アラブ人クリスチャンにイスラエル軍への道 2014.4.24

昨年、ナザレのギリシャ正教司祭のガブリエル・ナダフ神父が、イスラエルで生まれたクリスチャンはイスラエルに従軍できるようにしてもらいたいと訴えて、「イスラエル人クリスチャン従軍フォーラム」を立ち上げ、話題になっていた。

実際には、アラブ人クリスチャンで、従軍する若者はすでにいるのだが、クリスチャンとして正式に認められての従軍ではない。イスラム教徒のアラブ人からの非難や暴力を恐れて、志願するクリスチャンは、まだまだ数十人という少数である。

しかし、今週、イスラエル軍は、アラブ人クリスチャンで、イスラエル軍に志願して従軍する者は受け入れるという方針を発表した。今後、アラブ人クリスチャンでイスラエル軍に従軍する人が年に1800人規模で増えて行くと、フォーラムは推測している。

<私たちはアラブ人ではない>

昨日、ナダフ神父と、フォーラムのスポークスマンであるシャディ・カロール氏、実際にイスラエル軍に従軍したアラブ人クリスチャン2人が記者会見を行った。

ナダフ神父は、クリスチャンの従軍推進の意思を表明してから、イスラムのアラブ人から命を狙われるなどして、イスラエルの警察の警護を必要とするようになっている。記者会見にも護衛がついていた。

ナダフ神父は、ヘブル語で「聖書はユダヤ人の聖書が土台になっており、キリスト教とはつながっている」との認識を、「イェシュア・ハマシア」という名称を使いながら強調した。

またナダブ神父は、「シリアや、イラク、エジプト、中東ではどの国でもクリスチャンへの保護はまったくない。その点、イスラエルでは、クリスチャンはどの国よりも保護されている。

イスラエルで生まれ育ち、この国の保護を受けているのだから、私たちが国のために奉仕したいという気持ちは当然だ。それのどこがおかしいのか教えてもらいたい。」と締めくくった。

シャディ・カロール氏は、「イスラエル・アラブといって、全部アラブ人にひとくくりにするのはやめてもらいたい。私たちは、昔からこの地に住んでいる、アラム語を話すクリスチャンで、アラブ人ではない。アラブ人は、元々アラビア半島にいただけだったのに、歴史の中で、中東全体にまで拡大し、私たちのアイデンティティを奪ってしまった。

 この(アラブ人という)誤ったレッテルにより、これまでイスラエル社会に参画することができなかった。もう十分だ。私たちはイスラエル社会に参画したい。そのためにはイスラエル軍に貢献することが不可欠だと考えている。」と訴えた。

シャディさん自身は、イスラエル軍に従軍し、アメリカへも留学でき、結果、外務省試験では、ユダヤ人受験者と一緒に受験して、自分だけが合格したというこれまでの歩みを語った。「イスラエル軍に従軍することで、社会の戸が大きく開く。確かに少数派への差別はあるが、パーフェクトな国はない。イスラエルは、他に比べたら、民主主義の国。アパルトヘイト(民族主義)の国では断じてない。」と訴えた。

イスラエル軍では戦闘部隊に所属していたという女性は、「私はクリスチャンでギリシャ正教の信徒。イスラエル人でシオニストです。」と何度も繰り返していた。家族も同じ考えだという。

実際にはナダブ神父たちのような考えのクリスチャンはまだまだ少数派だ。しかし、社会福祉を受けながら、従軍をがんとして拒否する正統派ユダヤ教徒たちの横で、クリスチャンたちがイスラエルの保護に感謝し、国に奉仕したいと表明する姿は、キリスト者としてすばらしい証のように思えた。

記者会見に来ていたユダヤ人に聞くと、「国の保護を受けているのだから、従軍するのはごく自然な事だし、そうするべきだと思う。いいんじゃないですか。」と言っていた。

石堂ゆみ

ジャーナリスト、元イスラエル政府公認記者、イスラエル政府公認ガイド、日本人初のヤド・ヴァシェム公式日本語ガイドとして活動しています。イスラエルと関わって30年。イスラエルのニュースを追いかけて20年。学校・企業・教会などで講演活動もしています。

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