イスラエル国内で論争になっていた、超正統派で対象となる年齢の若者の徴兵問題。
昨年6月に超正統派のユダヤ教神学校(イシバ)に在学中の若者については、基本的に、徴兵を免除するとした閣議決定が、3月31日に期限を迎えることになっている。
これについて、超正統派たちが延長を求めるデモを行ったり、政府が延長を申請する試みもあったが、高等裁判所は、もはや延長は認められないとして、28日、予定通り3月31日でこの決定事項が、期限切れになると発表した。
これをもって、4月1日から、対象年齢となる学生が在籍するイシバへの支援金が、停止されることとなった。
Times of Israelによると、支援金供与の停止対象とされるのは、兵役義務を免除されていた約5万人が在学する1257校のイシバである。
この中で、学生3万6000人が在学する371校については、国からの支援金が30-70%減額になるという。
*イシバへの支援金について
イスラエルでは、一般の世俗市民の場合、納税とともに、高卒から3年間、女性は2年間、イスラエル軍に従軍する義務がある。
一方、イスラエルは建国以来、ユダヤ教超正統派は、神に祈る人々、いわば祭司であり、それで国を支える役割を果たしていると考えられてきた。
このため、ユダヤ教神学校に通って、ラビや祭司になろうとする若者の場合は、兵役を免れるだけでなく、学費への支援金が支給されるということが、国の法律で決められている。
しかし、建国から75年を過ぎた今、世俗派の息子娘たちが、納税しながら徴兵され、時に死傷する一方、超正統派は、税金も従軍も免除されている上、国の支援金まで受けていることへの不満が出るようになっていた。
加えて対象になる超正統派人口が、全人口の13%にまで増えたことで、一般市民の不満がもう限界に達したということである。
イスラエルはユダヤ教という宗教と、スタートアップで世界にその頭脳で奉仕するという世俗派が同居している国である。どちらもイスラエルの顔である。
今回、超正統派の従軍義務に大手がかけられたということは、イスラエルにとっては歴史的と言っても過言ではないかもしれない。
ガンツ氏は、これはもう仕方がないことであり、本来あるべき決断だと評価した。一方、アリエ・デリ氏など、宗教政党の指導者たちは、「聖書と祈りで仕える人々にとって大きな害になる」と反発する声明を出した。
ユダヤ教政党は、もし超正統派にも従軍義務が課されるようになるなら、連立を離脱すると言っている。もし離脱したら、今のネタニヤフ政権は解散に追い込まれる。
www.timesofisrael.com/gantz-welcomes-obvious-high-court-ruling-to-freeze-funding-to-haredi-yeshivas/
しかし、4月1日から、一部の奨学金は停止されるものの、実際の従軍については、まだ先になるようで、それまでに、もし現政権が崩壊して新政権になれば、また覆すことも可能になるというタイミングでもある。
いわば、ユダヤ教政党が連立に残留する可能性も残した形といえる。ネタニヤフ首相の、実にしたたかな政治手腕であったかもしれない。
高等裁判所がこの決断を出したのは、安息日入り直前であったので、今後、ユダヤ教政党がどう出てくるのかは、安息日明けに明らかになってくるものと思われる。