エルサレムの高校感染143人:教師がスーパースプレッダー 2020.6.1

ILTVnews よりスクリーンキャプチャhttps://www.youtube.com/watch?v=brVHCQRKeSk

新型コロナパンデミック第二波(まだ第1波が終わってなかったという説も)が懸念されるイスラエル。日曜の新たな感染は53人で、先週から急増しはじめた感染者は、5月30日終了時点で、174人となった。

チャンネル13によると、このうち134人は、エルサレムの高校、ジムナシア・レハビアの関係者であった。感染がいったん落ち着いたとみられてから、最大のクラスターである。

以下はKanテレビニュース。ヘブライ語だが、現地の高校の様子や高校生の様子もみていただければと思う。

調べによると、教師の一人が、体調が悪い中登校していたが、この人物が、多数に感染させる、いわゆるスーパースプレッダーであったとみられている。この学校では、生徒、教師など、関係者2000人全員の検査をすすめている。

エルサレムではこの学校の他にも感染や感染疑いが発生しており、計4校が急遽閉鎖され、数日の予定ではあるが、オンライン授業に戻された。保護者たちは、困惑しながらも、検査を行い、感染予防を続けて、学校は閉鎖すべきでないと言っている。

エルサレムだけでなく、ホロンなど、他地域の学校でも、感染や感染の疑いが発生している。全国で、17の学校や幼稚園で、一部の生徒や教師を帰宅させたり、閉鎖に逆戻りした。ベエルシェバの学校では、7年生生徒の母親に症状が出たとして、その子供の同級生150人が帰宅となった。

しかし、感染が発覚した地域以外での学校では、今のところ、予定通り授業を続けるとのこと。

www.timesofisrael.com/as-school-concerns-mount-all-from-jerusalem-high-school-hit-by-virus-isolated/

<従軍時期にも影響>

イスラエルでは、高校を卒業すると、通常は従軍することになる。イスラエルでは学年が9月始まりなので、現時点で高校を卒業した生徒たちは、多くがどの部隊に派遣されるかも決まっているという。

すぐに従軍する高校生もいるが、近年、メヒナとよばれる従軍準備コースをとる生徒も増えている。メヒナ(準備)コースは、従軍が決まっている若者が、1年間、イスラエル国内のあちこちでボランティアをしながら、イスラエルの歴史や社会を学ぶコースで、祖国に関する知識を得てさらに心から国のために従軍するというものである。

ILTVニュースでは、高校を卒業してまもなくメヒナに行こうとしていたタマルさんが、従軍そのものが延期されたので、メヒナも当然延期になったようだと話す。しかし、軍やメヒナからの連絡はなく、ちゅうぶらりんになっているとのこと。こんなことなら働きにいけたが、今の所、何もできないと言っている。

<公共バスも感染源か>

イスラエルでは、当初から、感染者の行動はスマホで追跡でき、自分がその場所にいたかどうかを判断して、検査に向かうことができるようになっている。その追跡によると、アシュドドからエラッド行きのバス、テルアビブからネタニヤ行きのバスからの感染も疑われている。

イスラエルの主な移動手段はバス。特に日曜朝は、安息日で帰宅していた兵士がいっせいに任地へ戻るので、エルサレムの中央バスステーションも、通常なら大混雑になる。時差出勤をしていたとは伝えられていないが、これまでにバスを利用した32人が感染していたことがわかっている。

www.ynetnews.com/article/HyZcBIZnI

また、さらなる差別につながるのではないかと懸念される点は、主にテルアビブで、多くはホームレスになっているアフリカ人労働者たちの間で感染が広がっている点。現在、検査が進められている。

<無症状者へも検査拡充へ>

感染拡大が治るにつれて、イスラエルでも検査数が著しく減少している。就任したばかりのエデルステイン保健相は、検査の対象を家族などの濃厚接触者にとどまらず、バスや列車などにまで拡大してスクリーニング(検査)すると発表した。

濃厚接触者とは、症状のある人との距離が2メートル以内で、15分過ごした人となっておる。このほか、接触がなくても医師の判断で検査を可能とするほか、ハイリスクとみられる人々については、積極的に検査をすすめるとのこと。1日に1万3000ー4000件になる見通しである。

www.jpost.com/health-science/health-minister-five-fold-increase-in-coronavirus-diagnoses-on-saturday-629819

<ネタニヤフ首相から国民へ>

学校での感染が拡大したことを受けて、土曜夜、ネタニヤフ首相は緊急の閣議を行った。結果、感染が急速に発生してはいるものの、まだ第二波であるかどうかを判断するのは早すぎるとして、現時点では、まだ以前のようなロックダウンはしない方針となった。

しかし、イスラエルでは、社会活動の解除がすすんで、ビーチやレストランなどもほぼ再開。バスも通常の混雑に戻っている。マスク着用や、2メートルのパーソナルディスタンスのような規制はあまり守られなくなっている。

ネタニヤフ首相は国民にむかって、「パンデミックはまだ終わっていない。鎮火はしたが、火はまだ残っており、追い風で炎になりうる。」として、ここ数日が勝負だと語り、油断しないで、ルールを守るよう訴えた。(イスラエルでは、罰金制度あり)

www.timesofisrael.com/pandemic-not-behind-us-next-few-days-are-a-test-warns-netanyahu/

石堂ゆみ

ジャーナリスト、元イスラエル政府公認記者、イスラエル政府公認ガイド、日本人初のヤド・ヴァシェム公式日本語ガイドとして活動しています。イスラエルと関わって30年。イスラエルのニュースを追いかけて20年。学校・企業・教会などで講演活動もしています。