イラン:新型コロナといなごの大群襲来 2020.3.7

出展:BBC

イランの新型コロナの現状

イランは、現在、新型コロナの感染者4747人、死者124人と、今や中国の次に死者が多い国になった。首都テヘランで最も感染が拡大しているため、政府要人たちの間で感染が広がっている。

これまでに、元在シリアのイラン大使で、1981年から16年も副外相を務め、現在は、ザリフ外相の顧問となっているシェリコレスラム氏が、新型コロナ肺炎で死亡した。シェリコレスラム氏は、1979年のテヘランにおけるアメリカ大使館占拠事件に関わった一人であった。

また今のイスラム最高指導者ハメネイ師の諮問組織のメンバーであるミルモハンマド氏、ラメザニ議員が死亡したほか、もう一人ラフバル議員が昏睡状態だという。ハリルチ副保健相が新型コロナ陽性であることがわかっている。

www.bbc.com/news/world-middle-east-51628484

イランは、全国主要都市での金曜礼拝をキャンセルした。学校なども休校とさせた他、驚いたことに、混み合った刑務所が危険だとして、極悪犯でない囚人5万4000人を釈放した。近く都市間の移動を禁止するとのこと。

www.timesofisrael.com/adviser-to-irans-foreign-minister-dies-of-coronavirus/

政府の対策不備:情報操作もある?

NYTによると、イランはすぐれた医療施設を持ち、ここまで拡大するはずがない国だという。ここまで現状が悪化したのは、現政権が正しく対処しなかったからである。

イランと中国は軍事的にも支援する関係にある。またアメリカが、核開発、テロ組織支援の疑惑が続くイランへの強力な経済制裁を発動し、世界にも協力を要請する中、中国はこれに応じず、イランとの貿易を続けたのであった。

イランは、中国、武漢で感染が広がり始めた後も、中国との往来を止めなかった。イランでの最初の犠牲者は2人。2月19日、コムで報告された。一人は、武漢に行っていたビジネスマンで、もう一人は医師であった。感染はこの2人から家族、友人たちへと広がっていったとみられる。

またコムは巡礼地の一つでもあるので、ここから31の州全域へ感染がひろがっていったと考えられる。

イランでの犠牲者数は、当局のものと、それ以外のところから来る数字に大きな誤差があった。このため、イランでどのぐらいの犠牲者が出ているのかは未知である可能性も否定できないだろう。

また、政府高官に死者や陽性の人がでているのは、単に、政府高官らが優先して検査を受けていることも考えられる。地方の小さな町の看護師が陽性であることは、彼女が死亡してから1週間後に知らされたという。その間に、感染者は大幅に増えたということである。

www.nytimes.com/2020/03/06/opinion/coronavirus-iran.html

イランにいなごの大大群

この2月から、アフリカ、中東、アラビア半島、アジアににいなごの大大群が発生している。ケニアを襲ったいなごの大群は、ニューヨークの3倍の大きさにもなっていたとのこと。

www.jpost.com/International/Bible-coming-to-life-Locusts-plague-Middle-East-Asia-Africa-618182

いなごの大群は、農作物をすべて食い尽くしてしまうため、ヨルダンでは、国家非常事態宣言が出された。

また、いなごの大群は、新型コロナへで苦しむイラン南部にも到着した。イランの農業関係者によると、昨年の大群は、昨年の7倍はあるとみえ、1−1.5キロの広がりであったが、今年は、7−10キロはあったと語っている。殺虫剤で死んだいなごの遺骸は10−15センチの層をなしていたという。

www.jpost.com/Middle-East/Iran-News/Iran-afflicted-by-large-swarms-of-desert-locusts-amid-coronavirus-woes-619807

それにしてもイランは災難続きである。経済制裁、ウクライナ機の誤爆、新型コロナに、いなごである・・・

石のひとりごと:政府のための先手の祈り

新型コロナのような事態の場合に、それぞれの国の政府の対処で、ここまで被害が変わってくるものかと実感させられている。イランは、決して後進国ではない。政府の対処が早ければ、死者はもっと防げたかもしれない。これからの動きに注目したい。

国民の命を何よりも大事に考えるイスラエルは、国際社会の反発も考えず、経済へのダメージも顧みず、すばやく外国人の流入を、厳しすぎるまでに遮断した。まだ油断はできないが、今の所、諸外国からの観光客で溢れかえるの国のわりには、まだ感染者は20人に達していないし、死者も出ていない。

ホロコーストを経験したユダヤ人の国、イスラエルにとっては、とにかく、国民の命こそ第一なのである。しかし、経済的なダメージも、これから出来うる限り、保証していくと思われる。

懸念されるのは我が国だ。安倍政権の対処を見ると、どうも国民の命より、中国への忖度、また経済活動の維持を優先したとしか思えない。専門家の意見をどこまでとりいれているのかわからないという点ではイランも同様である。人命よりも政治が優先しているのは明らかだ。それは国際社会にも明らかになった。

日本は、ようやく今日から日韓、イランからの入国制限を始めたが、どうにも遅すぎるだろう。また、イタリアはどうなっているのか?ヨーロッパやアメリカでも、新型コロナが猛威をふるい始めているが、また後手になるのだろうか。日本人を入国拒否する国は増えつつある。

今、韓国が、日本の処置を厳しすぎると言って、日本人の入国遮断と、報復措置をはじめてるいる。しかし、その前に、イスラエルは韓国人を飛行機から降ろさないまま追い返すという、もっと厳しい、失礼な措置をとった。韓国はイスラエルに抗議したが、イスラエルは自国人を守るためだとして、まったく気にもしていなかった。

政治外交優先の方針からか、海外からの流入を止めるよりも、先に全国の学校を盲目的に休校にするという、本末転倒的な動きもあった。また、休ませた子供の学業をどう維持するのかも措置が講じられていない。

安倍首相が、今倒れんばかりのプレッシャーの下におられるとは思いながらも、あまりの無計画さに、正直かなりの落胆と懸念を感じざるをえない。

しかし、政府が後手後手であるのと同様、私たちクリスチャンの政府へのとりなしも後手ではなかっただろうか。無論、先を見て祈るすばらしいとりなし手は、日本人の中にも少なからずいる。しかし、一般的に、私たち日本人は、政府に限らず、”何かが目に見えておこらないとわからない、動けない”という弱点を持っていないだろうか。

今回、先手先手で、すばらしい対処として評価されている台湾政府だが、台湾人クリスチャンたちは、中国との折衝もあったためでもあるが、2018年から特に政府のためにとりなしていたという。その中には、来るべき自然災害の時に、迅速で正しい決断をとれるようにと祈っていたとのことであった。

日本は、特に災害の多い国である。私たち日本人クリスチャンこそ、何かがおこってから祈るのではなく、十分早く、まだ困難が発生する前に、国や政府のための先取りのとりなしができるものに変えていただきたいと願わされている。

石堂ゆみ

ジャーナリスト、元イスラエル政府公認記者、イスラエル政府公認ガイド、日本人初のヤド・ヴァシェム公式日本語ガイドとして活動しています。イスラエルと関わって30年。イスラエルのニュースを追いかけて20年。学校・企業・教会などで講演活動もしています。