日本でも報道されていることと思うが、日曜日夜に始まったムルシ大統領に辞任を求めるデモは全国で発生し、計100万人をゆうに超える大群衆となった。
カイロのタハリル広場は、エジプトの旗と反ムルシの”レッドカード(サッカーで反則した選手の退場指令のカード)を振りかざす人々で文字通り埋めつくされた。2日目に入った今日もまだまだ大群衆である。
反ムルシ派のグループが行ったムルシ大統領不信任に署名したのは2200万人。全人口の4分の1以上に上っていたという。
一部の過激派らは、カイロのムスリム同胞団のビルを襲撃して、ビルの隅々まで破壊。中にあった家具などを略奪した。このビルは、ムスリム同胞団の象徴的ともいえるビルだった。
一方、カイロのタハリル広場では、反ムルシ派のデモに対抗して、ムルシ大統領支持派もデモを行った。両陣営とも暴力には訴えないとしているが、日曜に始まったデモですでにカイロだけでも計8人が死亡している。
<なぜ人々は怒っているのか-イスラム化への反発>
今回は、幅広く女性や子供など一般の人々もデモに参加している。「ムルシ大統領は、国のためではなく、自分のイスラム同胞団のために働いている。エジプトをイスラム国家にしようとしている。」と人々は叫んでいる。
ムルシ大統領は、就任早々、憲法をごり押しで可決し、イスラム法を徐々に適応しているもようである。また、ムルシ大統領は6月に16人の新しい知事を任命したが、このうち7人がムスリム同胞団のメンバーだった。
中でも、ルクソールの知事に任命されたハヤット氏は、かつてルクソールで58人の旅行者を殺害したイスラム過激派”ジェマア・イスラミア”のメンバーである。
こうした経過から、一般の世俗のエジプト人たちの”空前の不信任”を出したというわけである。
MENA(エジプト国営放送)によると、国防大臣を含む6人の閣僚が首相に辞表を提出。反ムルシ・デモの側に立つものとなっている。
<エジプト軍登場-ムルシ大統領、最後通告を拒否>
2011年、ムバラク大統領が倒れた後、新大統領が立ち上がるまでエジプト軍が、暫定政府としてエジプトを管理した。今回も事態収拾のためにエジプト軍が登場している。
エジプト軍は、”空前の不信任”だとして、2日午後5時まで(日本時間夜10時ごろまで)になんらかの解決策を出すよう、ムルシ大統領と、その最大ライバル野党双方に要求を出した。もし出さないなら、軍が介入するとの最後通告を行った。
これを受けて、反ムルシ派は、もし大統領が期限内に辞任しないなら、大統領官邸へ群衆がなだれこむと訴え、すでに官邸前に集結しはじめているもようである。
しかし、2日早朝、ムルシ大統領は、軍の最後通告の要求を拒否し、あくまでも自らの政策を続けると返答した。
こうした事態を受けて、先週からエジプト経済は急下降しはじめている。早期に解決できなければ、エジプトが分裂、内戦へと移行していく可能性も懸念されている。