イランはどう出る!?:アメリカ中央軍総司令官がイスラエル入り 2024.4.13

IDF Chief of Staff Lt. Gen. Herzi Halevi meets with CENTCOM chief Gen. Michael Erik Kurilla at the IDF HQ in Tel Aviv, April 12, 2024. (Israel Defense Forces)

ダマスカスのイラン領事館で、IRGC(イラン革命防衛隊)の幹部ザヘディ司令官らが、イスラエルに暗殺されたことについて、イランの最高指導者ハメネイ師は、イスラエルへの“報復”を行うと宣言。

これに対し、イスラエルは、イランの核施設も示唆するほど、あらゆる攻撃に対処する準備はあると言い返している。

イスラエルとイランの戦争が緊急に懸念される中、バイデン大統領は、アメリカがイスラエルの側に立つことを明言。

ブリンケン米国務長官が、政治的に戦争を阻止しようとする一方で、アメリカ中央軍の総司令官がイスラエル入りして、本格的な戦闘に備える動きも始まっている。

アメリカの牽制:USCENTCOM(アメリカ中央軍)総司令官がイスラエル到着

アメリカは、2020年1月3日、IRGC(イラン革命防衛隊)警備隊のソレイマニ最高長官を、イラクのバグダッドで暗殺したが、イランはその反撃として、1週間以内に、報復として、イラクの米軍基地2ヶ所を弾道ミサイルで攻撃した。

米軍は、膨大な被害を受けた。このため、イランの反撃は避けられないことをアメリカは、実感しているといえる。

アメリカは、イランのイスラエルへの攻撃が、11日には数日以内、続いて24―48時間以内に始まる(12日金曜あたり)、さらには数時間以内と、具体的な時間枠を示し、イランからの攻撃は、ドローン100機、数十発のミサイルが含まれるとの見通しまで発表した。

www.timesofisrael.com/report-warns-iran-could-launch-major-drone-and-missile-attack-as-soon-as-friday/

また、この流れの中で、バイデン大統領は、記者会見の場で、記者にイランへのメッセージとして問われた際、「Don’t(やめておけ)」と返答。アメリカがイスラエルの防衛にコミットしているので、イランの試みは成功しないと語った。

クリラ米軍大将とガラント防衛省 IDF

この緊張の中、11日、USCNTCOM(アメリカ中央軍)のマイケル・クリラ総司令官がイスラエル入りして、ガラント防衛相、イスラエル軍のハレヴィ参謀総長らと協議する様子が世界に発信された。

USCNTCOMはイランがテロ組織と指定するほとに、イランとアメリカの敵対関係を強調する存在である。

実際ここしばらく、イエメンのイラン傀儡フーシ派と米英の戦闘が続いている中、11日、紅海では、フーシ派のドローン拠点が、USCNTCOMの海軍によって破壊されている。

アメリカのメディアFOXによると、アメリカは、中東地域の米軍を守るために、軍備を増強する計画だという。そのためにも、イスラエルとの協力は必須である。

ガラント防衛相は、「イランはイスラエルとアメリカを、(ガザ問題で)引き離せると思ったかもしれないが、イラン自身が両国の関係を強化している。私たちは肩と肩を並べて共に立っている」と語った。

www.timesofisrael.com/report-warns-iran-could-launch-major-drone-and-missile-attack-as-soon-as-friday/

これらはすべて、バイデン大統領の、アメリカはイスラエルの防衛にコミットするとの表明を目に見える形で、表明した形であり、これでもイランがイスラエルへ攻撃するなら、それは、アメリカへの宣戦布告になるということである。

こうした動きと並行し、ブリンケン米国務長官は、政治的に戦争を防ごうとして、イランに、アメリカは、イスラエルのダマスカスでのザヘディ司令官暗殺に関わっていなかったことをイランに伝えたとのこと。

アメリカは戦闘を望んでいたわけではないということで、少しでも戦争を防ごうという試みである。

イランの出方は見えず:戦争に備える欧米諸国

では、今後、イランはどう出るだろうか。ここまでの強力な牽制の中、しかも、アメリカの予想するスケジュール通りに、イランがイスラエルを攻撃をするだろうか。この世界的な物議そのものが、アメリカのイランへの強力な牽制であったのではとも思わされるほどである。

Oct. 13, 2023. (AP Photo/Hussein Malla)

実際のところ、イランの外相は、数日前、オマーンにおいて、アメリカが参戦してくるほどの大規模な攻撃をするつもりはなく、ヒズボラなど関連組織に、イスラエルを攻撃させることになるとアメリカに伝えてきたとの情報もある。

しかし、アメリカは、遅かれ早かれ、イランが何らかの攻撃をしてくると言っており、事態が急変する可能性もあると緊張を崩していない。

アメリカ政府は、在イスラエル大使館職員らに、テルアビブ、エルサレム、ベエルシェバといった大都市以外への外出を控えるよう、指示している。

ドイツ政府は、イランにいる国民にイランから出るよう警告。ドイツの航空会社、ルフトハンザはイランへの乗り入れを停止している。オーストリア航空も続くと発表。

フランスは、市民に、イラン、レバノン、イスラエル、パレスチナ自治区への渡航を控えるよう指示を出した。イギリスは、イスラエルとパレスチナへの不要不急の渡航を控えるよう指示。ポーランド、インドも同様の指示を国民に出している。

www.aljazeera.com/news/2024/4/12/france-india-russia-uk-issue-travel-warnings-over-israel-iran-tensions

ロシア・中国とサウジアラビアなどの出方は?

ロシアは、11日、イランを含め、中東関係諸国に、自制を呼びかける声明を出した。また、イスラエル、パレスチナ、レバノンの安全上のリスクを警告し、国民にそれらの地域への渡航を控えるよう指示した。

ロシアは、近年、イランとの貿易だけでなく、ドローンの供給を受けることで、世界からの経済制裁を生き延びた感がある。もしイスラエルとイランが戦争になれば、イランからロシアへの軍備供給にも影響するので、ロシアとしても、この戦争を止めたいのかもしれない。

イスラエルとハマスの仲介において、ロシアが関わっていないことについて、クライナとの戦争で手一杯で、ロシアの中東での影響力が弱体化しているとの指摘もある。

ブリンケン米国務長官は、「この対立のエスカレーションはだれのためにもならない」として、中国、トルコ、サウジアラビアに対し、イランにイスラエル攻撃を思いとどまるよう、とりなしを要請した。ここでも、アメリカは、ダマスカスでのザベディ司令官暗殺には関わっていないと強調したとのこと。

www.timesofisrael.com/liveblog_entry/blinken-asks-china-turkey-saudis-to-dissuade-iran-from-attacking-israel/

石のひとりごと

今土曜日午後4時で、アメリカが、イランが攻撃するといった時間は、もう過ぎている。いわば、いつ攻撃があってもおかしくないのだが、静けさは続いている。

ここまで騒がれた上で、イランが、アメリカに予告された通りに攻撃するだろうかとも思うが、最新ニュースでは、イランがドローン発射装置を動かしているという。

戦争は、確かにイランにとっても、いいことなどないはずだが、緊張は最大限で続いている。

*配信は午後6時1回だが、万が一戦争が始まったら、適宜記事をアップする予定なので、ニュースをみながら、オリーブ山通信も参考にしていただければ幸いである。

石堂ゆみ

ジャーナリスト、元イスラエル政府公認記者、イスラエル政府公認ガイド、日本人初のヤド・ヴァシェム公式日本語ガイドとして活動しています。イスラエルと関わって30年。イスラエルのニュースを追いかけて20年。学校・企業・教会などで講演活動もしています。