目次
司法制度改革案に関する市民たちのデモと警察との衝突が、再び大きくなってきた。
昨日10日、政府が、司法制度改革に向けた法案の一つについて、国会での採択を決行し、1回目可決で通過した。2回目、3回目は本日11日午後(日本時間夕刻)に行われることになっており、通過すると正式に法律として成立することになる。
これを受けて、反対派たちは、宣言していた通り、11日朝7時(日本時間午後1時)から、「混乱の日」と称する、反司法制度改革、反政府デモを始めた。
テルアビブ近郊のヘルツェリアでは、道路にテントを並べて通行を妨害した。エルサレムでは国会前で、テルアビブ市内始め全国では、主要道路を封鎖して、イスラエルの旗を振って反対を訴えるデモを開始している。
テルアビブ市内では、放水銃を放つ警察との衝突が始まっている。ハアレツ紙によると、全国ですでに40人が逮捕されたとのこと。
今後、デモは、ベン・グリオン空港第3ターミナルでも行われる予定で、混乱が予想されている。
מפגינים הבעירו מדורה וחסמו עם אבנים, חפצים וברזלים את כביש 5 בסמוך למחלף מורשה לכיוון מערב pic.twitter.com/HHsFK8pPzV
— Bar Peleg (@bar_peleg) July 11, 2023
המשטרה הביאה את הנשק האולטימטיבי. שוטרים אלימים, שבאו להרביץ. יודעים שאנחנו עיתונאים והודפים בכוח. עצרו לידי את צלם הארץ רמי שלוש. הפילו אותו לקרקע ולפתו אותו. אחכ הרימו וסחבו אותו כמה בריוני משטרה. לקחו אותו עד שמישהו למעלה התעשת ואחרי כמה דקות שוחרר. המכתזית כבר פה בהיכון. pic.twitter.com/HazhMRkOvr
— יואב איתיאל מדווח כי (@yoavetiel) July 11, 2023
今後は、ベン・グリオン空港などでも混乱に陥ると予想されている。また、全国的なストも行われるとみられており、反対者たちは、「政府が止まらないなら、国全体が止まる」と言っている。
こうした全国的なデモ・ストは、今年2月にも行われていた。以下はこれまでの流れ。
反司法制度改革とこれに反対するデモ・これまでの流れ
現ネタニヤフ連立政権が、就任まもなくの今年1月に提言した司法制度改革案(オーバーオール法案)。これは、簡単にいえば、司法である最高裁が、行政である政府の方針を覆せないようにする、司法の権力を弱体化する法案で、結果的に、行政が司法の上に立つこと(オーバーオール)になる法案のことである。
これは、一つの法案で終わるのではなく、主に次の4つのポイントに向けた、複数の法案を出して、法律として可決していき、最終的に、政府が司法を上回る権力を持つようになるという流れである。
① 政府の法案を却下するには、最高裁裁判官15人全員の一致。もしくは“明らかな(12-14人)一致”が必要とする。また仮に却下しても、その法案はお箱入りとならず、政府が裁判官を解任して新しくした後、もう一度審議することができる。
② 最高裁判官選考委員会の構成を、現在の9人から11人にする。9人は法務大臣、首相、国会から選ばれた2人(与党と野党)、弁護士会から2人、最高裁判所から3人となっているところ、法務相が選ぶ“公の代表”2人が加えられる。この2人は、弁護士会ではなく法務相が選ぶ。こうなると、11人のうち、過半数の6人が与党関係者ということになり、常に過半数で、与党が支配権を持つ形である。
③ 最高裁が、法案の審議において、“合理性”基準に照らして却下することを禁ずる。何を意味するかだが、専門的に見て、出された法案が基本法に合法的かどうかを判断して却下することができなくなるということである。そうではなく、その時に政治的に必要かどうかがより重要な法案であれば通すべきということである。基本法へのレビン法務相はこれを司法制度改革の第一段階だとも言っている。
④ 政府や大臣の法律顧問の地位が格下げとなり、政府の政策決定に障害にならないようにする。
これらの法案が、法律になっていくと、民主主義の原則である三権分立が壊れ、政府を監視する力が失われて、今の右派政権の独裁状態なり、もはやイスラエルの国の性質を変えてしまうことのなるとの懸念が噴出している。
