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アメリカの意図:パレスチナ国家設立による解決案を推進
バイデン政権は、ヨルダン川西岸地区とガザ地区を合わせて、「パレスチナ国家」を樹立することを条件に、ハマスに停戦と人質解放を求めるという方針を表明している。戦後のガザの立て直しと復帰は、今のパレスチナ自治政府が担う形である。
アメリカは、ガザの民間人の間で餓死者が出るほどの人道危機の様相にあることから、まずは停戦・人質解放をするためにこの案をもって、ハマスに受け入れさせようと、昨日からブリンケン国務長官を中東へ派遣している。
1)サウジアラビア訪問
ブリンケン国務長官は、21日、まずサウジアラビアを訪問。パレスチナ自治政府を国として樹立するので、イスラエルと国交正常化を認めるかどうかを協議した。
サウジアラビアはメッカを有し、イスラム教の代表のような国である。それがイスラエルを認めて国交を開始したとしたら、これは間違いなく歴史的なことである。
この件については、10月7日の事件が始まる前にも、かなり話が進んでいたことであり、この時点では、ネタニヤフ首相もこの案に興味を示していた部分もあった。」
しかし、イスラエルが、パレスチナ国家樹立を認めることはありえないことなので、話は進んでいるようで進んでいなかった。そうした中、10月7日の事件が発生し、この話は完全に頓挫した。
この流れから、ハマスがイスラエルへの大胆な攻撃を行った背景には、サウジアラビアとイスラエルの国交正常化を妨害する目的もあったのではないかとも言われている。その背景にイランが見え隠れするところである。
アメリカは今、サウジアラビアにとどまらず、その他の穏健派アラブ諸国もイスラエルと国交を正常化する可能性も模索しており、新しい中東の平和を目指すと言っている。
2)カイロで会談
その後カイロへ向かった。カイロでは、エジプト、ヨルダン、サウジアラビア、カタール、UAEとパレスチナ自治政府の代表がブリンケン米国務長官と会談。まずは一時停戦と人質解放を実現し、その後、恒久的な停戦を目指すと言う方向で一致したとのこと。
3)イスラエルでネタニヤフ首相と面談
カイロのあと、ブリンケン国務長官は、イスラエルに立ち寄り、人質家族に会った他、ネタニヤフ首相と40分面談した。ネタニヤフ首相は、ラファへの突撃は必ず実施すると繰り返した。
ブリンケン国務長官は、帰国前の記者会見で、ハマスのしたことが、ホロコースト以来の残虐な行為であり、ハマスは殲滅すべきであることには同意していると強調。
しかし、ラファへの攻撃は、大勢の民間人の犠牲が避けられないだけでなく、人道支援物資の搬入も妨げられるとして、
それ以外の方策をとる必要性を主張した。ブリンケン国務長官は、ラファへの攻撃は、イスラエルが孤立し、長い目でみれば、良いことではないとの考えを語っている。
来週、アメリカは、イスラエルの代表団をワシントンへ招いており、アメリカのラファ攻撃代替案について話し合うことになっているとのこと。
ただ基本的に、イスラエルがパレスチナ自治政府による戦後ガザの支配に賛成することはないし、アメリカのいう、パレスチナ国家樹立にも賛成することはほぼ100%ないので、この話し合いに何か結果がでるとは考えにくいところである。
バルネア長官一行再びカタールへ:人質交換と6週間の停戦にむけた交渉再開も希望薄
クリントン米国務長官が中東で各国を訪問中、イスラエルのバルネア長官交渉団一行が、再びカタールへ向かった。
しかし、Times of Israelが伝えているところによると、数日前にカタールから戻ってきたモサドのバルネア長官と、シンベトのロネン・バル氏、ニツァン・アロン氏は、いくことにあまり乗り気ではなかった様子である。交渉に、アメリカが言うような進展がなく、言っても何も変わりそうもないからである。
このため、今回は、バルネア長官と、ネタニヤフ首相に近い、シャス党のアリエ・デリ氏が加わるという。デリ氏への国民の信頼はほとんどないので、どうにも期待がさらに下がる感じの交渉チームのように見える・・・