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イスラエルで活発なスタートアップ。少人数の秀才たちが、世界の問題や課題に注目し、その解決改善を目さして様々な発明・開発を発信。投資する会社や個人を募る。集まった投資により、さらに開発が進み、やがて市場に出るようになれば、世界に貢献できる上、投資会社への収益にもなっていく。最近では普通に使われるようになった「スタートアップ」の最前線にいるのがイスラエルである。
スタートアップの視点では、困難はまさにチャンス。コロナ禍以来、様々な技術開発が進められている。初期に市場に出回ったのは、表面に付着するコロナウイルスを99.9%殺す布で、まずはマスクとして市場に出回った。しかし、コロナに勝利するために必要なのは、ワクチンと治療薬、また感染拡大を早期に発見するためのスピーディな検査法などである。ここにあげた他にも、多数のスタートアップが、これらの分野に取り組んでいる。その中のいくつかは、近く、市場に出回って来ると期待できるものもある。しかし、ここで紹介した意外にも、今後、色々出てくることが期待される。
経口ワクチン
今世界に出回っているワクチンは、ファイザー、アストラゼネカ、モデルナなどだが、これらは、特殊な冷蔵保存が必要で、皮下注射による投与なので、接種には医療従事者が必要になる。イスラエルのオーラメド製薬会社(ハダッサ・ヘブライ大学病院基盤)は、インドの内服薬のように経口接種できるワクチンの開発を進めてきた。
オーラメドのミリアム・キドロン博士によると、すでに豚による動物実験で、投薬後に、皮下注射ワクチンと同レベルの抗体(IgG)を生成させることに成功したという。通常、新型コロナに感染すると、まずIgMグロブリンが生成され、2週間ぐらいたつと、抗体グロブリンのIgGと長期抗体に関係すると見られるIgAが生成され、新型コロナウイルスを撃退する抗体を持つようになる。そのIgGとIgAを、早期に体内に作らせると見られるのが、この経口ワクチンである。
www.timesofisrael.com/israeli-made-oral-covid-vaccine-found-to-generate-antibodies-in-pigs/
この技術は、これまでからオーラメドが研究してきたインスリン(皮下注射のみ)の経口接種の研究を土台として開発されたものである。この経口インスリンは、アメリカのFDAの認可を受け、現在、第3段階(数千人の治験)に入っている。
この原理を使い、作ったのが、経口ワクチンである。動物実験で効果が確認されたことから、6ヶ月以内に、ワクチンの第一フェーズ(数十人規模での人体実験)を開始できるとの見通しとのこと。新型コロナのワクチンは、今はまだ世界的に、2回接種が行われているが、長期的視点でどのぐらい効果が持続するかはまだこれからの研究を待たなけれんばならない。もしかしたら毎年ワクチンをする可能性もある。そうなると、経口ワクチンで簡単に人々に行き渡る経口ワクチンは必須になってくる。
経口ワクチンが成功すれば、今ワクチンの取り合いになっている世界にとってゲームチェンジャーになるとキドロン博士は語っている。
www.jpost.com/health-science/israeli-company-says-oral-covid-19-vaccine-on-its-way-662712
以下は、新型コロナが発生する前の2019年にオーラメドが作成した経口インスリンに関するクリップ。すでに風邪のワクチンにも使え、より幅広い人々へのワクチン接種にも応用できると述べている。
経鼻スプレー(コロナウイルスを99.9%殺す)生産開始
こうした中、イスラエルで開発された薬が、イスラエルの会社サノタイズ社がカナダで開発した吸入薬で、鼻腔に吸入させるだけでコロナを99.9%殺し、その後は粘膜の上について保護することもできる。いわば、手の消毒剤の鼻バージョンということである。
しかし、2日以内に新型コロナウイルスを99.9%無毒化するとの結果から、すでに感染が確認されている場合でも、ウイルスがまだ上気道にあるうちに殺すことができるので、肺にまで至って重症化するのを防げる。早期回復、重症化予防ができるということである。
イスラエルではすでに認可が降りて、生産を開始している。テルアビブで、最初の20万から50万本が、5月までには販売される見通しとのこと。加えてニュージーランドでも販売が決まっている。ロンドンでも治験が始まっている。
www.timesofisrael.com/life-saving-nose-spray-that-kills-99-9-of-viruses-begins-production-in-israel/
重症者97%回復:エキソゾーム吸入による治療
サイトカインストームにまで至ってしまった場合に、吸入という簡単な方法で、肺に薬物を到達させて、治療するという方法が開発された。エキソゾーむという物質を使って、肺の換気を回復させるという新しい方法である。
テルアビブの病院では、サイトカインストームに陥っていた患者30人にこの治療を使い、97%の治癒という結果が出ている。以下のクリップによるとすでにこれで治癒した人の証言もあり、安全性も高いとのことである。
ただし、治療薬として正式に承認されるまでの先行きはまだ見えていない(フェーズ1の段階)
20秒でコロナ判定:EUが空港での使用で承認
昨年からすでにスピーディな検査法については、開発が進められ、ヨーロッパでは空港での使用も予定されていたが、変異株の登場で、延期となっていた。しかし、今月、EUはスペクトラルLIT社の検査方法を承認。空港での使用に向けた準備が再開されることとなった。もし実用に進めば、国際的な移動再開への王手になりうると期待されている。
現在、イスラエルでは、空港に検体採取のブースが並び、大掛かりな装置で時間のかかるPCR検査が行われている。スペクトラルLIT社の手法によれば、手で持ち運びできる装置を使い、20秒でコロナの陰性・陽性の結果が、スマホアプリに届く。
正確性は、無症状の陽性患者を86%キャッチできるほか、PCR検査の結果とは100%合致しているので、精密性は今後上がっていくと思われる。さらにAIを駆使して感染を見つけることも含まれている。さらには、安価であるため、世界各地で広く使われる可能性がある。このシステムは、現在、世界36の病院でも治験が行われているという。
ただし、今のところ、まだ、足元のベングリオン空港での使用は認められていないとのこと。
石のひとりごと
新型コロナに対して、様々な武器が世界に出回っているようだが、日本でもこうした技術も取り入れてみようか。。?という動きはあるのだろうか。しかし、日本人の感覚からすると、こういう人体実験的な開発に抵抗を感じる人も少なくないかもしれない。
しかし、そこは、なんでもやってみるユダヤ人。開発だけでなく、その実験台になることについても、世界への貢献という思いで、買ってでる人もある。しかし新しいことの開発にはリスクがつきものであり、最初に開発してくれた人々には感謝しかないだろう。イスラエルは集団ワクチンという実験台にすでになってくれている。(これについてはイスラエル国内でも論議あり)
しかし、慎重な日本では、対策に終われるばかりで、なかなか前に進んでいないような気もする。こういう新しい技術を取り入れるのも相当な時間がかかるであろうし、法律的にも後手に回ることは避けられそうにない。日本は日本なりの新型コロナからの脱出への道筋が1日も早く見えて来ればと思う。