アラブ人殺人連日でイスラム教司祭も犠牲に:警備不十分訴えアラブ人5日(火)全国ストへ 2023.9.4

殺されたイスラム教イマム(司祭)のシーカー・サミ・アベッド・アル・ラティフさん(60)

イスラム教イマムも犠牲に

アラブ人社会の中でのアラブ人同士の殺人事件が、恐ろしいスピードで続いている。今年に入ってから殺害されたアラブ人は、166人。犠牲者の数は、歴代最大で、昨年の同時期の2倍位以上である。

最近のケースでは、8月31日、北部で殺されたヌル・リヤーンさん(40)は、これまでからもDVで問題となっている中、2人の自分の息子(18歳、20歳)を含む4人の男に射殺された。4人は逮捕された。

www.timesofisrael.com/police-arrest-two-sons-of-woman-shot-dead-in-haifa-apartment/

8月31日には、クファル・カナ(キリスト教では、イエスが水を葡萄酒に変えたことで有名)では、別々の事件で、2人(13歳、33歳)が射殺され、その2日後の9月2日、イスラム教イマム(司祭)のシーカー・サミ・アベッド・アル・ラティフさん(60)が射殺された。

アル・ラティフさんは、町の紛争を解決したとして知られていたという。

www.timesofisrael.com/imam-shot-and-killed-in-kafr-qara-marking-166th-death-in-arab-community-this-year/

アラブ系ビジネスが4日全国ストへ:政府に警備不足訴え

イマムのアル・ラティフさんの葬儀は、クファル・カナで3日、数百人が参列して行われた。この時、政府の無関心と、警察の不備を訴え、国道65号線を封鎖する形で、祈りが捧げられた。しかし、まもなく解散し、大きな問題にはならなかった。

この時、アラブ人社会の指導者たちは、5日(火)、地方自治体、ビジネス、教育機関も一部午前中を除いて、ストに入ると発表した。

www.timesofisrael.com/arab-towns-businesses-plan-strike-tuesday-in-call-for-action-on-violent-crime-wave/

石のひとりごと

今年に入ってからだけで、166人もアラブ人が殺された。犯罪組織の急成長と、武器の拡散が原因とされる。そうなったのは、イスラエルの警察が、アラブ人同士の犯罪への関心や、解決への努力が不足していたからだとアラブ人たちは訴えている。

実際、ユダヤ人地域で、これほど連続する犯罪殺人が続いたとすれば、ここまでの数の命が失われるまで、放置することは絶対にないということは、想像に難くない。そこに人種差別がないとは言い消えれないだろう。

しかし、いかんせん、これが今の現状である。とするなら、「イスラエルはユダヤ人の国」と主張する右派政権にとっては、エリトリア人暴動問題と同様、やっぱり、アラブ人たちには出て行ってもらった方がいいという、口にはしないまでも、そういう考えにつながっていく様相であるといえなくもない。

まさか、政府がこれらを演出しているとは言わないが、建国75年の今、このタイミング的に、時代とともに、イスラエルの変化の時期にあるのか、何か考えさせられるところである

石堂ゆみ

ジャーナリスト、元イスラエル政府公認記者、イスラエル政府公認ガイド、日本人初のヤド・ヴァシェム公式日本語ガイドとして活動しています。イスラエルと関わって30年。イスラエルのニュースを追いかけて20年。学校・企業・教会などで講演活動もしています。