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オデーサ攻撃からモルドバも視野か?
ロシアがウクライナへの侵攻を開始してから2ヶ月を過ぎた。ロシアは、キーフ攻略を諦め、部隊を東部へ移動させて現在、ドネツク州、ルガンスク州への激しい攻撃を行なっている。新しくドボルニコフ司令官が、作戦統括として着任したことが報じられていた。
ドボルニコフ司令官は、2015年、シリア内戦に介入したときに司令官で、市民の虐殺も全く躊躇しない残虐な司令官として知られている人物である。
1)南部マリウポリ掌握からオデーサへの攻撃
ロシア軍は、特にマリウポリへの激しい攻撃を行っていたが、21日、マリウポリを掌握したと発表した。
5月9日の対ナチス戦勝記念日には、マリウポリで、軍事パレードを行うと言っている。しかし、マリウポリには、製鉄所地下に巨大な要塞があり、ウクライナ軍アゾフ部隊とともに、1000人を超す一般市民が、まだ抵抗を続けている。
これについてプーチン大統領は、厳しく包囲し、兵糧攻めにしるよう指示した。しかし、攻撃も行われているようである。一時、人道回廊を設けて、市民を救出する計画もあったが、失敗に終わった。今では、地下では食料も尽きかけているようである。
マリウポリを攻略すると、ロシアはいよいよウクライナの東南部全体を支配することになる。こうした中、23日、ロシア軍のミサイルが、これまではまだ大規模な攻撃が行われていなかった、南部港湾都市オデーサへミサイルが撃ち込まれた。
ミサイルは、アパートを直撃し、市民8人が死亡した。8人の中には、ユリ・グローダンさんの母、妻のバレリアさんと1月に生まれたばかりの3ヶ月の長女、キラちゃんが含まれていた。母娘孫3代全部が一度に死亡したことになる。
ユリさんは、一時買い物に出ただけだったが、その間に大事な家族全部を失った。
ロシア、プーチン大統領の計画にいったいどれほどの正当性があるか知らないが、これほどまでに人の人生を奪うことは決して赦されることではない。ゼレンスキー大統領は、3ヶ月のキラちゃんが、いったいロシアにどんな脅威になるのかと訴えていた。
www.bbc.com/news/world-europe-61210699
しかし、ロシアは今、東部と同様、南部地域ヘルソンでも、住民投票を計画していると伝えられている。ロシアは、住民投票で住民がロシアの支配を望んでいるというような事実を作り上げて、占領を正当化するつもりなのである。
2)オデーサからモルドバも視野
オデーサへの攻撃で、戦争がさらに拡大、長引くのではと懸念が噴出している。ロシアのミンネカエフ軍副司令官は、オデッサを超えて、その隣モルドバとウクライナの境界にある沿ドニエストル地方にいるロシア軍と繋ぐことができると述べ、ウクライナ南部全体を支配下に入れることも示唆したからである。
ロシア軍は、沿ドニエストル地方で、ロシアが、ロシア語を話す住民が、モルドバに抑圧されていると言っているという。これはウクライナ東部へ侵攻した際にロシアが言っていたことである。
モルドバ外務省は、在モルドバ・ロシア大使を召喚し、住民抑圧は根拠がないとし、この発言に、深い懸念を表明したとのこと。
*エンドニエストル地方には、1990年代からロシア軍が駐留している。
www.jiji.com/jc/article?k=2022042300501&g=int
これまでの被害
国連によると(20日時点)、これまでに死亡した民間人は、2345人。負傷者は2929人。国内外への避難民は1280万人(国外516万人、国内770万人)。ウクライナ政府によると、経済損失は5649億ドル(73兆5000億円)。このうちインフラ損失が1190億ドル、私有財産905億ドル、民間企業損失800億ドル。
ウクライナのシュミハリ首相は、ウクライナの復興支援は、すべてロシアが支払うべきであり、世界で凍結されているロシアの資産で支払うべきと言っている。
一方、ロシアは、戦車、装甲車や、対空ミサイルなど3000基を失っており、戦死者も1300人以上で、戦力の25%を失ったとみられている。
www.nikkei.com/article/DGXZQOCB227IV0S2A420C2000000/
国際社会の動き:米国務長官、国防長官がウクライナ訪問
ロシアが核兵器を使う可能性があるため、国際社会は、ウクライナ人がどれほど虐殺されていても、直接的な軍事行動には出ていない。武器の供与はしているのではあるが、ゼレンスキー大統領が要求する戦車や戦闘機は供与できていない。ウクライナは、善戦してはいるものの、ロシア軍が本格的に戦闘機を導入して来れば、たちまち負けに転じてしまうだろう。
実際、日々、ウクライナ市民が多く殺されているのに、世界は基本的にウクライナとともにロシアと実戦で、戦おうとはしていないのである。
26日には、国連事務総長が、ロシアのプーチン大統領、またゼレンスキー大統領を会談することになっているが、結果が出ると期待する人は少ないようである。こうした中、25日、アメリカのブリンケン国務長官と、オースティン国防長官が、ポーランドを経由してキーフを訪問。ゼレンスキー大統領と会談した。
訪問はすべて極秘とされたが、訪問後にメディアにも報告が出された。ブリンケン国務長官らは、後で、アメリカは、ウクライナと東欧15カ国に7億1300万ドル(約900億円)を財政支援すると発表。このうち、約半分の3億2200万ドルはウクライナに送られるという。
今回の支援は、現金での支援なので、ウクライナが、必要に応じてもっと対空強化できるような武器購入に使うこともできるという。アメリカが、ロシアの侵攻以来、アメリカがウクライナに軍事支援した額は、総額で37億ドルとなった。
仏マクロン大統領で西側連携崩壊は回避
フランスで大統領選挙が行われ、現職マクロン大統領が、得票率58.54%で再選を決めた。対立候補のル・ペン候補は41.46%だった。今回、もし、極右のル・ペン候補が勝利していたら、フランスは、親ロシアとなり、EUの一致が乱れると懸念されていたので、それについては回避できたといえる。
ルペン候補は、ロシアへの経済制裁で、フランス自身の経済が圧迫されているとして、当選した場合は、これを停止すると公約していた。国民は物価上昇に苦しんでいることから、ルペン候補に追い風になったとみられていた。ルペン氏は、極右だが、徐々にその勢力を拡大している。