西岸地区銃撃テロでユダヤ人2人死亡:過激ユダヤ人入植者ら400人復讐暴動でパレスチナ人1人死亡 2023.2.27

フワラで放火された車両 Ynet

フワラでのテロでユダヤ人兄弟2人死亡:テロリストまだ市中に

西岸地区では25日(土)に過激な入植地ユダヤ人12人が、西岸地区北部でパレスチナ人たちに投石、車両に放火して、負傷者が出た。するとパレスチナ人40人が投石しかえしたとのこと。

www.timesofisrael.com/settlers-allegedly-hurl-stones-torch-cars-in-northern-west-bank-palestinian-town/

26日(日)夜、西岸地区の幹線道路60号線を走っていた車が、ナブルス南部のパレスチナ人地区フワラ(人口7000人)で、パレスチナ人による銃撃を受け、乗っていたユダヤ人兄弟、ハレル・ヤニヴさん(21)と、ヤゲル・ヤニヴさん(19)が死亡した。2人は、西岸地区ナブルスに近い、ユダヤ人入植地ハル・ブラハの住民だった。

2人を撃ったパレスチナ人は、渋滞であったことから、かなり至近距離で、手製のマシンガンのようなもので、2人を撃っていた。2人はヘリコプターで病院へ搬送されたが、すぐに死亡とされた。テロリストは、そのまま足で逃走。イスラエル軍が行方を追っているが、まだ捕まっていない。

ギャラント防衛相は、西岸地区の道路も含めた防衛と治安維持のために、増援部隊を配置するよう指示した。

www.timesofisrael.com/two-israelis-shot-dead-in-west-bank-suspected-terror-attack/

*神からの大きな平手打ち:犠牲者兄弟のヤニヴさん家族

大事な将来ある息子2人を失ったヤニヴさん家族。非常に仲の良い家族だったようである。母親のエステルさんの痛みは想像できない。エステルさんは、息子たちとの楽しい時間大きな穴は塞ぎようがないと語っている。2人の葬儀は今日、ヘルツェルの丘で行われる。

www.jpost.com/israel-news/article-732785

フワラで過激ユダヤ人入植者400人が暴動放火・パレスチナ人1人死亡

上記事件の数時間後である。事件現場となったフワラに、過激なユダヤ人入植者たち400人が家屋や車両に放火する暴動に出た。少なくとも15軒の家屋と、25台以上の車両が被害を受けたという。暴動は近隣にまで拡大していった。

イスラエルの国境警備隊が、過激派らを取り押さえようとして催涙弾まで使う騒ぎになった。治安部隊が、放火された6軒の家の住民を避難させている。国境警備隊は、ユダヤ人過激派6人を逮捕し、暴動は数時間後の深夜すぎに沈静化した。

この一連の暴動で、フラワ近隣のザタラ(紛争が多いユダヤ人入植地タブアハ近く)で、パレスチナ人1人(37)が死亡した。死因が、過激派による銃撃か治安部隊による銃撃かはまだ明らかにはなっていない。いずれにしてもユダヤ人側による死者も出たということである。

パレスチナ救急隊(赤新月社)によると、390人が負傷し、20人が病院で手当を受けたという。過激入植者たちは、救急車3台にも攻撃してきたと言われている。

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ユダヤ・サマリア地区副委員長がフワラ一掃を示唆・スモルトリッチ西岸地区担当が合意(ツイッター)

先にユダヤ人2人が、フワラで殺害されると、ユダヤ・サマリア地区副委員長(入植地の副市長のような存在)のデービッド・ベン・シオン氏が、ツイッターで、「今日、フワラで子供たちが殺された。入植活動に関する話し合いや強化などはもう十分だ。決断を持って対処しなければならない(防衛から攻撃への方向転換という意味)。あわれみは不要だ。フワラは抹消されなければならない。」と書き込んでいた。

これに、宗教シオニスト党党首で、先週、正式にイスラエル軍の元で、西岸地区を担当する者としてのポジションを正式に与えられていたスモルトリッチ氏がいいねを投稿していたという。

ベン・シオン氏は暴動が実際におこると、「怒りはわかるが、法を自分の手で履行しないように」との書き込みを出したが、もはや遅しだろう。スモルトリッチ氏は、だいぶ経ってから、「兄弟たちよ。痛みはわかる。テロには、武力で、また入植地拡大といったリアルな方法で報復している。無謀な行為はしないほうがよい。政府にまかせておいてほしい。」と述べた。

ヘルツォグ大統領は、ただちに「これはイスラエルのやり方ではない。」と暴動を非難する声明を出した。

なお、この一連の暴力の応酬は、ヨルダンがアカバで仲介しようと、アメリカとエジプトも協力して、イスラエルとパレスチナの代表が話し合いをたその日の出来事であった。(次項詳細山椒のこと)

