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ガザでWCK(世界中央キッチン)スタッフ7人死亡の詳細
NGOの国際的な食糧支援団体、WCK(世界中央キッチン)のスタッフが、活動中に、イスラエル軍に攻撃されて、スタッフ7人が死亡した件。被害者と状況が少し明らかになってきた。
WCKは、キプロスから海路で搬送された食料を、ガザのデイル・アル・バラの保管庫を経由して、避難民たちに届ける作業を始めようとしていた。
2日、配送にむかう3台の車両が保管庫を出たところで、ドローンに空爆され、大破し、スタッフ7人が死亡した。以下は、イスラエルのテレビ局が、当日、事件がどのように発生したかを説明している。
犠牲になった人々は、WCKスタッフの以下の7人である。
チームリーダーだったオーストラリア人のズミ・フランコムさん(43)、
ポーランド人のダミアン・ソボルさん(35)、
アメリカとカナダ国籍のヤコブ・フリッキンガーさん
(33)、イギリス人のジョン・チャプマンさん(57)、
ジム・ヘンダーソンさん(33)、ジェームズ・カービーさん(47)、パレスチナ人で運転手のイッサム・アヤド・アブタハさん(25)
www.bbc.com/news/world-middle-east-68711282
事件後、ネタニヤフ首相は、「戦争中のことだった。詳細を調べるとともに、犠牲者の政府とも連絡をとっている。このようなことが二度と起こらないよう、最善を尽くす。」とコメントを発表。イスラエルのハガリ報道官も、すぐに深い遺憾を表明した。
www.jpost.com/israel-hamas-war/article-794958
その後、ハレヴィ・イスラエル軍参謀総長が公式に、イスラエルの誤爆であったことを認め、謝罪する声明を発表した。
ハレヴィ参謀総長は、「戦争中の非常に複雑な状況の中、夜でもあったために、攻撃対象を誤った。起こるはずのないことだった」と語っている。また、確かなことは、「イスラエル軍がWCKを狙って攻撃したのではないこと、イスラエルが戦っているのは、ガザの民間人ではないこと」も強調した。
ハレヴィ参謀総長は、WCKがイスラエルを含め、全世界の難しい状況の中で、重要な働きをしている団体であると高く評価し、イスラエル軍はWCKと共に働いていたことに感謝を語っている。
“I want to be very clear—the strike was not carried out with the intention of harming WCK aid workers. It was a mistake that followed a misidentification—at night during a war in very complex conditions. It shouldn’t have happened.”
Watch the full statement by IDF Chief of the… pic.twitter.com/JnvoJOTVg9
— Israel Defense Forces (@IDF) April 2, 2024
イスラエルのヘルツォグ大統領も深い悲しみと真摯な謝罪を表明した。
www.france24.com/en/middle-east/20240402
説明責任求める被害者祖国の代表たち:アメリカもイスラエルに激怒
攻撃は、リスクはあるとしながらも、一応、イスラエルが人道回廊と指定している道路上で発生していた。どのような経路で、攻撃が行われたのかは、まだ明らかにはなっていないが、戦時下でもあり、上からの正式な指示を待たずに、現場の判断で攻撃がなされていた可能性もあるという。
国民3人を失ったイギリスのキャメロン外相は、「全く容認できることではない。何が起こったのかを説明するべきだ」とカッツ外相に伝えていた。オーストラリアとポーランドも同様の声明を出している。
同盟国アメリカのバイデン大統領は、WCK代表に追悼の意を表するとともに、イスラエルの誤爆に憤慨していると強いことばでイスラエルを非難した。バイデン大統領は、イスラエルはただちに詳細を検証し、世界にと説明責任があると語った。
さらには、「支援団体のスタッフが、イスラエルの攻撃で死亡するのは、これが初めてではない。これまでに200人以上の支援従事者が、ガザで死亡している。こんなことはあってはならないことだ。だから、ガザの人々に、支援物資が届いていないのだ。」とまで語った。
バイデン大統領は、アメリカはイスラエルに対し、ガザでの軍事作戦と人道的な活動は別にするよう言ってきたが、イスラエルは、それを十分にしてこなかったと厳しく非難した。
WCKガザでの活動停止:停戦への圧力が強化される可能性も
イスラエルは、UNRWA(国連パレスチナ難民救済事業機関)が、ハマスの支配下にあるとして、ガザの中で活動することを認めていない。WFP(国連世界食料計画)など、別の国連組織も戦時下での活動は難しい。WCKはイスラエルにとってもありがたい存在だった。
しかし、スタッフ7人が死亡したことを受けて、WCKは活動を停止すると発表。ガザ沖に向かっていた食料を乗せた船は、キプロスへ戻り始めているという。
主な出資国であったUAEも、さらなる安全保障の提示を待つとして、ガザへの食糧搬送を一時停止すると発表した。
これからどうするかだが、WCKの活動再開を期待するのか。ハレヴィ参謀総長は、独立した機関による調査を行い、WCKとも連絡を取ると語っている。また新しい人道支援センターを設立。人道支援活動を行なっている人々の保護を強化すると表明した。
しかし、戦争開始から6ヶ月になり、国際社会からは餓死者が出るとの懸念が出ている中で、食料配布計画が一時的にでも停止することは、イスラエルの立場を急速に悪化させている。今後、国際社会から即時停戦への圧力が、さらに高まることは避けられないだろう。
石のひとりごと
まだ全貌の解明が明らかでないのに、誤爆を正式に認め、謝罪するイスラエル。こんな国が他にあるだろうか。国としてはなかなかできにくいことではないだろうか。しかし、悪い点は早く認めて、そのことへの悔い改めを明らかにする。その後の流れにはよい結果につながるよう、期待したい。
ガザでは、今日も戦闘が続けられている。イスラエル軍が、民間人をできるだけ犠牲にすることなく、戦死者を出すことなく、すみやかにハマス、特に指導者であるシンワルと人質に到達すること、ハマスメンバーの目が開かれて、投降してくるようにと祈る。