「盾と弓作戦」続行でイスラム聖戦トップ指導者4人目死亡:ガザからロケット弾500発で停戦ならず 2023.5.11(日本時間12:00・現地朝6時)

Israel's Iron Dome air defence system intercepts rockets launched from Gaza City, on May 10, 2023. - Israel's army and Gaza militants traded heavy cross-border fire on May 10, with 22 Palestinians killed over two days amid the worst escalation of violence to hit the coastal territory in months. (Photo by MOHAMMED ABED / AFP)

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9日から戦闘に入っているイスラエルとイスラム聖戦は、10日、エジプトの仲介で、停戦になるとの情報が出始めていた。しかし、その直後にガザからイスラエルに向けて、ロケット弾が大量に発射され、イスラエルも空爆を再開。盾と弓作戦を続行する形が続いている。

現時点でガザからのロケット弾は、500発を超え、テルアビブからベエルシェバにいたる内陸にまで達している。

そのほとんどは迎撃ミサイルが撃墜しているが、その破片などでも家屋や車に甚大な被害が出ている。しかし、イスラエル側に直接の負傷者は報告されていない。

イスラエルもガザのイスラム戦線、ロケット弾発射地への空爆を続行しており、11日深夜早朝、イスラム聖戦の中でイスラエルへのロケット攻撃を担当していた指導者が死亡したと発表した。

これで、イスラエルが暗殺したイスラム聖戦指導者は4人となった。

ガザからロケット弾500発射:ベエルシェバにまで着弾も負傷者は出ず

9日早朝深夜にイスラエルがイスラム聖戦指導者3人を空爆で暗殺したことから始まった今回の戦闘。10日、エジプトが仲介に入り、イスラエルとイスラム聖戦の間に停戦への合意の可能性との報道が流れたが、その直後、ガザからイスラエルへ大量のロケット弾が発射された。

このため、イスラエル軍もガザへの空爆を再開。実際のところ、停戦合意が発動するのは、11日午前中になってからだとの情報も出ている。

ガザから発射されたロケット弾は、10日午後2―4時の間だけで、289発が発射された。イスラエル軍は、午後9時半(日本時間11日午前3時半)時点で469発と発表していた。しかし、これが全部イスラエルに到達したわけではない。このうち少なくとも107発は、ガザ領内に落下していた。

IDFによると、昨日270発が数えられた時点で、62発がイスラエルに届かずにガザ領内に落下。61発は、アイアン・ドーム迎撃ミサイルが迎撃し、1発は、実践での使用は初めてとなる、中距離迎撃ミサイルのDavid Sling(ダビデの投げ縄)が撃墜したとのこと。

以下は、みごとにロケット弾を撃墜するアイアン・ドーム迎撃ミサイルシステムの様子

www.timesofisrael.com/massive-rocket-barrages-target-tel-aviv-south-dampening-ceasefire-hopes/

アシュケロンでの被害(イスラエル消防局)

イスラエル側の被害は、スデロット、アシュケロンの倉庫、家屋、停車中の車などが、ロケット弾そのものだけでなく、撃墜した時の破片によっても激しい被害が出た。キブツ・ニール・アムでは、家屋の屋根が大きく破損したが、住民に負傷者は出ていない。

ベエルシェバの公園にもロケット弾が着弾したが、建物への軽微な損傷のみ。ネティボットでは、破片が家屋を損傷したが、こちらも、ロケット弾による直接の負傷者の報告はない。

イスラエル側のガザ周辺40キロ圏内では、緊急事態宣言が出され、住民は安全地域へ避難するか、防弾シェルター付近で待機している。停戦になる可能性が出てきた後も、軍はこれを金曜まで延長すると発表している。

www.timesofisrael.com/homes-damaged-as-gazan-rockets-bombard-south-hampering-ceasefire-efforts/

イスラム聖戦のロケット攻撃指導者死亡:イスラム聖戦トップ4人目

イスラエル軍は、これまでに、ガザのイスラム聖戦のロケット攻撃発射地、53箇所への攻撃を実施。20人が死亡。42人が負傷と伝えられていた。

www.ynetnews.com/article/rjevlrtv2#autoplay

その後、ガザ南部のカン・ユニスで、イスラム聖戦のロケット攻撃を担う指導者、アリ・ガリが死亡したことが明らかになった。イスラム聖戦指導者4人目の死者となる。これで、ガザでの死者は21人となった。

イスラエル軍の懸念は、イスラム聖戦よりもはるかに大きい組織で、武器弾薬も多量に、またよりすすんだ兵器を持つハマスが、攻撃してくれば、戦闘は拡大し、長引くことである。しかし、今のところ、ハマスにその動きは出ていない。

イスラエル軍はイスラム聖戦を徹底的に攻撃している:ネタニヤフ首相から国民へ

Haim Zach (GPO)

ネタニヤフ首相は、10日、ガラント防衛相と並んで、テレビを通じて国民にメッセージを発した。

ネタニヤフ首相は、停戦の情報もある中だったが、イスラエルは、イスラム聖戦との戦いからまだ手を抜いたわけではない、まだ終わったのではないと強調した。

イスラエル軍は、現在、戦闘の真っ只中にあり、イスラム聖戦のロケット弾発射関連地点ににこれまでになかったほどのダメージを与えていると語った。

これにより、イスラエルに被害を与えようとするものがどれほどの目にあうのかを思い知らせて、攻撃抑止力を回復させたと語った。

またネタニヤフ首相とガラント防衛相が、一緒に立つことで、イスラエルの内部分裂が、防衛には全く影響をおよぼしていないことを国内外に強調したねらいもあったとみられる。

www.timesofisrael.com/netanyahu-says-idf-at-height-of-battle-as-resumed-fighting-sinks-ceasefire-bid/

石堂ゆみ

ジャーナリスト、元イスラエル政府公認記者、イスラエル政府公認ガイド、日本人初のヤド・ヴァシェム公式日本語ガイドとして活動しています。イスラエルと関わって30年。イスラエルのニュースを追いかけて20年。学校・企業・教会などで講演活動もしています。