イスラエルとハマスの交渉:フィラデルフィ回廊から2段階の時点で撤退合意か 2024.9.4

A view of southern Gaza’s Rafah from the Philadelphi Corridor on the border with Egypt, July 16, 2024. (Emanuel Fabian/Times of Israel)

フィラデルフィ回廊からの第二段階で撤退に合意?

ネタニヤフ首相は、交渉で、いかなる合意になっても、フィラデルフィ回廊からイスラエル軍が撤退することはないと、国民に理解を求めた。

しかし、それは、交渉に応じないということであり、今人質になっている101人を取り戻すことを後回しにするとも言えるわけである。

国内では、3日間連続で、各地でのデモは続いている。リクード党本部の前にもデモ隊がいる。

こうした中、イスラエルが、ハマスとの交渉で第一段階ではなく、第二段階に入ったところで、フィラデルフィ回廊からの撤退に応じると言っているとの情報が出ている。

これが交渉というものだろうか。どこかで合意できないかと手探りなのだろう。しかし、第一段階が終わって第二段階に進むかどうかもまだ全然不確かな中、この約束に意味があるのかとも思わされる。

www.timesofisrael.com/us-israel-agreed-to-withdraw-from-parts-of-philadelphi-as-part-of-hostage-deal/

いずれにしても、ネタニヤフ首相の言っていたこととは違うので、実際のところはどうなのかは、これからの動きを見なければならない。

国内で分かれる考え方

イスラエル国内では、人質の交渉に関して意見が割れている。

ネタニヤフ首相は、人質の解放を図りながらも、将来の危機を見据えて、フィラデルフィ回廊の支配を強調している。

確かに、人質を全部返せば、それこそハマスの最後になってしまうし、相手はサタニックであるので、たとえここで譲歩しても、本当に人質が全部帰ってくるとは考えらないだろう。よほど知恵をもって対処しなければならない。

ネタニヤフ政権の閣僚たちの中にいる右派や極右政治家たちは、ネタニヤフ首相の政策に合意するだけでなく、ハマスとの交渉そのものを破棄するべきだと言っている。

これに対し、野党で国民統一党のガンツ氏は、今いる国民の命以上に大事なものがあるだろうかと訴え、今は、交渉に応じて人質を取り戻すべきだと考えている。

また、フィラデルフィ回廊から一旦、撤退しても、後に戻ることはできるとの考えを表明している。

ガンツ氏は元イスラエル軍参謀総長である。同じく元参謀総長で、息子がハマスとの戦いで戦死したエイセンコット氏も、ガンツ氏と同じ考えであることを表明している。

www.timesofisrael.com/rebutting-netanyahu-gantz-says-israels-priority-must-be-hostages-not-philadelphi/

しかし、フィラデルフィ回廊から今撤退しても将来戻れるかどうか、それはだれにもわからない。右派政治家たちは、ガンツ氏が、ハマスを支援していると非難している。

今現在の国民の命を救うことか、イスラエルそのものの将来の存在を守ることか、どちらが大事かという非常に難しいところに、今、ネタニヤフ首相と、イスラエルは立たされている。

この混乱に至った理由

Ynetの記者マアヤン・ホフマン氏は、ガザの問題がここまで難しくなった背景には、イスラエルとアメリカが、当初、この問題をハマスとイスラエルの問題としてだけ見ていた点を指摘する。

この問題はどう発展するかで、ヒズボラ、西岸地区、そしてイランの出方にも関わってくるような非常に重要な問題だったと指摘。それをイスラエルとアメリカが早期に認識して、早く対処すべきだったと言っている。

また、イスラエルとアメリカの間では、特にフィラデルフィ回廊問題で大きく対立した時期があった。バイデン大統領がフィラデルフィ回廊への突入を阻止しようと、イスラエルへの武器搬入を遅らせたのである。

この対立が、ハマスのみならず、ヒズボラとイランとっても時間を与えることになってしまったと考えられる。この間に、人質を救出することができたかもしれない。

また、10月7日から1年近くになる今、イスラエル国内では意見が分かれるだけでなく、政府と軍が意見が違うという事態になっており、ハマスやその関連組織に弱みを見せる結果になっている。

いろいろな失敗が組み合わさった結果、解決がみえないほどの事態になったのである。

www.ynetnews.com/article/hkys8umhc

今どう祈れば良いのだろうか。ダニエルの祈りを思い出す。

私の神よ。耳を傾けて聞いてください。目を開いて私たちの荒れすさんださまと、あなたの御名がつけられている町をご覧ください。私たちが御前に伏して願いをささげるのは、私たちの正しい行いによるのではなく、あなたの大いなるあわれみによるのです。

主よ。聞いてください。主よ。お赦しください。主よ。心に留めて行ってください。私の神よ。あなたご自身のために遅らせないでください。あなたの町と民とには、あなたの名がつけられているからです。(ダニエル9:18-19)

石堂ゆみ

ジャーナリスト、元イスラエル政府公認記者、イスラエル政府公認ガイド、日本人初のヤド・ヴァシェム公式日本語ガイドとして活動しています。イスラエルと関わって30年。イスラエルのニュースを追いかけて20年。学校・企業・教会などで講演活動もしています。