カタールでの交渉決裂:テルアビブでは人質家族が政府を非難デモ 2024.3.27

photo credit: REUTERS

ハマスがアメリカの妥協案拒否を表明

カタールで行われているハマスとイスラエルの間接的交渉。先週、イスラエルはアメリカが出した人質交換の妥協案に合意を表明し、ハマスの返事を待っていたが、25日、ハマスがこの案には合意しないと返答してきた。

ネタニヤフ首相が非現実的と評した条件(恒久的な停戦と、イスラエルのガザからの撤退を含む)などから、いっさい歩み寄りはしないということである。

イスラエルの交渉団カタールから帰国

ネタニヤフ首相は、態度を変えないハマスを非難し、翌26日、カタールに派遣していた代表団のをイスラエルへ呼び戻した。しかし、その後、代表団の一部は残留しており、交渉は続いているとの情報もあり、完全な決裂ではないようではある。

このハマスの強気の返事は、国連安保理が、アメリカの棄権により、即時停戦を命じるとする案を可決した数時間後であり、ハマスが国連安保理の決議に感謝を表明していたことから、ネタニヤフ首相は、カタールでの交渉の決裂は、国連安保理の決議のせいだとも批判した。

www.timesofisrael.com/blaming-un-vote-israel-pulls-negotiators-from-qatar-after-hamas-rejects-truce-deal/

これについて、バイデン大統領は声明を出し、ハマスが拒否の表明を伝えてきたのは、安保理決議の前であったと発表。ネタニヤフ首相は、このことを政治的に利用したと非難したとし、ネタニヤフ首相の人質奪還への意欲が弱いと示唆。人質家族たちがネタニヤフ首相に退陣を求めていることには一理あると語った。

www.timesofisrael.com/hamas-hostage-deal-rebuff-preceded-unsc-vote-us-says-accusing-pm-of-playing-politics/

停戦交渉決裂で人質家族が政府に抗議デモ:解放された元人質が性被害を証言

カタールでの停戦交渉が決裂し、ネタニヤフ首相が、バルネア長官たちを帰国させると、テルアビブでは、人質家族や親族たちが、テルアビブの防衛庁前で、ハマスとの交渉に合意せよと訴えるデモを行った。

一時、主要高速道路を封鎖するなどして、4人が警察に逮捕された。

逮捕された4人のうちの2人は、10月7日にハマスに、母親(54)と祖父母(78)、子供(9)を人質にとられているムンダーさん家族の人たちであった。

www.timesofisrael.com/hostages-relatives-among-4-arrested-at-tel-aviv-protest-as-truce-talks-collapse/

人質の家族たちは、ネタニヤフ首相が、人質奪回のために十分なことをしていないと反発しており、このために、ネタニヤフ首相を辞めさせようと総選挙を訴えるデモを続けている。

1)人質女性が性被害を告発

解放後、現場に戻ったショシャナさん

10月7日にハマスの人質となり、11月下旬に解放されたアミット・ショシャナさん(40)が、ニューヨークタイムスのインタビューの中で、ガザで捉えられていた家で、性被害を受けていたことや、銃をつきつけられた状態で、レイプされたことを明らかにした。

ここまで明確にその被害を明らかにしたのは、ショシャナさんが初めて出会った。ガザには、まだ19人の女性が人質になっている。

www.timesofisrael.com/released-hostage-amit-soussana-reveals-she-was-sexually-assaulted-by-hamas-captor/

2)また人質の死亡確認

イスラエル軍は、26日、ウリエル・バルーフさん(35)が、ガザで捉えられている間に殺され、遺体はまだガザにあることが確認されたと、家族に連絡した。ウリエルさんは、妻と幼い子供2人の父親であった。

これにより、死亡が確認された人質は34人で、今も96人が人質になっているが、生死は不明である。

まお、10月7日に捉えられた人質253人の中で、生死含めて救出された人は次の通りである。最初に4人、続いて11月下旬に105人が解放された。その後、3人がイスラエル軍の誤射で死亡。別の3人は救出。11人は遺体での帰国となった。

www.timesofisrael.com/hostage-uriel-baruch-murdered-by-hamas-his-body-held-in-gaza-his-family-reveals/

解決は戦争でシンワルを探し出すしかないとヘルツォグ大統領

外交での解決がますます遠のく中、では、どうなるのかといえば、もはや戦争しかないということになる。しかし、不思議なことに、5ヶ月以上の戦闘を経てもまだハマスは、復帰の様相とともに、イスラエル国内へのロケット弾発射を行なっている。

とはいえ、安保理が言うように、今、イスラエルだけが譲歩するなら、ハマスどころか、その背後にいるイラン、またISのようなイスラム過激派が、世界にどんどん出てくるようになるだろう。

ヘルツォグ大統領は、もはや、シンワルを生死にかかわらず、探し出すことだけが、人質を取り戻すことになると語った。また、戦いを続ける以上、私たちは一致しなければならないと国民に呼びかけた。

www.ynetnews.com/article/b1pfpel1a

石堂ゆみ

ジャーナリスト、元イスラエル政府公認記者、イスラエル政府公認ガイド、日本人初のヤド・ヴァシェム公式日本語ガイドとして活動しています。イスラエルと関わって30年。イスラエルのニュースを追いかけて20年。学校・企業・教会などで講演活動もしています。