アウシュビッツ解放80周年:反ユダヤ主義悪化と世界の憎しみに警告 2025.1.30

People visit the Nazi concentration camp Auschwitz-Birkenau in Oswiecim, Poland, on February 15, 2019. (AP Photo/Michael Sohn, File)

1月27日(月)は、国際ホロコースト記念日である。1945年のこの日、ガス室で110万人以上(ほとんどはユダヤ人)を殺害した、アウシュビッツ・ビルケナウ強制収容所が、旧ソ連軍によって解放されたことを記念して制定された記念日である。2025年の今年は、解放からちょうど80年を記念する日であった。

ポーランドのアウシュビッツでは、サバイバーや各国首脳など、50カ国以上から3000人が集まっての式典が行われた。

出席した首脳は、ポーランドのデュダ大統領はじめ、ドイツのショルツ首相、フランスのマクロン大統領、イギリスのチャールス3世国王、カナダのトルド首相、アメリカからは大統領府からは、ウィトコフ中東特使含む代表団が出席していた。

アウシュビッツを解放したのは旧ソ連だったが、ロシアのプーチン大統領は今年も招待されなかった。ネタニヤフ首相は、ICC(国際刑事裁判所)から逮捕状が出ているため、出席は見合わせた。

式典に出席したサバイバーは、10年前には300人だったが、今年は50人だった。

サバイバーの数は、イスラエル在住者では、昨年13万6989人だったところ、今年は12万3715人と1万人以上減っていた。

サバイバーのトバ・フリードマンさんは、年々サバイバーが少なくなっている中、もし全員いなくなったら、このような式典も行われなくなるのではないかとの危機感を表明していた。

また今、世界が孤立を深めて距離ができている。にもかかわらず、憎しみ合うようになっていると指摘。憎しみが私たちを破壊すると警告していた。

WJC(世界ユダヤ会議)のロナルド・ラウダー氏は、今の世界で、反ユダヤ人の動きが、活発になっていることに強い警告を発した。アウシュビッツがなぜ可能だったのか。それは、世界が、このことに沈黙を保ったためだったと述べた。愛の反対は憎しみではない。無監視であり、沈黙だと訴えた。

*予想を超える戦後の強制収容所の解放時の様子

以下はアウシュビッツに特化した映像ではないが、戦後に解放された強制収容所の様子である。発見した連合軍や、旧ソ連軍兵士たちの様子が、記録されている。人間はここまで残虐なことができうるのだということを改めて感じさせられた。

クリップには、強制収容所を解放した米軍の中にいた日本人のことにも触れられている。当時、アメリカにいた日本人は、真珠湾攻撃以来、敵視され、家族はアメリカの収容所にいる中で従軍していたと伝えている。

しかし、これについて、テルアビブ大学の調べによると、アウシュビッツの訪問者数は、昨年より10%多い、180万人だった。また、アラブ首長国連邦やインドネシアといったイスラム教国にもホロコースト記念館が新しく立てられているという。これらはわずかな光ではあるが、重要だと語っている。

また、日本では、この日、イスラエルのホロコースト記念館ヤド・ヴァシェムのヴァーチャルツアーを行った。ホロコーストの学びは恐ろしい過去や、ユダヤ人への哀れみを学ぶことではない。私たち自身の将来に備えることであると確信している。

“Remember the past, shaping the future”(過去を覚えて未来に備える)/ ヤド・ヴァシェム

石堂ゆみ

ジャーナリスト、元イスラエル政府公認記者、イスラエル政府公認ガイド、日本人初のヤド・ヴァシェム公式日本語ガイドとして活動しています。イスラエルと関わって30年。イスラエルのニュースを追いかけて20年。学校・企業・教会などで講演活動もしています。