エルサレムマラソンにこれまでで最高4万人参加:人質を思いつつ走る 2024.3.9

Jerusalem Marathon 2024 Photo: Sportsphotography

昨日8日、ガザでの戦闘が続く中、エルサレムでは毎年恒例となっていたマラソン大会の13回目が行われた。

主催者のエルサレム市は、今年は特に、国のために戦っているイスラエル軍、治安部隊や救急隊に敬意を払うとして、兵士など治安関係者1万5000人が招かれて、参加していた。また予備役兵とその家族は、参加費を半額とした。

March 8, 2024 (credit: MARC ISRAEL SELLEM/THE JERUSALEM POST)

まだガザで捕らえられている人質の早期帰還を覚えることにも重点が置かれたこともあり、参加者はこれまでで最大となる4万人にのぼった。海外からの参加は、70カ国から1800人だった。

競技はフルマラソン(42.2キロ)とハーフマラソン、10キロ、5キロ、1.7キロのファミリーレース、障害者のためのコミュニティレース(800m)などが行われた。イスラエル博物館、最高裁、大統領官邸前、旧市街城壁、ダビデの塔前などエルサレムの特徴的なスポットをカバーしていた。

イベントは朝6時半。国旗掲揚を持って開始され、最新の選挙で再選されたモシェ・リヨン・エルサレム市長が挨拶し、市長もハーフマラソンを走った。市内を広範囲に走るため、この日は、各地で通行止めとなったが、金曜日なので、安息

March 8, 2024 (credit: MARC ISRAEL SELLEM/THE JERUSALEM POST)

日入りの前には、全部が終了している。

スタートやゴールでの音響は、ハマスの襲撃を受けたNOVAフェスティバルでDJを担当していたヤリン・エロヴィッツさんが担当。人質の家族、解放された人質家族も参加し、レースの中では、人質解放を訴えて走る人々の様子も伝えられた。これまでに戦死した兵士に敬意を払う様子もあった。

優勝者は、コロナ以前は、だいたい毎年、外国から来たマラソン経験選手であったが、ここ数年、また今年も優勝者は、男子も女子もイスラエル人だった。賞金は、優勝が3750ドル、2位が2500ドル、3位が1250ドルとなっている。

www.timesofisrael.com/record-40000-run-in-13th-annual-jerusalem-marathon-with-spotlight-on-hostages/

このマラソンでは、参加する人が参加費を払うことや、参加しなくても数千人がレースを見に来るため、エルサレム経済に2000万ドル(30億円)近い収入になるとみこまれている。

エルサレムでは、明日からいよいよラマダンに突入していく。大きな嵐の前なのかどうかはわからないが、イスラエル人たちは、このイベントを通してまた一段と、所属意識と一致を実感したようである。明日からは特に、エルサレムを覚え、平和を祈られたし

石のひとりごと

戦争のニュースは日々悲惨になっていく。しかし、その渦中に住む人々は、日常生活を変わらず続けようとしている。

恐れて尻込みしてしまうことこそが敗北だからである。また、いつかは自分や自分の家族が、テロや戦争の犠牲になるかもしれない。だからできるときに、できるだけ楽しんでおこうという、異常の中で生きることを強いられてきたイスラエル社会独特の生き方であると言われている。

とはいえ、日本と同様、人々も変化している。かつて中東戦争をいくつも生き延びてきた世代ではない世代になっている。昔ほどに強くないイスラエル人たちも増えているのかもしれない。また今の現状が、これまでとは比べものにならない悲惨なものであるということも考えなければならない。

しかし、そんな中でもこの8日、エルサレムマラソンに4万人が集まった。ホロコーストを生き延び、あらゆる中東戦争を生き延びたユダヤ人たちの底力、その神である主との計り知れない関係の深さを思わされる。この試練も、将来必ず乗り越えることだろう。

それにしても、ぎりぎりになって、人間の不可能が明らかになってから主が介入されることで、主を証するというパターンが多いイスラエル。主の証国になるとう厳しい使命である。

そこまでして、私たちに主を証してくれているイスラエルの人々に、心からの敬意を払いたいと思う。

 

石堂ゆみ

ジャーナリスト、元イスラエル政府公認記者、イスラエル政府公認ガイド、日本人初のヤド・ヴァシェム公式日本語ガイドとして活動しています。イスラエルと関わって30年。イスラエルのニュースを追いかけて20年。学校・企業・教会などで講演活動もしています。