<混乱のカイロ市内>
エジプトで先週、カイロを中心としてエジプト全土で、イスラム主義政権に反対する世俗派市民100万人規模によるデモが発生。軍によってムルシ大統領の身柄が拘束され、既存する憲法も破棄された事件。
その後、軍の指名によって、文民裁判官のマンソール氏が暫定政権の大統領となり、上院も解散となった。まだ確定ではないが、元IAEAのエルバラダイ氏が首相になったとの情報もある。
反ムルシ派は、できるだけ早く暫定政権の形を作り上げ、立憲にもちこみたいところである。しかし、親ムルシ(ムスリム同胞団)も黙ってはいない。
翌5から6日にかけて、親ムルシ派もカイロで100万人規模の大群衆による親ムルシデモを行った。両者の衝突を避けるため、軍が催涙弾などで対処していたが、実弾も使ったと見られ、カイロで少なくとも8人、全国で30人近くが死亡したと報じられている。デモは7日にも行われる。
<悲惨なクリスチャンたち>
エジプト8250万人のうち、10%はコプト教とよばれるキリスト教徒である。コプト教は、反ムルシ派、暫定政権を支持する立場を明確にしたため、今やイスラム主義勢力に狙われる立場となった。
シナイ半島ではコプト教司祭が殺害され、多くの教会建物が破壊された。これは、イスラム主義と世俗派の対立いう構図から、イスラム対イスラム以外の宗教という構図が入り込んできた形である。今、エジプトで最も危険な立場に置かれているのはクリスチャンであるといえる。
<シナイ半島の混乱>
6日日中から7日にかけて、カイロ市内は意外にも平穏だった。しかし7日朝、エジプト軍がシナイ半島北部、エジプトとガザの国境ラファ付近で、イスラム主義勢力と衝突しているもようである。
シナイ半島北部では、昨日コプト教司祭が殺害されたのに続いて、ヨルダンにガスを送っているパイプラインが破壊された。
これを受けて、エジプト軍は、テロリストがガザからエジプトに入らないよう、エジプトとガザの間、ラファ地下密輸トンネル40近くを破壊している。現在、ガザとエジプトの国境は閉鎖中。
シナイ半島とイスラエルの国境を守るイスラエル軍によると、エジプトの政変にもかかわらず、エジプト軍とイスラエル軍はこれまで通り連絡を取り合って、イスラエルに火の粉が飛んでこないように協力体制を維持できているという。
<傍観を決めるアメリカ>
今回、エジプトの政変について、アメリカは今のところ「傍観」状態である。無対応のオバマ大統領が、世界から批判されているが、アメリカは「エジプトはまだまだ流動的である。」としてどちらの側にもつかないという立場をとっている。
<エジプトは内戦にはならないだろう:国家防衛研究所アモス・ヤディン氏>
イスラエルの国家防衛研究所のアモス・ヤディン氏は、エジプトはシリアのように内戦にはならないだろうとの見通しをテレビインタビューで明らかにした。
エジプトは、シリアのような他民族国家ではなく、エジプト人単独の国だからである。現在、エジプト軍は一般市民とともに立っており、基本的に市民を殺害することはない。
今後、政権がどちらにころんだとしても、軍がエジプトの平穏を維持するだろうと語った。