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侵攻しないと言うもわかりにくいロシアの動き
1)ウクライナ周辺とベラルーシのロシア軍15万(全陸軍の60%)
第三次世界大戦前夜のような緊張になりつつあるウクライナ問題。アメリカやイスラエルは、16日水曜にもロシアからの攻撃が始まると言っていたが、その日、ロシアは逆に、訓練が終わったとして国境から軍を撤退させる映像を報じた。また、ベラルーシとの共同演習も終え、軍は基地に撤収すると発表した。
しかし、アメリカなどはこれを否定。ロシアは、撤退しているのではなく、逆に、7000の兵を国境へ派遣しており、ロシア軍は、今や15万の大軍になっていると、バイデン大統領が語った。アメリカ防衛省のベン・ワラス氏は、前ロシア陸軍の60%の兵力がウクライナ周辺にいることになる。
15万うち、3万は、キエフの北、ベラルーシにおり、残り12万がウクライナ国境周辺にいる。BBCによると、ウクライナ周辺に駐留するロシア軍の中には、野戦病院らしきものもある。これまで経過をみれば、ロシア動きがきわめて挑発的であるように見える。
www.bbc.com/news/world-europe-60158694
2)ウクライナ軍と、東部親ロシア地域の間で砲撃:幼稚園も被害
こうした中、17日、ロシア下院が、共産党の提案に基づき、ウクライナ東部で、2014年以来、実質親ロシア派が支配するルガンスク州を独立国家に認めるよう、プーチン大統領に要請を提出した。
この地域は、ドネツク州と共に、その立場をめぐって、ウクライナと衝突してきた地域であり、今、このような話を出すことは、きわめて挑発的と言える。
www.asahi.com/articles/ASQ2H7HMDQ2HUHBI02X.html
その17日、ロシア通信は、ウクライナ軍から親ロシア派地域に4回の砲撃があったと報じた。その後両者の間には、銃火器による攻撃の応酬が30回、停戦合意違反は39回報告されている。
砲撃の一つは、ウクライナ領内の幼稚園に着弾していたが、負傷者の報告はいまのところない。
www.nytimes.com/2022/02/17/world/europe/ukraine-conflict-russia-military.html
3)ロシアの返答:軍事技術的措置を示唆
ロシアの要求は、ウクライナをNATO(北大西洋条約機構)に加盟させず、これ以上NATO領域を拡大しないこと、NATO領域を1997年まで戻すこと、それを保証することなどである。この要求を通すため、その真剣さを表明するために、国境に軍を並べているのであって、本当にウクライナに侵攻するつもりはないと主張し続けている。
このロシアの要求に対し、アメリカは、主権国家であるウクライナの決断は守られるべきだとして、ロシアの主張でウクライナのNATO加盟を不可にすることはできないと返答。軍事圧力による要求は認められないとした。しかし、代わりに、NATOとロシアが衝突しないようにする代替案を出した。
ロシアはこれを検討すると言っていたが、17日、ロシア外務省が、これに対するロシアの返答を書面で出してきた。それによると、ロシアは、改めてウクライナへの軍事侵略の意思はないと強調した上で、あくまでもウクライナのNATOへの加盟は受け入れられないと表明した。もしアメリカがそれを受け入れない場合は、“軍事技術的措置”をとるしかないと示唆した。それが何を意味するのかは不明。
また国境からの軍の撤収については、自国領内のことなので、どの国にも迷惑になってないと主張した。逆に、アメリカやEU諸国がウクライナに軍事支援していることを批判し、これを撤去するべきだと主張した。
ロシアと西側は、妥協点をみつけられなかったということである。ブリンケン国務長官は、国連でのスピーチにおいて、今週中にも攻撃が始まる可能性があると世界に警告を発している。
特にアメリカが懸念しているのは、ロシアが、情報操作で、攻撃の正当性を作り上げる可能性である。たとえば、諜報活動があったとか、ドローンが飛来したとか、捏造する可能性があり、それがきっかけになって全面戦争に突入してしまうということである。それはいつ起こってもおかしくはないということである。
*外交努力継続
戦争勃発をどう阻止するか。ロシアにどう返答するのか。幸い、ロシアは外交的な交渉には応じる姿勢を崩していない。このため、17日にはEUで、この問題への対処が話し合われた他、18-20日の現在、ドイツでミュンヘン安全保障会議が行われている。この間の19日に、緊急G7外相会議(オンライン)が開催される。
西側で足並みを揃える狙いとみられるが、日本も明らかにこちら側である。岸田首相は、17日、プーチン大統領との電話会談で、その旨を伝えた。
