イラクでは、ISISが、新たに世界最大の石油精製施設を制覇し、先のモスル銀行はじめ各都市を制覇するたびに資金力をつけながら、主都バグダッドをめざして前進を続けている。
ISISが目指すのは、タリバンのようなイスラム法シャリアが支配するスンニ派イスラム主義帝国である。
すでにシリアとイラクの国境線が微妙になくなりつつあり、メディアや専門家の間では”イラクが消滅する”などといった極端な言葉も登場するほどである。http://www.inss.org.il/index.aspx?id=4538&articleid=7112
今一番、神経を尖らせているのは、イラクと国境を接するもう一つの国、ヨルダン。ヨルダンでは先週、ISISを支持するデモまで発生している。ヨルダンは、イラクとの国境を閉鎖して警戒するとともに、アメリカと、イスラエルとも治安問題で連絡をとりあっているという。
イラクでおこってる事は何を意味するのか、またイスラエルはどのように見ているのか、イスラエル国家治安研究所のヨラム・シュバイツァー氏の分析ををまとめると以下の通り。
<ISIS:どのぐらい脅威なのか?> http://www.inss.org.il/index.aspx?id=4538&articleid=7116
・・・ISISは、メディアに大きく取り上げられているが、実際には10000人以下の集団である。今回、彼らがここまで前進してきたのは、イラク政府がシーア派に偏って反発があったことと、マリキ首相の指導力に弱点が合ったことがあげられる。
しかし、もし本当に、ISISがバグダッドに入ったとしても、その時には、隣のイランを筆頭に、トルコとヨルダンが黙っていることはない。またアメリカも介入する事になるだろう。実際には、ISIS自体には、バグダッドを制覇し、その他の地域を治めるほどの力があるとは思えない。
しかし、ISISの本当の脅威は彼ら自身ではなく、今回の侵攻で得ている経済力と、制覇した各地で押収している欧米の進んだ武器(欧米からイラク軍に供与されてきたもの)、そして、中東各地の聖戦主義グループへの影響である。
ISISがそれらのグループに資金や武器を送り込み、中東各地の聖戦主義者らが勢いづいて活発化する可能性がある。サウジアラビアやクウェートはスンニ派ではあるが、こうした過激派の動きに神経をとがらせている。
イスラエルが警戒するのは、シリアの反政府勢力の過激派である。シリアで勢力を伸ばしているスンニ派聖戦主義グループ・アル・ヌスラは、ISISとは同じアルカイダ系である。
ISISが押収したアメリカの対戦車砲などの武器が、すでにシリア入りしたとの情報がある。イスラエルは、現在、諜報活動を活発に行っている。
「イスラエルに実際の影響が及ばないうちに対処する。」これがイスラエルの方針である。