特に、主にテルアビブ在住の世俗派左派勢力市民たちから全国規模で、またイスラエル軍の予備役兵たちからも「独裁には従わない。」と激しい反発が続いて、イスラエルの治安問題にまで、懸念が拡大している。
しかしそれでも、政府は、こうした市民によるデモにひるむことなく、国会での司法制度改革法案の審議を進め始めており、①、②については、20万人規模のデモが続く中、2月に国会での審議、1回目を可決した。政権側は、4月の過越までに、2回目、3回目の審議を行いたいところであったが、あまりにも反対が多く、衝突にもなりはじめたため、ネタニヤフ首相が、採択は過越以降にすると、一時的な延期を発表したのであった。
この間、ヘルツォグ大統領が、官邸を解放して右派左派議員が、妥協案をみつけられるようにと、交渉を行ってきたが、今の所、有効な妥協案はみつかっていない。
こうした中、6月、政府は、最初の改革案として、最高裁の裁判官を指名する司法選考委員会を構成する国会議員2人を選ぶ国会での選挙が行われた。与党としては、二人とも政権関係者にと考えていたと思うが、予想外にも1人は、野党議員が選ばれたのであった。
これは与党内部にも、野党議員に投票した議員がいることを意味する。現在の国会は、与党が過半数なので、必ず与党側が勝利するはずだからである。政権内部でも分裂があるのではないかとの視点から、ネタニヤフ政権の支持率が、低下する結果となった。
ひるまない政府:10日新たな法案審議1回目通過
しかし、政府は、それでも司法制度改革を進めることをやめず、昨日7月10日、今度は③に関する法案を国会で審議し、1回目可決で通過した。2回目、3回目を本日11日に行うとしている。
③の法案は、“合理性”基準に照らして、最高裁が、政府の法案を却下するという権利を剥奪するというものである。具体的な例としては、次のケースが挙げられている。
ネタニヤフ首相は、政権を立ち上げる際、ユダヤ教政党シャスのアリエ・デリ氏を内務相、保健相にしようとした。しかし、デリ氏が、汚職を繰り返して刑務所で実刑まで受けた人物であったことから、最高裁はこの人物を閣僚にすることは、“合理性”に欠けるとして、これを却下した。このため、デリ氏は閣僚になれなかった。ポジションは今も空いたままである。
したがって、この法案が、2、3回目を通過した場合、デリ氏が閣僚として返り咲いてくる可能性がある。
この動きに伴い、先週はテルアビブ市内とベン・グリオン空港でも大規模なデモがあり、警察が放水銃を使用し、逮捕者も出る衝突となった。その後、政府閣僚自宅前でもデモが発生。8日、27回目となる安息日明けの恒例のデモは、テルアビブだけで15万人とみられ、全国各地でも行われた。
しかし、それでも政府は10日に、国会で1回目審議を行い、賛成64、反対56で、これを通過させた。本日11日午後夕方から、2回目、3回目の採択が行われることになっている。
www.timesofisrael.com/bill-to-erase-judicial-reasonableness-test-for-politicians-passes-1st-reading/
テルアビブで市民が「抵抗の日」を宣言:警察と衝突中
Times of Israelによると、講義デモは、午前7時(日本時間午後1時)全国の交差点で始まっており、ベン・グリオン空港へ続く道路を含む全国での道路が封鎖されているもようである。警察は放水銃などで対処している。
ハアレツ紙によると、現地午前11時半時点ですでに40人近くが逮捕されたとのこと。
石のひとりごと:政府はなぜここまで頑固?
またもやイスラエルで、ユダヤ人どうしの殴り合いが始まっている。なんとも悲しい様相だ。それだけ、イスラエル人たちは、国を大事に思っているということでもある。彼らには、他に行くところはないので、今いるイスラエルが、民主主義から離れて、独裁のようになることを、絶対に受け入れられないのだろう。
それにしても、これほどの国民の反対があるにもかかわらず、政府が、司法制度改革を止めないのはどうしたことか。その背景にあるのは、今、強硬右派政権が、政権を握っているという体制。これが聖書に書かれた約束を実現していくためのチャンスと捉えているという一面がある。
政府がある程度権力を持って、強硬に動いていかなければ、西岸地区を併合したり、神殿の丘に第三神殿を建てることは難しい。左派が少しでも政府にいるなら、こうした極端な動きは実行できないからである。結局のところ、ネタニヤフ首相も右派なので、こうした動きに合意しているのだろう。
こうなると、聖書という神の要素がからんでいることもあり、政府が左派たちのデモに、そう簡単に折れることはない。今日明日、イスラエルの国はどうなっていくのだろう。死傷者が出ないようにと願うばかりである。