www.nikkei.com/article/DGXZQOUA1760I0X10C22A2000000/
その後来週には、ブリンケン米国務長官とロシアのラブロフ外相が、会談するとのニュースが入っている。
イスラエルへの緊急帰国便は空席目立つ
1)イスラエル人の帰国進まず
こうした危機的な様相から、イスラエル政府は、ウクライナ国内にいるイスラエル人に至急、帰国するよう指示し、エルアル航空などの民間機を増便させている。しかし、イスラエル人の帰国が予想以上にすすんでいない。
キエフからテルアビブ行きは1週間に32便まで増やされているが、利用があまりにも少ないために、翌朝便がキャンセルになった17日夜のエルアル航空の座席はほぼ半分しか埋まっていなかった。
しかし、現地にいるイスラエル人の多くは、ロシアが本当に攻撃してくるとは思っていないようである。これまでに帰国したイスラエル人は2000人強にとどまっている。今もウクライナのイスラエル大使館に滞在を登録しているイスラエル人は6500人だが、実際には1万人はいるとみられている。
領事館の副主任を務めているヨアブ・ビストリスキー氏(49)によると、キエフにあるイスラエル大使館・領事館では、現地にいるスタッフに加え、5人の応援がイスラエルから来ているという。滞在届や、新生児の登録やワクチン接種登録など領事館業務を継続しながら、出国手続きのために24時間休まず働いている。
イスラエル外務省は、17日、万が一に備え、ウクライナ西部でポーランド国境に近い、ルヴィウにも領事館出張所を解説した。ロシアの侵攻が始まって、空路が使えなくなれば、陸路ポーランド、ハンガリー、スロバキア、もるどば。ルーマニアなどから退避できるようにするためである。
ただ領事館ではとりあえず、イスラエル人だけを対象にしており、この瀬戸際になって移住しようとするユダヤ人たちの対処は、ユダヤ機関や他の国際機関にまかせていると語っている。イスラエル国内では、ユダヤ人たちがこぞって移住する可能性に備えを進めている。
www.timesofisrael.com/kyiv-envoy-urges-israelis-to-leave-warns-rescue-flights-might-not-be-possible/
*イスラエル外務省がロシアにユダヤ人保護を要請でウクライナから苦情
こうした中、ウクライナ政府は、イスラエルが、ロシアがウクライナへ侵攻する際、ユダヤ人を助けてほしいとロシア政府に要請したとして、
大使を呼び出して苦情を申し入れた。
それによると、イスラエル外務省のアロン・ウシュパズ氏が、ロシアの副外相ミカエル・ボグダノブ氏と電話会談した際にこの要請が出されたもようである。言うまでもなく、ウクライナ人を見捨てて、自分だけ助かろうとするかのような動きである。ウクライナ政府は、欧米やイスラエルが、必要以上に、情勢悪化を煽っていると、不快感を訴えている。
www.timesofisrael.com/ukraine-upbraids-israeli-ambassador-after-jerusalem-seeks-russian-guarantees/
ユダヤ人団体による緊急難民対策もスタンバイ
もし戦争になったらどうなるのか。アメリカは、最悪の場合、ウクライナでの死者は5万人。ウクライナから溢れ出てくる難民は、100万から150万人とも予想される。難民の大波である。
アメリカのユダヤ人による難民支援団体HAIS(Hebrew Immigrant Aid Society・ヘブライ移民援助協会)は、1881年にユダヤ難民の支援のために設立されたが、その後、1975年にベトナム移民の定住支援を任されて以来、ユダヤ人に限らず、あらゆる難民の支援を行なっている。
ウクライナでは2001年から活躍し、2013年には、Right to Protection というウクライナ部門が独立し、2014年の内戦の際には、国外脱出を希望するユダヤ人をアメリカやイスラエルに避難させたあと、現地にいる難民の支援活動を行なっている。
ウクライナのこの地域では、あまりニュースにはならない中、8年間ずっと小競り合いが続き、多くの難民が苦しんでいたようである。国連によると、昨年、ウクライナ国内で自宅に帰れない難民が73万4000人となっている。
現在、HAISとRight of protection が協力し、戦争になった場合の難民の波に対処しようとしているもようである。
www.timesofisrael.com/jewish-refugee-aid-group-readies-for-possible-humanitarian-crisis-in-ukraine/