イスラエルはOECDで最も物価高:正統派ユダヤ教徒優遇の政府に市民の反発高まる 2023.8.29

イスラエルの物価:OECDで最も高い

OECD(Organization for Economic Co-operation and Development 経済協力開発機構・本部パリ)が、27日に発表した、価格水準指数によると、イスラエルが、加盟国の中では、最も物価が高い国ということが明らかになった。

*OECD:日本を含むアメリカ、カナダ、ヨーロッパ諸国、トルコ、韓国など38カ国が加盟。

価格水準指数とは、各国の一般的な物価水準の違いを、OECD諸国の平均値を100としてその尺度を表した数字である。それによると、イスラエルの物価は、OECD平均100に対して138で、加盟国第一位であった。言いかえれば、イスラエルの物価は、OECD諸国平均より38%高いということである。

ちなみに、日本は、92で20位である。今、物価上昇が問題となっているが、日本はOECD平均からみれば、まだ安い国なのである。イスラエルと比べた場合、イスラエルの物価は、日本より46%も高いということになる。

www.timesofisrael.com/israels-cost-of-living-the-highest-among-oecd-countries-in-2022-data-shows/

身近な物の価格で言うと、牛乳が1リットル273円前後、卵は12個入りパックが749円、コカコーラ(1.5リットル)258円
立ち食いに近いテイクアウトのサンドイッチ的な、ファラフェルとドリンクは、30〜40シェケル(1100-1500円)

バス代は一回乗りが250円、ガソリンは1リットル273円 さらに大きな問題は、賃貸の高騰である。Times of Israelによると、こうした生活費の高騰について、国民の多くは、政府の無策が原因と考えているという。

イスラエルでは、今の政権が立ち上がってすぐから、毎週土曜日の大規模な反司法制度改革デモがもう7ヶ月近くも続いているが、物価高による生活苦もまた政府に反発する人々を増やしている形である。

正統派ユダヤ教社会優遇の現強硬右派政権に不満

さらに、今の政権は、世俗派が苦しんでいる中で、ユダヤ教超正統派社会への支援を続々と増やしている。これもまた、世俗派一般社会の人々を怒らせる原因にもなっている。

こうした反発にはあまり耳をかさず、政府はすでに、正統派ユダヤ教イシバ(神学校)への支援金増額や、兵役義務免除、税金優遇に加え、正統派ユダヤ教徒への経済支援優遇(交通費などの減額など)の方針を進めている。

いわば、働いて税金を払う一般人たちが、高い物価高で苦闘する中、働かないで税金を納めない正統派たちが、生活費支援や優遇策を与えられている形なので、世俗派庶民の間で政府への不満が高まっている。

観光ガイドのMさんは、ツアーガイドの合間でも、毎週土曜日の反司法制度改革(反政府)デモにできるかぎり参加していると言っていた。

また、正統派ユダヤ教政党の宗教的な意向により、女性の社会的地位向上にブレーキがかけられ、イスラエルの女性兵士、LGBTQを認めないとする方針が出て来ていることから、毎週土曜日以外にも、多様性を受け入れる世俗派一般人の各分野からのデモも行われるようになっている。

www.timesofisrael.com/bnei-brak-rabbis-ask-locals-to-ignore-planned-womens-rights-march-through-city/

今後どうなる?:9月の司法制度改革案・公聴会が焦点

国民の政府への反感は高まっているといえるが、土曜日安息日明けのデモに参加する人数は、今も続いているとはいえ、テルアビブで10万人と、一時70万人の時もあったことを思えば、こちらも夏休みの感じである。

9月に入ると、最高裁が、政府が出している司法制度改革案に関する公聴会を行うことになっている。予定は以下の通り。

9月7日:司法選考委員会に関する公聴会(ラビン法相が、司法選考委員会を与党主導にする改革案を出しており、これが決まるまでは裁判官の選出を延期している件について)
9月12日:合理性基準に関する公聴会(政府の決めた法案を最高裁が合理的でないと判断して却下することを不可能にする法案)

この前後に社会がどう動いていくのかが、注目される。しかし、イスラエルでは、9月15日から新年祭がはじまり、24-25日はヨム・キプール、29日から10月6日まで仮庵の祭りと再び、例祭シーズンに入っていく。ばたばたと政府の流れに載せられるのか、政府が崩壊することになるのか、9月に入ってからの動きが注目されるところである。

www.timesofisrael.com/september-showdown-israels-branches-of-government-to-face-off-in-three-key-cases/

石堂ゆみ

ジャーナリスト、元イスラエル政府公認記者、イスラエル政府公認ガイド、日本人初のヤド・ヴァシェム公式日本語ガイドとして活動しています。イスラエルと関わって30年。イスラエルのニュースを追いかけて20年。学校・企業・教会などで講演活動もしています。