イラン合意問題:思わぬ方向へ 2015.4.17

イランと6対国が4月1日に滑り込みで、イランの核兵器開発疑惑に関する最終合意の前のプレ合意にいたった件について。事は意外な方向に動き始めている。

イランでは、ハメネイ師が合意しないかもしれないという意思表示をしたことはお伝えした通りである。これに対し、アメリカでも議会が、仮にオバマ大統領がイランと最終合意に至ったとしても、これを拒否することができる法案が通る見通しとなった。

www.ynetnews.com/articles/0,7340,L-4647125,00.html

これでたとえオバマ大統領が、イランとの合意に達しても、議会がこれに合意しない限り、制裁緩和を実施できないことになる。6月の最終合意がだんだんあやしくなってきた。

イスラエルはこうしたアメリカの動きを歓迎すると言っている。ステイニッツ情報相(仮)は、ネタニヤフ首相が先月、国内からかなり批判を受けながらも、アメリカ議会での演説を実施したことが功を奏したといったニュアンスを語っている。

しかし、合意に達しないということは、外交解決の道がなくなったということであり、あとは軍事介入しかないということになる。アメリカ軍の デンプシー総司令官は、「外交という道がなくなったら武力に出るという方針は変わっていない。」と言っている。

<ロシアがイランへ地対空ミサイル販売再開へ> http://www.ynetnews.com/articles/0,7340,L-4646703,00.html

しかし、プレ合意の”悪”影響は、意外なところから出始めた。ロシアである。ロシアのプーチン大統領は、6カ国がイランへの経済制裁緩和へ動きはじめているとして、イランに強力な地対空ミサイルS300の販売禁止の措置を廃止すると表明した。

S300は、戦闘機を、地上から撃墜するミサイルである。もしイランがS300を配備してしまうと、イスラエルやアメリカが、イランの核兵器工場などを攻撃しようとした場合に、大きな障害になるとみられている。

S300については、数年前にも大きな問題となり、ロシアは国際社会からの圧力から、イランに販売するとの契約をしていながら、実際には表立って販売も搬送もできない形となっていた。(当時、実際には搬入されているといった記事も出回っていた)

しかし、今回、6大国がイランへの態度を軟化させていることを受けて、ロシアが先取りでイランとの取引を再開するというわけである。

ロシアは、ウクライナ問題で、ヨーロッパやアメリカからの厳しい経済制裁を受けており、経済的には相当苦しくなっている。アメリカ政府は、ロシアが”資金不足”からイランへのS300販売を再開したとの認識を明らかにしている。

ネタニヤフ首相は、プーチン大統領に電話をかけ、イランにS300を引き渡さないよう要請した。しかし、プーチン大統領は、「S300は、あくまでも防衛の武器であり、イスラエルにとって脅威にはならないはずだ。」と言ったという。

今後、イランとの合意が頓挫し、核兵器開発を止める手だてがなくなった場合、イスラエルが、核兵器施設を攻撃する可能性も出て来るが、その場合、S300が大きな障害になる可能性がある。

また、現在、サウジアラビアなどが、イエメンでイランの支援を受けているシーア派武装組織を空爆しているが、イランがロシア製の武器で強くなっていくことは中東の力関係が変わって行く可能性を示唆している。

石堂ゆみ

ジャーナリスト、元イスラエル政府公認記者、イスラエル政府公認ガイド、日本人初のヤド・ヴァシェム公式日本語ガイドとして活動しています。イスラエルと関わって30年。イスラエルのニュースを追いかけて20年。学校・企業・教会などで講演活動もしています。

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