、陸路での新たな搬入方法を準備中で、来週中にも実施される見通しである。
edition.cnn.com/2024/03/06/middleeast/israel-gaza-starvation-siege-mothers-babies-intl/index.html
<世界諸国の対応>
UAEやヨルダン、エジプト、トルコに続いて、アメリカも空からパラシュートで食料を落下させる作戦を行っている。しかし、これではとうてい不足を補うことはできない。
トルコは、赤新月社(イスラムの赤十字)を通して、ガザへ搬入するため、3000トンの食料と医療物資をエジプトのシナイ半島に向けて出航させた。トラックで運ぶとすると200台分で、これまでで最大となる。トルコはこれを2回行う計画だと言っている。
www.timesofisrael.com/turkish-red-crescent-shipping-3000-tons-of-aid-to-gaza-largest-package-yet/
アメリカは、海上に臨時の桟橋を築いてそこから食料をガザ北部に直接搬入するための海上人道回廊の準備を始めた。桟橋は、数週間で完成予定で、物資はキプロス経由で届けられ、桟橋で安全検査を行い、ガザへ搬入する。
これにより、毎日トラック数百台分の食料や水、衣料品をガザへ届けることができるようになるとの見通しである。将来的には商業目的で桟橋が使われることも期待しているとのこと。
建設は米軍が行い、沖合で米軍が止まることになるが、米軍がガザへ足を踏み入れることはないという。
イスラエルはこれを歓迎する意向を表明しているが、アメリカが、イスラエルのガザへの人道支援策を不十分とみているということは明らかで、強烈な嫌味とも考えられている。
*なぜ陸路での搬入が困難なのか:国際社会がイスラエルを非難する理由
陸路での人道支援物資搬入について、世界はおおむねイスラエルを非難している。陸路での搬入が困難な理由について、Times of Israelは2つあげている。
1つは、物資の護送を保護するハマスの警察官を、イスラエルが殺害していること。これまでに搬送の護衛に関わっていた警察官15人が殺害されたとのこと。もう一点は、人質の家族たちと極右勢力が、この数週間の間、ケレン・ショムロン検問所周辺で、物資の搬入を妨害している。トラック数百台が止められたとのこと。
ガザの市民の間に餓死者が出ていることで、イスラエルに対する世界の目はいっそう厳しくなっているといえる。
<バイデン大統領の一般教書:イスラエルへの支持と批判混じる苦悩>
こうした中、バイデン大統領が、7日、連邦議会で一般教書演説を行った。その中で、バイデン大統領は、10月7日の虐殺はホロコースト以来だったとして、イスラエルの自衛の権利を認めながらも、戦闘での犠牲者が多すぎるのは残念すぎだと苦悩の演説を行った。
また人質をなんとしても取り返すと語り、6週間の停戦の重要性を強調。ハマスは武器を置いて、人質を解放せよと呼びかけ、2国家解決に向けた意欲も語った。イスラエルの味方でありつつ、敵にもみえるという、非常にややこしいアメリカの動きである。