ウクライナで明日ユダヤ人9000人分の過越(セダー)を準備 2022.4.14

ベルリンでウクライナ避難民に過越用品を配布(AP Photo/Markus Schreiber)

戦時下ウクライナのユダヤ人のセダー

ユダヤ人たちは、明日15日の日没から過越の祭りに入る。以後、23日まで、種無しパン(マッツア)を食べる週が続き、その間、政府関係省庁や大手企業などの多くは休暇になるか、半日だけといった大型連休ムードの1週間になる。

種無しパン(マッツア)とは、イーストが入っていないパンだが、イスラエルやアメリカ以外ではなかなか入手しにくい。

このため、特に世界に離散しているディアスポラのユダヤ人を助けることを使命としている超正統派ハバッド派のラビたちが、各国で過越の夕食(セダー)を開催するとともに、必要なマッツアをユダヤ人たちに提供する働きをしている。

ハバッド派によると、戦時下にあるウクライナでは、多くのユダヤ人がすでに国外へ避難したが、それでもまだ80%は、ウクライナ国内に残っているとみられる。

ハバッド派は、アメリカのJDC(ジョイントと呼ばれるユダヤ人によるユダヤ人支援団体)が協力して、戦時下でもユダヤ人たちが、過越を祝えるよう、マッツア16トンほどを搬入し、ボランティアが、避難できないでいる高齢者などに届けている。以下は、オデッサで過越用品を配っている様子

また、ハバッド派ラビたちが、ウクライナにいるユダヤ人たちのために各地で、初日の夕食セダーを52ヶ所、9000人に向けて開催することになっているという。その中心になっているオデッサのラビ・アブラハム・ウォルフの家族は、先に国外へ避難して今ベルリンにいる。

ラビは使命のために、ウクライナ国内に残ったということである。以下は、3月中に避難した女性と子供役140人が、神への感謝を歌っている様子。(男性はウクライナ国内に残留)

周辺国に避難したユダヤ人のセダー

アメリカのJDCは、これまでに、ウクライナのユダヤ人1万1600人を国外に避難させている。JDCはポーランド、モルドバ、ハンガリー、ルーマニアなどにいるユダヤ人避難民のために、マッツア2トン、ぶどうニュース(セダーで必要)400本、過越用のコシェルの食物約320キロを用意した。

ハンガリーの首都、ブダペストでは、避難民100人が滞在するホテルで、セダーがとり行われるとのこと。オデッサのラビ・ウォルフの妻と子供が避難しているベルリンでも難民1000人のためのセダーが行われる。

過越の祭りは、かつてヘブル人(後のイスラエル人)が、奴隷となっていたエジプトから解放されたことを記念する例祭である。ラビたちは、国内外で避難民となったユダヤ人や、全世界のユダヤ人にとって、過越がリアルに感じられており、奇跡は今の時代にも起こりうることを信じる時になると語っている。

日本のシナゴーグにウクライナからの避難民は来ていないが、神戸と東京のシナゴーグでも明日、日本にいるユダヤ人とその家族のために、セダーが行われる。

www.timesofisrael.com/a-festival-of-freedom-passover-takes-on-new-meaning-for-jews-fleeing-ukraine/

4月14日ウクライナ情勢まとめ

ウクライナでは、ロシア軍がキエフ周辺から撤退し、ブチャやその周辺で遺体が散乱し、埋葬されていた多くの遺体が今もまだ続き、いよいよロシアの戦争犯罪という言葉が、世界に広まり始めている。

南部マリウポリでは、地下にいたウクライナ兵士らに対して化学兵器が使われた模様で、市民にも被害が及んでいるもようでる。ロシア側情報によると、ウクライナ兵1000人以上が、投降したとのこと。マリウポリがいよいよロシアに制圧されつつあるが、マリウポリにはまだ市民10万人がいる。

マリウポリ市長は、市民の死者が2万人を超えると世界に訴えている。これを受けて、バイデン大統領が、ロシアの行為は「ジェノサイド」だと思うと述べ、攻撃用ヘリコプターなどをウクライナ軍に支援することを決めたとのこと。

ロシアは、キエフから撤退した軍を、東部に向かわせており、近く東部で全面戦争になるのではないかと言われている。

こうした中、南部オデッサ市長が、黒海のロシア艦隊モスクワがミサイル攻撃を受け、重大な損傷を負っていると報告した。ウクライナ軍によるものかどうかは不明。

この件と関連があるかどうかは不明だが、13日、ロシアは、ロシア軍への攻撃がやまないなら、キーフを含むウクライナ全国への攻撃も辞さないと発表した。

www.timesofisrael.com/moscow-threatens-to-strike-kyiv-after-russian-flagship-seriously-damaged/

注目される動きとしては、フィンランドとスウェーデンが、NATO加盟を検討しており、フィンランドはこの6月にも加盟を申請。スウェーデンがこれに続く見込みと伝えられている。これを受けて、ロシア軍が、フィンランド国境に、ミサイルシステムを移動しているとの情報もある。

ウクライナのユダヤ人たちには、そうとう厳しい状況下でのセダーになりそうである。

石のひとりごと

ハバッド派を始めたラビ・メナヘム・シュネルソンは、1902年、ウクライナ南部で生まれた。このため、ウクライナには、ハバッド派の強い基盤があるという。

ハバッド派ラビは、他のユダヤ教教派と違って、世界に離散しているユダヤ人をとにかく助けるということを使命にしており、まさに献身の様相なのである。

神戸のシナゴーグのラビ・シュムリックによると、なぜそれほどまでに働くのかと聞くと、すべてはラビ・シュネルソンのためだと言っていた。

ラビ・シュネルソンの教えが今に至るまで、ハバッド派のラビたちを動かしている。

まだまだわからないことが多いが、こうなってくると、このラビ・シュネルソンがいったいどんな人で、どんな教えをしていたのかに興味がわいてくる。

ということは、私たちクリスチャンの生き方が、どれほどイエスに献身しているのかを人々が見る時、イエスに目を向けるきっかけにもなるのだろうということもまた実感させられている。

石堂ゆみ

ジャーナリスト、元イスラエル政府公認記者、イスラエル政府公認ガイド、日本人初のヤド・ヴァシェム公式日本語ガイドとして活動しています。イスラエルと関わって30年。イスラエルのニュースを追いかけて20年。学校・企業・教会などで講演活動もしています。