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イギリスのスターマー首相が9月にパレスチナ国家承認可能性を表明
先週、フランスのマクロン大統領が、9月にパレスチナ国家承認すると発表。続いて7月29日(火)、イギリスのスターマー首相が、同じく9月にパレスチナ国家を承認する可能性を発表した。
イギリスはまだ決定したわけではないが、もし、イスラエルがガザ地区における人道危機を終わらせる措置を取らず、また、西岸地区を併合しないことを約束して、和平プロセスに進まない場合、イギリスは、9月にパレスチナ国家を承認すると発表した。
しかし、イスラエルの出方によっては延期もありうるとしている。スターマー首相は、パレスチナ国家を認めるということは、ハマスを承認するということではないと強調。「イギリスは、10月7日の残虐行為を行ったハマスはテロ組織であり、イスラエルには、自衛権があると認めている。
ハマスは人質全員を直ちに解放し、武装解除しなければならない。またパレスチナ国家になっても、ハマスはガザの治世に関与してはならない」とも語っている。
イスラエルを支持するかのような条件を出してはいるが、イギリスは、先週までパレスチナ国家承認について、否定的な動きを見せていたので、この発表は、大きな方向転換があったことを示している。

その背景には、先週、イギリスを訪問したトランプ大統領が、ガザの人道危機への危機感を表明するとともに、パレスチナ国家について、イギリスがアメリカと違う方針をとっても構わないと発言したこと。
また、9月にパレスチナ国家を認めると表明した、フランスのマクロン大統領の説得があったとの報告もある。
現時点でルクセンブルグが、フランスに続く可能性を表明している。今後もフランスとイギリスに続く国が出てくるのではないかと注目されている。
なおフランスのパレスチナ国家承認表明について、歓迎を表明したのは、まずハマスであった。
パレスチナ国家承認について国連閣僚級会議:フランスとサウジアラビアが主催

パレスチナ国家承認をマクロン大統領が表明したのが、7月25日、スターマー首相の表明は29日である。
その間の、7月28日(月)、国連では、閣僚たち数十人とグテーレス事務局長が、パレスチナ国家承認についての会議を、ニューヨークの国連本部で行っていた。
国連は、基本的にパレスチナ人の国を承認し、イスラエルと二国家共存を支持する立場である。
しかし、近年、ガザでの戦争と、西岸地区では、強硬右派ユダヤ人入植者たちが、パレスチナ人への攻撃を行って、パレスチナ人たちを移動させる動きが続いている。
パレスチナ人の居住地が事実上、狭くなっていることから、パレスチナ国家を早く承認しなければならないという動きになっていた。パレスチナ人に国がないから、中東での争いが終わらないと考えているのである。
これを進めるために、国連総会では、閣僚級会議を開催することで合意していた。開催は、6月の予定だったが、イスラエルとアメリカのイラン攻撃があったため、7月に延期になり、開催された。

会議では、フランスのバロット外相は、イスラエルは、ガザ市民の総移住計画以外に、ガザ戦争後の具体的なビジョンを示していない。
イスラエルは、国際社会がパレスチナ自治政府によるガザの管理という案も受け入れていない」と指摘
「ガザの戦後の明確なビジョンがないままで、恒久的な停戦が実現すると考えるのは幻覚でしかない。国際社会のコンセンサスが、パレスチナ国家承認で盛り上がっている今、行動に移さなければならない」と述べた。
バロット外相は、イスラエルがパレスチナ自治政府に、制裁として科している20億ユーロを解除すること、西岸地区の入植活動を停止すること、ガザでの“軍事化された”GHF(アメリカの人道団体)とイスラエルによる食糧配布システムを停止することを挙げた。
www.timesofisrael.com/dozens-of-countries-attend-un-confab-on-two-states-boycotted-by-us-and-israel/
この3日間の会議では、アラブ22カ国が、パレスチナ国家承認にあたり、初めて、ハマスは武装解除するべきだと表明したことが注目されていた。
イスラエルの反応:テロ組織との融和政策に警告
イスラエルとアメリカは、この会議をボイコットしていた。
イスラエルのダノン国連代表は、この会議は解決ではなく、幻想を深めただけだと語った。アメリカのトランプ政権は、外交的に解決を目指している最中という最悪のタイミングで、生産性がない会議だったと批判した。
イスラエル外務省は、「パレスチナ国家承認は、ハマスへの奨励となり、今ガザについて行われている人質解放と停戦にむけた交渉を妨害することになる」と、イギリスの方針を直ちに否定する声明を出した。

