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イスラエル国会がUNRWA活動制限法案を可決決
UNRWA(国連パレスチナ難民救済事業機関)は、ガザ地区、西岸地区、ヨルダン、レバノン、シリアなど広範囲に在住するパレスチナ難民、数百万人の社会的必要や教育に至るまでを支援続けている。
しかし、パレスチナ難民とはいえ、もう難民になってから70年以上、支援を受け続けており、同時者の孫に至るまで、いまだに難民と認められているということである。各地で様々な癒着があっての不思議はないだろう。
特にガザと西岸地区では、パレスチナ自治政府はじめ、ハマスなどテロ組織とも深い癒着している。
イスラエルは、UNRWAのガザ地区本部の真下にハマスの中央データセンターがあったことや、UNRWAのハマス司令センターがあり、UNRWA職員の約10%が、テロ組織関係者であると指摘していた。
また特に、UNRWA職員で、ハマスに関係する100人のリストを、UNRWAに提出し、対処を要請したが、UNRWAはこれに応じていなかった。
そうした中、先週24日、イスラエル軍は、10月7日の首謀者の一人、ハマスのヌクバ部隊司令官ムハンマド・アル・アタウィを暗殺したが、アタウィは、正式なUNRWA職員であり、イスラエルが提出していた100人のリストの中に挙げられていた人物だった。UNRWAもこれを認めた。
UNRWAがこれを認めたことを受けて、イスラエルの国会は、28日、UNRWAのイスラエル国内での活動を禁止する法案を、賛成92、反対10という、圧倒的多数で可決した。
また、ガザ地区と西岸地区については、政府がUNRWAと連絡をとりあうことを禁止することで、そこでのUNRWAの活動を著しく制限する法案を賛成89、反対9で可決した。
具体的にどうなるのかというと、ガザ地区と西岸地区におけるUNRWAの活動は、イスラエル政府と軍の調整があって始めて可能になっているので、それが禁止となると、UNRWAは実質的にその地域で活動が不可能になるということである。
あわてる国際社会とイスラエルの反応
ガザの市民は、戦争勃発から1年を経過してもまだ、悲惨な避難生活を続けている。その上、UNRWAの支援物資が届かないということは、大惨事になるとグテーレス国連議長は、この採択に警告する声明を出した。
UNRWAは、これは、国連憲章への違反であり、国際法におけるイスラエルの義務に違反するものだと警告する声明を出した。
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アメリカは、ガザ地区の人道状況への懸念から、イスラエルにこの法案を考え直すべきだと言っている。
ネタニヤフ首相は、国際的な批判を受けて、法案の発効前90日から発効後も、他の国際団体と協力して、ガザに人道支援物資が届くようにするとの声明を出した。
しかし、UNRWAを違法にしようとする試みは、今に始まったことではない。イスラエルは、前にもUNRWAの活動を阻止しようとしたことがあった。国際社会も支援を一時止めていたのである。
しかし、結局、UNRWAほどパレスチナ社会に浸透している団体はないので、国際社会は、UNRWAへの支援を再開せざるをえなかった。今、ネタニヤフ首相が、このような声明を出したのではあるが、はたして実現できるかどうかはわからない。となると、ガザへの人道支援はどうなるのか。
イスラエル国内でも、ガザの人道支援状況への別の具体的な案が、明確になるまで、政治家だけの判断で、この法案を通すべきでないとの声もあった。しかし、今回は、中道左派とされる野党のガンツ氏ですら、これに賛成票を投じていたとのこと。
イスラエルの孤立がさらに深まる原因になると懸念される。