12月6日、トランプ大統領が、エルサレムはイスラエルの首都と宣言して以来、アメリカとイスラエルが非難の的となり、国連安保理(19日)、国連総会(21日)、双方で、アメリカはエルサレムに関する宣言を撤回すべきとの採択がなされた。
ところがその4日後の25日、南米のグアテマラが、アメリカに続いて大使館をエルサレムへ移動する準備を始めたと正式表明。
続いて、イスラエルのネタニヤフ首相が、CNNのインタビューの中で、イスラエルは同様に複数の国から、大使館の移転に関する打診を受けていると語ったが、夜になり、イスラエルのホットベリー外相が、大使館移転を検討している国が10カ国以上にのぼっていることを明らかにした。これまでの経過は以下のとおり。
<反米・反イスラエルの国連決議案採択>
12月19日、国連安全保障理事会(15カ国)は、エジプトの要請により、トランプ大統領のエルサレムはイスラエルの首都と発言したことについて、発言を撤回するべきと考えるかどうかの採択を行った。
結果、日本を含むアメリカ以外の14カ国全員が賛成票を投じた。アメリカが拒否権を発動することはわかっていたことなので、これは、安保理とその加盟国の意思をアメリカとイスラエルにつきつける意図で行われたようなものである。この安保理会議は日本が議長であった。
続いて、21日には、緊急の国連総会(193カ国)が開かれ、安保理と同様の採択を行った。結果は、128カ国(66.3%)が賛成。反対はアメリカを含む9カ国。棄権は、35であった。
パレスチナ自治政府は、この結果は、パレスチナの勝利だと表明した。しかし、イスラエルは、実際には、イスラエルの国際社会での立場は改善してきたとみている。
www.ynetnews.com/articles/0,7340,L-5060274,00.html
賛成票が128カ国(66.3%)というのは、厳しい結果ではあるが、2012年11月の国連総会で、反イスラエル票を投じた国は、138カ国(71.5%)であった。実際には、国際社会でのイスラエルの立場は改善傾向にあるとの見方もある。
イスラエルは、こうした国連総会決議の時に、少しでも反イスラエルの票を減らすため、南アメリカや、アフリカ諸国などで、支援活動を展開してきた。その結果なのかどうか、イスラエルから支援を受けている南アメリカ諸国、アフリカ諸国は、今回、反対票を投じるか、棄権に回っていた。
ネタニヤフ首相は、今後、反イスラエル票を投じる国はどんどん減っていき、14年後までには、過半数を割るだろうとの見通しを語っている。国名は明らかにしなかったが、大使館の移動について、水面下でイスラエルにアプローチしている国がいくつかあるとネタニヤフ首相は語っている。(CNNインタビュー)
<グアテマラがエルサレムへの大使館移動を表明>
国連決議から4日目の25日、国連決議には反対票を投じていた9カ国の一つグアテマラが、アメリカに続いて、大使館をテルアビブからエルサレムに移転する準備を指示したと発表した。
グアテマラのモラレス大統領は、25日、フェイスブックへの投稿で、グアテマラは、イスラエルが誕生して以来、よい関係を続けてきたとし説明。「ネタニヤフ首相と話し、大使館をエルサレムへ移すことにして、準備を指示した」と発表した。
国連総会での採択に先立ち、トランプ大統領は、怒りを込めて、「(国際社会)はアメリカから何十億ドルもとりながら、アメリカに敵対する採択を行うという。どの国が賛成するかみようではないか。我々には節約になるだろう。」と、賛成する国への支援は差し止める可能性を示唆するかのような意思表示をした。
www.timesofisrael.com/trump-threatens-to-slash-aid-to-countries-backing-un-jerusalem-vote/
これが原因かどうかは不明だが、グアテマラは、アメリカからの多大な支援を受けている国の一つである。
<反イスラエル票を投じた直後:河野太郎外務大臣がイスラエル訪問>
国連での決議で賛成票を投じた日本。日本のメディアによると、日本が棄権しなかったのは、賛成票でも棄権票でもアメリカの心証を壊すことに変わりはないと判断し、賛成票を投じたのだという。
背景はどうあれ、日本は、国連総会で、エルサレムがイスラエルの首都であることは認めないという決議案に賛成票を投じ、イスラエルの心証を大きく傷つけたことになる。
にもかかわらず、国連総会のわずか3日後の25日から、全く何もなかったかのように、日本の河野外務大臣が、イスラエルを公式訪問し、ネタニヤフ首相、リブリン大統領と会談。ホロコースト記念館も訪問するなど、イスラエルとの友好関係をアピールした。国連総会後のイスラエルへの公式訪問は、日本が初めてである。
日本は、ここ数年、サイバー技術関連などで、イスラエルへの投資と協力関係の強化へのりだしている。河野外相によると、日本からイスラエルへの投資は、この3年で20倍になっているという。(以前が0に近かったということ)
近く日本からイスラエルへの直行便を実現したいとか、2019年には両国の国交65周年には、天皇がイスラエルを訪問するとかの話にもなっているようである。
単に無神経なのか、イスラエルにとってのエルサレムの重要性を十分理解していないのか、いわば、日本らしく、「立場上反対できなかった」と、苦しいフォローしているのか・・・。ネタニヤフ首相も、あえて、国連でのことは話題にあげず、両国の経済文化交流だけを話し合ったという。しかし、リブリン大統領は、「東京が日本の唯一の首都であるように、エルサレムは、我々の首都です。」と河野外相に伝えたという。
日本のメディアによると、河野外相は、改めて、エルサレムをイスラエルの首都とすることに同調できないと伝えるとみられていたが、イスラエルのメディアによると、その話はなかったようである。
