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イスラエルの感染状況:重症者増えて200人超・インフルエンザも懸念
イスラエルでは、オミクロン株の感染拡大が急速に進んでおり、7日、1日で1万8000人(陽性率11.7%・実効再生産数1.97)を超えた。
これに伴い、入院患者は、524人。重症者も206人(ワクチン未接種98人・2回接種から6ヶ月以上経過22人・3回接種済み77人)と200人を超えた。新たな死者は出ていない。
ワクチン接種状況は、人口950万人中、2回完了した人は596万人。このうち、3回完了者は432万人。このうち4回接種者は25万4000人。
感染者と重症者が急増してきたため、エルサレムのハダッサ・ヘブライ大学病院ではコロナ病棟1つを開設して満床となり、2つ目を開設したとのこと。
これまでに医療従事者3人の感染と17人の隔離が報告されているが、今の所、医療逼迫の報告は出ていない。
www.timesofisrael.com/number-of-seriously-ill-covid-patients-tops-200-in-major-surge/
しかし、イスラエルでは、まだデルタも活発なので、オミクロンと両方対処しなければならないという。またこの週末、キプロスで、「デルタクロン」なる新たな株(デルタ株にオミクロンの形を含むもの)が見つかったとの報告や、オミクロン株感染(3回接種済み43歳)で心筋炎を発症した最初のケースが報告されたりしている。
コロナの問題に加えて、今年はインフルエンザのワクチンを受けた人が43%(毎年10-11万人が接種するところ、今年は7万5000人)にとどまっている。インフルのワクチンは感染はあまり予防しないが、重症化を防ぐと言われている。
このため、コロナに加えて、インフルエンザによる重症者が増えてきた場合、医療を逼迫する可能性が指摘されている。一度にコロナとインフルに感染する可能性もあるとのこと。
イスラエル軍内部での感染
コロナの感染はイスラエル軍の間でも広がっている。12月30日の時点での感染者は771人であったが、1月6日には3160人であった。感染者の一人は、コハビ参謀総長の補佐官であった。濃厚接触者は、コハビ参謀総長含む3600人。
このまま行くと、部隊全部に感染が拡大し、治安維持に影響が出てくる可能性もあるので、陽性になっても無症状の者は隔離を短くして部隊に戻ることを可能にすることと指示が出た。また戦闘部隊兵士には、重症化を防ぐ目的で、4回目ワクチンを検討するとのこと。
www.timesofisrael.com/idf-puts-troops-back-in-separated-capsules-as-covid-tears-through-army/
変更相次ぐ政府の対策指示で国民は不満
ベネット首相は、「最終的には、200-400万人(人口の半数近く)が感染することになるだろう。これは世界を襲っている嵐である。しかし、イスラエルでは、経済はできるだけ止めず、同時にハイリスクの高齢者や病気の人の命も守る。」との決意を語った。
しかし、この決意はいいが、政府は、状況や、新しい事実がわかってくるたびに、“柔軟”に方向転換を行なっている。保健相や経済相は、この柔軟性とともに、経済が維持されているとして、政府の対策を高く評価しているが、国民の多くは、これについていけないようである。
イスラエルの主要テレビチャンネル12の調べによると、調査に答えた63%が、ベネット政権の第5波への対処に不満と答えていた。これを受けて、ベネット首相は、変更が多いことについて、状況が複雑であるとして、国民に理解を求める声明を出した。以下が政府の最近の指示。
1)PCRは60歳以上のみに変更
急速な感染拡大で、濃厚接触者も激増していることから、PCR検査を受ける人が激増し、そこでの感染の懸念や、人手も検査キットも間に合わないことから、PCR検査は、60歳以上のハイリスクの人のみということになった。
ところが、この指示が出ると、60歳以下の人が、代わりに簡易抗原検査に長蛇の列を作る結果になった。また、抗原検査は、特にオミクロン株では、50%ぐらいの確率で偽陰性になることが指摘され、問題視する意見が噴出した。
2)教育機関における検査と登校の基準で混乱
もう一つの問題は、学校における登校の問題である。政府は各家庭に抗原検査キットを無料で配り、できるだけ子供たちが登校できるようにと対策を講じている。しかし、検査キットの不足問題など、また方針を変えなけれはならなくなっている。
このように、政府からの指示が、次々に変更になるため、教育機関では、今いったいどうなっているのかすらわからないほどの混乱をきたしている。
3)空港業務変更:ワクチン完了の外国人も入国許可へ
政府が海外からの入国をほぼ全面的に停止していたことで、感染の波はやや遅れさせることにはなったが、今もうオミクロン株は国内におり、感染は市中感染になっている。
このため、政府は、イスラエル人に渡航禁止としていた赤信号国をすべてオレンジにまで下げた。これにより、イスラエル人の海外パック旅行の申し込みが100%増えているとのこと。(1/8 ILTV)
また、9日からは、2回目接種後6ヶ月以内か3回接種完了者など、外国人でも諸条件を満たす場合は、入国を許可することとなった。しかし、入国後PCRと検査結果が出るまでの隔離が必要。
また入国後すぐは、公共交通機関を利用することは許されておらず、家族友人が空港まで迎えにこなければならないとのことで、まったくの旅行者はまだ入国は難しいとみられる。
www.timesofisrael.com/number-of-seriously-ill-covid-patients-tops-200-in-major-surge/
国内の町の雰囲気は?
現地の様子は、やはり人出は以前よりかなり少ないが、ほぼ通常で、映像を見る限り、マスクをしていない人もいる。以下はエルサレム1月1日としてアップされたもの
以下はテルアビブ1月9日にアップされたもの
さまざまなところで、ワクチン接種証明の提示を求められたりするが、食品を扱うスーパーなどではその必要はないとのこと。
ワクチンをしていない人は、イベント等に参加する際は、事前に陰性証明を取ることになるが、PCRは約100シェケル(3800円で有効期限は24時間のみ)。簡易抗原検査は、約50シェケルと半額とのこと。
各企業はテレワークを増やすなどの対策はすすめているようだが、少なくとも人々が、恐れて家に閉じこもっている様子はない。
石のひとりごと
オミクロン株がいったいどこまで深刻に捉えるべきなのかは、まだ不明ではあるが、もう手が追えなくなっている部分もあり、人々の流れを見ると、明確な理解はない中で、だんだんと普通のインフルエンザ的な受け止め方になりはじめているかもしれない。
イスラエルにいる知人などは、むしろ軽いオミクロンにさっさと感染した方が、今後出てくる新たなコロナ株に対する抗体ができるからいいなどという人もいた。
オミクロンは、危険なのか、逆に祝福なのか。ベネット首相と閣僚たちの動きを主が支配して導いてくださり、コロナ最先端をいくイスラエルが文字通り世界のよき羅針盤、主の栄光を表す器になれるようにと祈る。