イスラエルには、超正統派ユダヤ教徒と、アラブ人は徴兵しないという法律がある。これについて1999年に最初の見直しが行われ、2002年からは5年おきに論議、改正がなされることになった。これを「タル法」という。
今年は、その5年目にあたり、来月が見直し期限となっている。
イスラエル世論からは、「国民なら超正統派もアラブ人も同等に兵役につくべき」とタル法改正を求める声が高まっている。これは言い換えれば、ユダヤ教正統派と世俗派の対立といってもよく、イスラエルの今後の姿に影響する大きな分岐点になりうる案件である。
*正統派が兵役を免除されているのは、彼らが現代イスラエルの”祭司”であると考えられているため。
<プレスナー委員会・解散>
この件に関して、ネタニヤフ首相は、改正反対、賛成、双方の意見を持つグループからなる委員会を立ち上げて、議論を行わせた。これを委員長の名をとって「プレスナー委員会」という。委員会は、今週末までに、意見をまとめて首相に提出することになっていた。
前情報によると、委員会は、「正統派ユダヤ教徒神学校学生のうち80%には兵役の義務を課し、もし拒否する場合には処罰を受ける」というタル法改正案をまとめていたとされる。
ところが、プレスナー委員会は、最終的に意見をまとめきることができず、先週から、正統派代表に続いて右派代表も、委員会から脱会してしまった。これでは委員会の意味をなさないとして2日、ネタニヤフ首相は、プレスナー委員会の解散を宣言した。いいかえれば、タル法改正への道筋が頓挫した形である。
<大連立政権が危ない?>
この件について、今の大連立政権を支えるカディマ党のモファズ党首が、「もしタル法の改正が行われないなら、連立を離脱する」とネタニヤフ首相を牽制。それこそが連立に加わった理由だったとモファズ氏は言っている。
もしタル法改正がなされず、先送りされた場合、国民の80%を占める世俗派市民が大規模な反対デモに出る可能性もあるとされ、ネタニヤフ首相の手腕が注目されている。