ラピード筆頭野党党首は、「スモルトリッチの民兵が暴れ回った。ヨルダンでの合意を台無しにしようとして、ハワラを抹消しようとしたのだ。」と非難した。

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入植者たちが前に撤去された前哨地エヴヤタルに集結

この一連のことがあった26日、入植者たちは、丘の上にあり、パレスチナ人の土地の境界線がわからないなどの理由から2021年に強制撤去された前哨地、エヴヤタルに集結。再建の決意を表明している。以下は仮設テントで神への賛美を歌う入植地ユダヤ人たち。

ネタニヤフ首相は、2人のテロ犠牲者への追悼を表明した上で、「法を自分の手で行わないように。今は治安部隊が、全力を尽くしている。この地域でユダヤ人が狙われるのは初めてではない。最近攻撃は増えていた。治安部隊が、イスラエルの治安維持のために、必要な対処を行っている。」との声明を出した。

国家安全保障担当ツァヒ・ハネグビ氏は、26日朝、入植地建設9500軒分の許可を出して、この日行われたアカバでのイスラエル・パレスチナの交渉の結果をひっくり返す発表を行った。ネタニヤフ首相は、アカバでの交渉で、入植地拡大を止めるとは言っていないと主張している。

www.timesofisrael.com/netanyahu-rushes-to-deny-settlement-freeze-announced-after-aqaba-summit/

石のひとりごと

2人の息子を失ったレビンさん一家

恐ろしい殺し合いがエスカレートしつつある。21歳と19歳の息子を失った母親はいったいどうやって生きていくのだろうか。

2人の若い青年を殺された入植者たちの怒りはもはやとめられない。

一方、パレスチナでも1日に11人が殺された日もあった。双方の憎しみは増し加わる一方である。

ともかくも、人の殺し合いが終わるように今とりなしが急がれるが、今はただエスカレートする様相でしかない。

それにしても、この一連のことを書くにあたり、ユダヤ人2人が殺された記事を先に書くか、ユダヤ人入植者たちが暴動をおこしてパレスチナ人1人が死亡したことを先に書くか、ちょっと考えさせられた。

どちらが先かで、どちらが悪いという印象になってしまうかもしれないからである。最終的に、ユダヤ人2人が殺されたことを先にしたのではあるが、実際には、その前日の土曜日に、入植者たちが、パレスチナ人に投石するなどの暴力を働いていたということであった。

www.timesofisrael.com/settlers-allegedly-hurl-stones-torch-cars-in-northern-west-bank-palestinian-town/

とはいえ、その前には、ユダヤ人の子供2人が殺され、続いてパレスチナ人11人が殺されという中でのことであった。その後にも小競り合いがつづいていた。いったいどちらが先か、どちらが悪いのかというのは、文字通りの卵か鶏か状態で、もうそういう判断の段階ではない。人が死んでいる以上、どちらも神の前に、罪人であることには間違いはない。

このままなんとか沈静化してくれたらよいが、今、イスラエルでは、強引に西岸地区への領土拡大を目標にする政治家たちが、全面に出始めている。パレスチナ人も対処を強いられるだろう。特に来月23日からはイスラム教ラマダンなので、パレスチナ人たちの士気はあがると予想される。時期的にも最悪といえる。そういう意味では今は、イスラエルに責任の重心があるといえるかもしれない。

最近、ヤド・ヴァシェムのヴァーチャルツアーで、ユダヤ人の視点で、しっかりとホロコーストを伝えたのだが、その後に、一人の方から、「ユダヤ人は、こんな苦難を通りながら、どうして、イスラエルはパレスチナ人を虐殺できるのか。どうしてか。」という質問をいただいた。

今回の事件を通して、この方の混乱は増したことだろう。こちらとしても、人間的レベルでの言い訳はできない。ただ、ユダヤ人は多様なので、同じイスラエルに属するユダヤ人でも、こんな極右過激派もいれば、こうした同胞を摘発する完全な左派ユダヤ人もいる。

たとえば、イエシュ・ディンという、イスラエルのユダヤ人法律家組織は、今回の事件をはじめ、西岸地区入植者たちの暴力を摘発し続けている。ヘルツォグ大統領が言っているように、今回のような暴動がイスラエルのやり方ではないということもまた、うそではないのである。

しかし、こうした事態が続けば、今後、イスラエルは、国際社会からもさらに非難の的となっていくだろう。だからこそ、これからの時代は、パレスチナ人を覚えるとともに、イスラエルの問題を直視してもなお、愛し、神にとりなし続ける人々が必要になってくるということが見え始めている。

石堂ゆみ

石堂ゆみ

ジャーナリスト、元イスラエル政府公認記者、イスラエル政府公認ガイド、日本人初のヤド・ヴァシェム公式日本語ガイドとして活動しています。イスラエルと関わって30年。イスラエルのニュースを追いかけて20年。学校・企業・教会などで講演活動もしています。