目次
イスラエル起業家でベンチャーキャピタリストでイスラエルへの投資のプラットフォームであるOur Crowedの社長であるジョナサン・メドベッド氏が、この戦争と経済への影響についてのブリーフィングを行った。目に見える戦闘とは違う世界のような話であった。
イスラエル経済はすでに回復をみせている
ハマスとの戦争で、500億ドルを費やしており、イスラエルの経済は大きな打撃を受けている。財務省によると、財政赤字は、支出の激増で、GDPの2.6%、229億シェケルの財政赤字である。
労働力が徴兵で失われて、産業も鈍化しており、経済成長率は3%と予想されていたが、2.8%に減少している。
しかし、メドベッド氏によると、先月始まったハマスとの戦争で、シェケルの価値は一時かなり下がったが、今は戻りつつあるという。
その背景にあるのは、イスラエルの産業の最大がハイテク企業であるからだと解説する。
イスラエルの労働者の14%は、ハイテクで働いている。GDPの15%はハイテク企業からで、輸出の50%がハイテク関連だという。それは、海外からの莫大な投資がハイテク企業に届いているからである。
昨年度のイスラエルのハイテク企業への投資は、500億ドルで、その80%は海外からの投資であった。
世界の投資家は、今もイスラエルに目を向けており、800社が、イスラエルへのサポートを続けており、グラフにように戦後は特に投資が増えている。
また、イスラエルには、世界トップクラスの大手企業4000社が、イスラエルにオフィスを置いているが、戦争だといって手を引いた会社は一つもないという。
メドベッド氏は、投資がさらに円滑になるようにと、新しいプラットフォーム、Israel Resilience fund(5000万ドル規模)を立ち上げている。ここでは、メドベッド氏側の会社で収益はとらないとのこと。
www.ourcrowd.com/companies/israel-resilience-fund
こうした中、戦争で36万人が徴兵され、ハイテク労働者の10-25%が、徴兵されている。その他の一般企業は8%なので、ハイテク企業はかなりの人材不足ではあるが、なんとか仕事をこなしていとのこと。
最終的にイスラエルのビジネスは強い
世界にとって、ハイテク産業や軍事産業は必要分野なので、最終的には、イスラエルに戻ってくることになるとメドベッド氏は語る。
イスラエルの産業の中心は、ハイテク産業であり、世界第5位の軍事産業国である。戦争が長期戦にならない限り、回復すると見ている。
世界は気候変動と不安定な戦争の時代を迎えているが、イスラエルのハイテクは、気候変動対策に大きく貢献するトップである。また、ドローンや迎撃ミサイルなど、戦争で実戦を積んでいるイスラエルの軍事産業は、この戦争でより有利になる可能性もある。
メドベッド氏は、危機は、チャンスでもあると語る。今は厳しい時代であり、柔軟性の率い小規模な会社は潰れるだろうが、そうでない会社は、成長する。今、よく考えて、投資株を購入するなら、下がっている今が購入どきだと思うと語った。
アブラハム合意の膨大な可能性
2020年に、イスラエルとアブラハム合意を結んだUAE、モロッコ、バーレーンは、それぞれ、一応はパレスチナ人を支持する立場を表明しいる。
しかし、アブラハム合意から、それぞれの国が得た利益は相当なものであるので、これが消え去ることはないとメドベッド氏。
UAEは、イスラエルとの貿易を開始してから、昨年2倍の95億ドルを得た。今後の予想として、イスラエルは100億ドルとの予想をだしていたが、UAEは、なんと、1兆ドルを予想しているとの声もあるという。モロッコの貿易は110%増、バーレーンも24%増であった。
トルコも政治的にはイスラエルに厳しい態度をとっているが、ビジネスにおいて、また観光においてもイスラエル人とトルコ人の市民レベルでの関係は終わってないとのこと。
実際のところ、サウジアラビアは、どっちなのかわからない態度を見せてはいるが、こうした他の中東諸国の様子からも、イスラエルとの国交正常化は求めているはずだとメドベッド氏は語る。
メドベッド氏は、今のハマスとの戦争は、これを止めたい、サウジのライバル、イランの思惑が明らかであるとして、この戦争の名前は、「第一次イラン戦争」にすべきだと思うと語った。
今は非常に厳しいが、イスラエル人は負けない
メドベッド氏は、それでも現状はしっかり見ている人である。戦争が早く終わらない可能性も見据えている。また、今回の10月7日の襲撃は、ホロコーストとまではいわないまでも、イスラエル人の心に大きな傷になっていることも深刻にとらえていた。
10月7日の犠牲者1400人というのを、アメリカでの人口規模(35倍)で考えると、ベトナム戦争で死んだアメリカ人と同じ数が、たった1日で殺されたと同じだという。イスラエル市民すべてが、関わる悲劇である。これは皆の心に大きな傷になっている。ホロコーストと言わないまでも、歴史に残る大きな傷だと語る。
メドベッド氏は、結局のところ、それをどうとらえるかが鍵だと語った。
これからの情勢はまだ楽観できるものではないことも理解する中、今の政府について聞かれると、メドベッド氏の感覚では、動きが遅いという。もう少し先を見据えて、今すぐ動いて対策をとってほしいと語った。
しかし如何せん、イスラエル人は、残念ながら危機にはエキスパートだ。何があっても対処しなければならない。
イスラエルの投資家でテクノロジー最高責任者でもあるエイヤル・ウオルドマン氏(63)は、西岸地区のヘブロンやラマラ、ガザのパレスチナ人のエンジニアを雇用する会社マラノックスを立ち上げている。
ウオルドマン氏は、10月7日、ハマスによって、音楽フェスに参加していた娘を殺されていた。しかし、ウオルドマン氏は、パレスチナ人を雇う会社の方針は変えないといっているという。
www.ynetnews.com/article/rja9piszp
これこそが勝利だとメドベッド氏は語る。イスラエル人とパレスチナ人が共に生きる。それが中東全体の勝利なのだとしめくくった。
石のひとりごと
メドベッド氏の話を聞いて、なにやら元気が出た。彼は決して、根拠なき楽観ではない。全てを見てなお、そこにポジティブを見出している。
これまでからもイスラエルはどうしてか、最終的には立ち上がっている。ホロコーストという大惨事を通ってもまだ元気に生きていて、うらみにとらわれず、世界を先導する(彼ら的には祝福する)ハイテクの国になっている。
ほんとうにあなどってはならない国であると思うとともに、彼らから本当に多くを学べることも思わされる。
今回もかなり大きな打撃をうけてはいるが、彼らが倒れることは絶対にない。ここから主がどう彼らを導いていかれるのか、彼らがどう反応するのか、祈りつつ、見守っていきたい。