過越・復活祭終了・マスクも終了:治安まだ落ち着かず 2022.2.25

エルサレム聖墳墓教会 スクリーンショット

過越・復活祭・マスクも終了

イスラエルでは、先週、過越中に神殿の丘で衝突があってから、国内外の治安上の緊張で、落ち着かない状況が続いている。しかし、23日日没後は、過越明けで、種ありパンや小麦粉を使ったケーキをあえて食べる祭り“ ミモナ”が行われた。ベネット首相も、自宅でこの日を祝っていた。

イスラエルでは、ちょうどこの日、午後8時から、屋内でのマスク着用義務も解除されることになったため、人々は、マスクもはずしての祝いとなっていた。

www.timesofisrael.com/israels-indoor-mask-mandate-to-end-at-8-p-m-saturday/

続いての日曜、24日は、東方正教会系教会の復活祭で、聖墳墓教会では、2年ぶりにホーリーファイヤーの儀式が行われ、教会内はぎゅうぎゅう詰めの満員となった。ホーリーファイヤーは、聖墳墓教会(イエスの墓であり復活の場所を記念)のろうそくの火を人々がその場にいる人々が受け継ぎ、飛行機で全世界の正教会に持ち運ぶという儀式である。

ラマダンはあと1週間:治安はまだ落ち着かず

1)神殿の丘の衝突からガザ戦闘なるか:エスカレートさせない方針へ転換のベネット政権

4月15日の過越の祭りに合わせて、過激右派ユダヤ人が神殿の丘で子羊の犠牲をささげようとしているとの計画が明るみに出たため、パレスチナ人たちの反発が高まることとなった。イスラエルの警察は、このユダヤ人たちを事前に逮捕したため、実際に神殿の丘で、子羊の犠牲を捧げることはなかった。

www.timesofisrael.com/were-coming-back-netanyahu-tells-invigorated-supporters-as-government-teeters/

しかし、パレスチナ人たちは、ユダヤ人が第3神殿を建てようとしていると反発。神殿の丘(ハラム・アッシャリフ)のアルアクサモスクにこもって、イスラエルの治安部隊に投石や火炎瓶を投げてきたため、400人を逮捕した。この時、治安部隊の一部は、土足のままモスクに入って、パレスチナ人数十人を逮捕していたことから、パレスチナ勢力だけでなく、ヨルダン、エジプトだけでなく、UAEまでが、イスラエルへの非難を出すこととなった。

www.timesofisrael.com/at-cairo-summit-leaders-of-jordan-egypt-uae-discuss-jerusalem-tensions/

ハマスはこれを理由に、18日、19日、20日とイスラエルへロケット弾を発射。19日の分では、1発がスデロットの民家近くに着弾し、家が一部破損したが、負傷者なかった。続いて22日にもロケット弾が飛来したが、2発はイスラエルへ届かず、ガザ内部に着弾。1発はイスラエル南部空き地で被害なし。

イスラエルは、18日、19日と、ハマス武器庫などへの反撃を行った。しかし、ベネット政権は、できるだけパレスチナ人との衝突を避けるため、それ以上の反撃は行っていない。それどころか、これまでになく多くのパレスチナ人に労働ビザを出したり、経済支援まで行なっている。(ガザ失業率50%)

www.timesofisrael.com/2-rockets-fired-from-gaza-at-southern-israel-cause-no-damage/

また神殿の丘については、ラマダンが終わるまでなのかどうか、とにかく、イスラム教徒意外は、入場禁止という方針を表明している。ここまでの譲歩は、これまでの右派ネタニヤフ政権にはなかった動きである。

この方針により、確かに、ガザからの攻撃は減って平穏が続いている。しかし、当然ながら右派勢力からは、この間にハマスに新たな武器調達の時間を与えてしまうなどと、不満が噴出している。

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しかし、昨年の同じパターンで、この時期に始まったガザとの11日間の戦闘で、パレスチナ人192人が死亡した。今年は、違う対処をとっている形だが、今はまだ幸い双方共に死者は出ていない。今の所、落ち着いているが、イスラエルは、昨年同様の戦闘になった場合の備えを解いていない。

2)国内アラブ地域での暴力の問題

国内アラブ人居住地での暴力も懸念される点である。南部べドウインの町ラハットで、2つの部族間の争いがあり。24日午後5時ごろ、14歳の少女、レメス・アブ・アリさんが、銃撃の巻き添えにあって死亡した。警察は最終的には3人を逮捕したが、住民によると、銃撃は長時間続いていたが、警察はとりしまりにこなかったという。

www.timesofisrael.com/police-minister-says-rahat-violence-intolerable-reinforcements-to-be-sent-in/

この直前には、ネタニヤ東部のアラブの町、カランサワで、女性(33)が家を出たところで撃たれて重傷を負ったばかりだった。

石堂ゆみ

ジャーナリスト、元イスラエル政府公認記者、イスラエル政府公認ガイド、日本人初のヤド・ヴァシェム公式日本語ガイドとして活動しています。イスラエルと関わって30年。イスラエルのニュースを追いかけて20年。学校・企業・教会などで講演活動もしています。