5ヶ月ぶりJCPOAとイランとの交渉:合意も決裂もなし 2021.12.3

ウイーンでJCPOAとイランが協議している建物(メディアは入れていないもよう) スクリーンショットhttps://www.youtube.com/watch?v=shND-bfXSSk

5ヶ月ぶりJCPOA交渉再開も合意できず

世界先進国(イギイス、フランス、ドイツ、中国、ロシア、EU)とイランとの核合意(JCPOA・包括的共同計画)再建に関する話し合いが、11月29日、5ヶ月ぶりにウイーンで再開となった。JCPOAから離脱しているアメリカは間接的参加である。

しかし、イランは、話し合いに応じたものの、強硬派ライシ大統領になったこともあり、協議は予想通り、平行線をたどっている。さらに、イランは、この会議中にもウランの濃縮を続けるという状態であった。

①イランの主張
イランはアメリカが再開した経済制裁の完全解除。イランは制裁の解除を見極めるまでは、合意を実行することはない。さらには、政権が変わっても合意から離脱しない保証を提示すること。核以外のミサイルなどの兵器については、問題外とする。(アメリカは受け入れ不能)

www.nikkei.com/article/DGXZQOCB02DIV0S1A201C2000000/

②アメリカの主張
イランが、高濃度のウランとそれを製造する遠心分離機を排除し、2015年の合意基準に戻ること。もし受け入れないなら、さらなる経済制裁に踏み切る。(イランは受け入れ不能、経済制裁恐れず)

www.aljazeera.com/opinions/2021/11/29/will-iran-become-latent-nuclear

*イランの核開発の現状

イランの核施設
ウィキペディア

JCPOAでの合意によると、イランの核開発は平和的利用ということで、ウランの濃縮は3.67%まで。核濃縮工場2箇所(ナタンツ、フォルドー)について、ナタンツでは、遠心分離機を5000台までとし、ファルドーの濃縮は停止する、となっている。

しかし、イランは、アメリカが合意から離脱して以来、イランも合意から離脱すると宣言。IAEA によると、イランには最大60%までに濃縮されたウランが17.7キロあるとのこと。

ここから核兵器の90%までは目前であるが、アメリカは、イランはまだ、ミサイルの核弾頭の製造にまでは進んでいないとみている。しかし、数週間から数ヶ月で可能になるとのこと。

昨年11月、イランの核開発中心人物と目されるファクリザデ博士が暗殺されたが(おそらくはイスラエルによる)、その後もイランの核開発を遅らせることはできなかったようである。

www.timesofisrael.com/killing-of-top-scientist-didnt-slow-irans-nuke-work-official-tells-israeli-tv/

イスラエルでは、こうしたキーパーソンの排斥と、強大な経済制裁を課すことで、イランが白旗をあげると考えた、トランプ・ネタニヤフ時代の策略が完全に失敗に終わったと結論ずける記事も出ている。

www.timesofisrael.com/israel-fears-us-will-settle-for-less-for-less-iran-nuclear-deal-report/

*以下はイランの核開発に関する説明(BBC)

ベネット首相の警告:イランに妥協してはならない

ベネット首相は、もはやイランが核開発をやめるということはありえないとして、ウィーンでの会議の直前、イランと妥協して、経済制裁を解除しないよう、関連諸国に警告するメッセージをツイッターで発信した。

ベネット首相は、イランが求めているのは、無条件の経済制裁解除だと警告(その通りになっている)。しかし、経済制裁の解除をしても、もはやイランが核兵器開発を止めることはなく、制裁解除で流入する資金は、イランに給与を払うようなものだと述べた。

またベネット首相は、イランのライシ政権が、旱魃で苦しむ人々が政府に対するデモを行なった際に、自国民を銃殺したことをあげ、このような政権に妥協することはありえないと訴えた。これに対し、アメリカのブリンケン国務長官は、「イスラエルの指示は受けない」と反論した。

www.timesofisrael.com/as-iran-talks-begin-bennett-urges-world-powers-resist-regimes-nuclear-blackmail/

イスラエルがイランを攻撃する可能性は?

イランと英仏独中露との協議においては、今のところ、JCPOAに関しては、なんの合意にも至っていないが、とりあえず、今は話し合いを継続していくということで合意したと伝えられている。

イランが核開発を今も続けているのであれば、これは単なる時間稼ぎにしかならないだろう。

www.nikkei.com/article/DGXZQOGR29CFW0Z21C21A1000000/

F35 wikipedia

1981年、同様の状況下で、イスラエルはイラクの核施設を攻撃した。この作戦は成功し、それ以降、イラクは核兵器をつくることはできなくなった。今、イスラエルが同じことをイランに対して行うのかどうかが注目されている。

イスラエルはイラン攻撃のために50億ドルを計上し、準備をすすめているとし、イスラエル軍は、イランの核開発を攻撃する準備はできていると語っている。しかし、イランへの攻撃は、イラクもはるかに難しい。距離が遠く、核開発拠点が散在しているからである。

また、イランが支援しているシリアやヒズボラ、またハマスが、いっせいにイスラエルへ反撃してくる可能性もある。イラン攻撃の時期は予想より早いとの見方もあるが、一方で、では完全にそれをなしとげることができるかと聞かれると、イスラエル軍からの明確な返答はなかったとTimes of Israel は伝えている。

攻撃の時期などは、ぜったいに悟られないようにしていると思われるので、その時まで、だれにもわからないだろう。

www.timesofisrael.com/what-israels-talking-about-when-it-talks-about-striking-irans-nuclear-program-war/

石堂ゆみ

石堂ゆみ

ジャーナリスト、元イスラエル政府公認記者、イスラエル政府公認ガイド、日本人初のヤド・ヴァシェム公式日本語ガイドとして活動しています。イスラエルと関わって30年。イスラエルのニュースを追いかけて20年。学校・企業・教会などで講演活動もしています。