ネタニヤフ首相は、「イスラエルとの国境に聖戦主義者の国が登場することになれば、それは、明日にもイギリスの脅威になるだろう。
聖戦主義者、テロリストとの宥和政策は必ず失敗に終わる。イギリスもそれを経験することになる」と表明した。
ネタニヤフ首相は、29日(火)ハマスは、人質停戦協議において、頑固な態度を崩さず、合意を妨げていると表明。
ではこれからどうするかだが、Times of Israelは、ガザ地区の部分的な併合も対策の一つとして挙がっていることを確認したと伝えている。
これについては、宗教シオニスト党のスモトリッチ経済相が、今こそ、ガザにユダヤ人居住地を再興する時だと強く推している件である。
しかし、これを実現するためには、国会で80人以上の賛成と、国民投票が必要になるとのことで、実現は難しいと見られている。
イスラエル国内からは外交失敗を指摘・非難する声も
国際社会全体、西側諸国の間からも、パレスチナ国家承認の流れになっていることについて、イスラエル国内からは、政府への批判が出ている。
10月7日のハマスの侵攻を許し、その後、ガザでの戦争には今も終わりが見えないこと。ガザでは支援物資政策で失敗したことで、国際社会の批判を招き、反ユダヤ主義、反イスラエル主義暴力がうなぎ登りで、犠牲者も出ている。
これはずべて、今の政府のガザ政策、外交政策の失敗の結果だと批判しているのである。
www.ynetnews.com/article/hy33sxiwle#autoplay
石のひとりごと
ハマスの現状を知らない、またはその恐ろしさを直接体験したことがない国々には、おそらくフランスや国連が主張することが正しいと見えるかもしれない。
しかし、ガザで起こっていることは、イスラエルを取り締まることで終わることではない。すべての原因はハマスである。イスラエルではなく、ハマスの手を縛ること、人質を全員解放することで、ガザでの戦闘は直ちに終わり、人道危機も終わる。世界は全くその反対をしようとしている。
イスラエルの存在を認めない、テロ組織を国として認め、イスラエルの隣で平和に暮らせると考えることほど、恐るべき無知はない。
しかも、今交渉が頓挫しているこのタイミングは最悪中の最悪。ハマスはますます自信を持って無理な要求を突き付けてくるだろう。それに負けるようなイスラエルではないので、ガザ合併といったさらなる紛争の深みに踏み込むことになるのである。そうなると、海外のユダヤ人たちへの攻撃は今後、さらに激しくなっていくだろう。
ハマスは背後に悪霊的なものを感じるほどに恐ろしい組織である。以前、実際にイスラエルの刑務所にいるハマスたちの目を見て、それを直感させられたことがある。
世界はこれからどうなっていくのか。詩篇55からは、まさにイスラエルの今を思って読むとリアルに感じた。
指揮者のために。弦楽器に合わせて。ダビデのマスキール
1 神よ。私の祈りを耳に入れ、私の切なる願いから、身を隠さないでください。2 私に御心を留め、私に答えてください。私は苦しんで、心にうめき、泣きわめいています。
3 それは敵の叫びと、悪者の迫害のためです。彼らは私にわざわいを投げかけ、激しい怒りをもって私に恨みをいだいています。4 私の心は、うちにもだえ、死の恐怖が、私を襲っています。5 恐れとおののきが私に臨み、戦慄が私を包みました。
6 そこで私は言いました。「ああ、私に鳩のように翼があったなら。そうしたら、飛び去って、休むものを。7 ああ、私は遠くの方へのがれ去り、荒野の中に宿りたい。セラ
8 あらしとはやてを避けて、私ののがれ場に急ぎたい。」9 主よ。どうか、彼らのことばを混乱させ、分裂させてください。私はこの町の中に暴虐と争いを見ています。
10 彼らは昼も夜も、町の城壁の上を歩き回り、町の真ん中には、罪悪と害毒があります。11 破滅は町の真ん中にあり、虐待と詐欺とは、その市場から離れません。
12 まことに、私をそしる者が敵ではありません。それなら私は忍べたでしょう。私に向かって高ぶる者が私を憎む者ではありません。それなら私は、彼から身を隠したでしょう。
13 そうではなくて、おまえが。私の同輩、私の友、私の親友のおまえが。14 私たちは、いっしょに仲良く語り合い、神の家に群れといっしょに歩いて行ったのに。15 死が、彼らをつかめばよい。彼らが生きたまま、よみに下るがよい。悪が、彼らの住まいの中、彼らのただ中にあるから。
16 私が、神に呼ばわると、主は私を救ってくださる。17 夕、朝、真昼、私は嘆き、うめく。すると、主は私の声を聞いてくださる。
18 主は、私のたましいを、敵の挑戦から、平和のうちに贖い出してくださる。私と争う者が多いから。19 神は聞き、彼らを悩まされる。昔から王座に着いている者をも。セラ 彼らは改めず、彼らは神を恐れない。
20 彼は、自分の親しい者にまで手を伸ばし、自分の誓約を破った。21 彼の口は、バタよりもなめらかだが、その心には、戦いがある。彼のことばは、油よりも柔らかいが、それは抜き身の次ぐ剣である。
22 あなたの重荷を主にゆだねよ。主は、あなたのことを心配してくださる。主は決して、正しい者がゆるがされるようにはなさらない。
23 しかし、神よ。あなたは彼らを、滅びの穴に落とされましょう。血を流す者と欺く者どもは、おのれの日数の半ばも生きながらえないでしょう。けれども、私は、あなたに拠り頼みます。 (詩篇55)
