イスラエルは、昨年12月、UAE、バーレーン、スーダンに続き、北アフリカのモロッコと国交正常化で合意した。
その後、モロッコからは直行便の運行が始まり、今年8月には、ラピード外相が、首都ラバトに連絡事務所を開設。原油採掘や水問題での協力など、両国の関係は順調に前進している。
こうした中24日、ガンツ国防相が、ラバトを2日間訪問。モロッコのラウディイ防衛相とともに、防衛協定に署名した。
アラブの国と防衛協定を結ぶのは史上初である。また特記すべきは、今回ガンツ国防相とともに、軍服姿のイスラエル軍兵士も同行していたと言う点。内外にも明白にイスラエル軍が、アラブの国に足を踏み入れることは史上初であった。
これにより、両国は軍事面においても情報交換がスムーズになる他、共同訓練や、イスラエルがモロッコに最新鋭の武器を売却することも可能になる。いわば、北アフリカに強力な味方ができたということである。
www.timesofisrael.com/in-morocco-gantz-signs-israels-first-ever-defense-mou-with-an-arab-country/
これは特に、イスラエルに交戦的でイランとの関係も維持している隣国アルジェリアに対して、強力に釘をさした形である。アルジェリアは、西サハラの問題で、モロッコと国交を遮断している。アルジェリアの高官は、ガンツ防衛相のモロッコ訪問について、「アルジェリアへの攻撃だ」と述べた。
www.jpost.com/middle-east/israel-morocco-share-vision-for-regional-peace-stability-gantz-686945
イスラエルにとっては、エジプト、ヨルダンに続いて、周辺地域で、とりあえずは、安心して向き合える国が増えたということで、非常に大きな意味を持つ、歴史的なことであった。
*イスラエルとモロッコの関係:スファラディ・ユダヤ人の故郷
モロッコは、人口3700万人。3分の2がアラブ人で、3分の1はベルベル人。独立は1956年。1961年から国教はイスラム教スンニ派とされ、人口の99%がスンニ派イスラム教徒である。
モロッコには古くからユダヤ人社会が存在していた。紀元前6世紀の第一神殿の破壊の際に、イスラエルから逃れてきたユダヤ人がその最初といわれている。その後第二神殿の破壊の時もモロッコに逃げたユダヤ人がいた。
中世の時代には、スペイン追放などでもモロッコにユダヤ人が亡命している。こうして、モロッコのユダヤ人社会は、歴史もその大きさもイスラム社会では最大となった。このユダヤ人たちが、スファラディと呼ばれている褐色のユダヤ人である。
ユダヤ人たちは、2000年の歴史を通じて、モロッコの一部として、その地で豊かな文化を形成したのであった。モロッコには、中世の時代に建築されたシナゴーグなど重要な文化財も残されている。このように、モロッコで迫害がなかったわけではないが、ユダヤ人はその一部であった。
しかし、1948年にイスラエルが独立すると、当時モロッコにいた25万人から35万人が、イスラエルに移住した。今モロッコにいるユダヤ人は2000人ほどと言われている。その後モロッコは1956年に独立。
アラブの国であったモロッコとイスラエルは、正式な国交はなかったが、両国政府は、交流を続け、国交正常化を模索し続けた。市民レベルでは、貿易だけでなく、イスラエルからはユダヤ人がモロッコへ旅行するなど、往来を自由に続けていたのであった。
この歴史を経て、今、イスラエルとモロッコの国交が正常化され、軍事までも協力することができるようになったということである。