聖書において、カナン人は、重要な人々である。紀元前2世紀ごろ(中・後期青銅器時代)に、アブラハムが来たころ、いわゆる「約束の地」にいたのは、カナン人であった。
その後も、カナン人は、レバント地域(現代のイスラエル、エジプト、レバノン、トルコ、ヨルダン、シリア)一帯で、大きな都市を収め、それぞれが王として存在したことが聖書に記録されている。これらの王がエジプトと連絡をとりあった記録がアマルナ文書である。
しかし、カナン人については、一つの民族なのかどうかを含めて、謎が多い人々であった。
DNAによる研究が可能になってきたことを受けて、5年前から、カナン人、特に聖書に関係する南西部(イスラエル周辺)に住んでいるた人々に関する研究が、ヘブライ大学のリラン・カーメル教授の元ではじまった。
メギドは、のちの時代にソロモンも要塞として強化したが、もともとは重要なカナン人の町で、ヨシュアが焼き払った町としても知られる。そのメギドなど5カ所の遺跡から発見された73人分の頭蓋骨などからとられたDNAによると、この地域にいた人々は、たとえ違う都市に住んでいたとしても、同じ遺伝子を共有する人々であることがわかった。
これは聖書が記録するように、同じカナン人でも、大きな都市に分かれてそれぞれが王に支配されていたとする聖書に記述を証明するものである。しかし、同時にカナン人の中には、それ以前の時代の青銅器時代のイラン地域に祖先を持つこともわかった。
研究者たちは、このカナン人のDNAと、同じ地域に住む現代人14民族のDNAを比較した。それによると、この地域にいるユダヤ人とアラブ人は50%以上、同じカナン人の祖先に関連していることがわかった。
カーメル教授は、今後、この後の時代、イスラエル人、の人々についても同様の研究をするとのこと。
なお、カナンの地にペリシテ人がやってきたのは、ヨシュアに導かれてイスラエル人がカナンの地に入ってきたころと同時期の、BC1200年ごろで、今回の研究の時代よりも後の時代にことである。