河野外相はこの後、パレスチナ自治政府も訪問し、ヨルダン、オマーン、トルコを訪問する予定。
mainichi.jp/articles/20171226/k00/00m/010/116000c (毎日)
www.jpost.com/Israel-News/Japans-foreign-minister-visits-days-after-Tokyos-anti-Israel-UN-vote-520032(エルサレムポスト)
<トランプ大統領:国連への拠出2億8500万ドル削減へ>
アメリカは、国連が、多額の拠出金を受けているにもかかわらず、アメリカがエルサレムを首都と認めることについて、撤回すべきであるとアメリカに反対したことについて、激怒している。
国連総会での決議から、3日後の24日、アメリカのヘイリー国連代表は、国連決議との関連は述べなかったが、「国連の予算の使い方に問題がある。これ以上容認できない。」として、アメリカの国連への来年度(2018-2019)拠出金から2億8500万ドルを削減すると発表した。(国連予算のアメリカの拠出金が占める割合は22%(33億ドル))
www.ynetnews.com/articles/0,7340,L-5061535,00.html
トランプ大統領は、世界最強の国の大統領としての上品さなどには、まったく興味のない、実利本位のビジネスマンである。「アメリカから金や支援をもらっているくせに、アメリカを孤立させるとはどういうことだ。もう金を出すいわれはない。」というわけである。
政治以外の世界では、いかにももっともな話かもしれないが、これで最終的に困るのは、戦争で医療も食料もなく死んでいくシリアやイエメンの難民であり、正しく管理されなくなる世界遺産である・・・と懸念されるとこころでもある。
<イスラエルはユネスコ脱退へ>
ネタニヤフ首相は、国連総会での決議の翌日金曜、ユネスコのイスラエル代表に、イスラエルはユネスコから離脱すると表明するよう指示した。これにより、2018年1月から、イスラエルもアメリカとともにユネスコを離脱する。
アメリカはすでに10月の時点で、イスラエルに対する不当な決議を続けているとして、ユネスコからの離脱を表明しており、2018年1月1日からこれが発動する事になっていた。イスラエルもこれに加わる形である。
www.jpost.com/Israel-News/In-gratitude-to-US-Israel-to-announce-UNESCO-exit-519860
<石のひとりごと:国連決議の意味>
エルサレムはイスラエルの首都かどうか。この質問は、現状だけでなく、歴史的、考古学的にも明らかであることはいうまでもないが、究極のところ、聖書が真実であると信じているかどうか。もっというなら、聖書の神が神であると信じているのかどうか、というのと同じ問いかけになる。
なぜなら、聖書には、神が明らかにエルサレムを選んで、そこにイスラエルの神の名を置き、そこにイスラエルの王ダビデを立てた、つまりは、イスラエルは神が定めたイスラエルの首都であると言っているからである。(第二歴代史6:6)
聖書を持たないイスラム諸国が、トランプ大統領の宣言に反対しても不思議はない。しかし、イギリス、フランス、ドイツなどは伝統的に聖書を信じるキリスト教の国である。それが、たとえ表向きだけであったとしても、国としてにエルサレムがイスラエルの首都とは認めないと、”公式”に意思表示したということは、よく考えれば非常に恐ろしいことである。
それにしても、国連はどうなってしまったのだろうか・・・日本の動きを見てもあきらかなように、諸国は今、自分の国の発展のために、実際には、イスラエルに近づいているのに、国連という場においては、ポリティカルコレクトの顔を維持するか、アラブの機嫌をそこねないために、反イスラエルの立場を優先する。それが、たとえ、明らかに事実に反しているとしてもである。
国連は、それぞれの国が自分の立場を守ることに集中する単なる外交の場になり、本来の世界の平和と繁栄を守るという目的を見失ったということである。
結果、世界で最も資金を供給してきた国アメリカを怒らせて、資金を削減されてしまい、聖書関連の世界遺産をおそらく最多管理しているイスラエルが、ユネスコから離脱する。国連は、もう正しく機能しなくなっていると言ってもよいだろう。
トランプ大統領がしていることを見るとき、はだかの王様を見ているのに、はだかではないふりをしている人々前で、「王様ははだかだ。」と言っているようにみえてならない。皆、実はそれに気づいているのだが、公に認めないだけである。本当のことより、国益や関係重視という、日本人なら、十分理解できそうな悪循環に陥っているようである。結果アメリカは孤立するのである。
聖書には次のように書かれている。いかにも現状を表しているである。
見よ。わたしはエルサレムを、その回りのすべての国々の民をよろめかす杯とする。ユダについてもそうなる。エルサレムの包囲されるときに。その日、わたしはエルサレムを、すべての国々の民にとって重い石とする。すべてそれをかつぐ者はひどく傷を受ける。地のすべての国々はそれに向かって集まってこよう。(ゼカリヤ書12:2-3)
アメリカはいわば、今イスラエルをかついだ状態のようになっているが、確かに傷を受けたようである。
この聖書箇所によると、この後、エルサレムをイスラエルの首都と認めず、アメリカの宣言に反対する国々がエルサレムを包囲し、攻めてくることになる。
その時多くの国々が戦いの中で、盲目となり、混乱に陥る。しかし、聖書の神、すなわち、イスラエルの神に依り頼むエルサレムは、元のところにそのまま残ると聖書は預言している。
今後は、いかにポリティカルに間違っているようにみえても、エルサレム、イスラエルの背後におられる神を、たとえ信じなかったとしても、あなどったり、否定することは、決して益にはならないだろう。