日本•イスラエル国交70周年記念イベントに参加して 2022.12.2

11月22日東京での70周年記念イベント/在日イスラエル大使館主催

今年は1952年にイスラエルと日本が正式に国交を樹立してから70年にあたる。イスラエルでは日本大使館が、記念イベントを行なっていたが、東京では、22日、イスラエル大使館が、70周年イベントを実施した。大使館関係者のご好意で筆者も参加させていただいた。

参加者は、イスラエルのギラッド・コーヘン大使はじめ、大使館詰の外交官たちが迎える中、林外務大臣と防衛省からの代表など、500人近い人々が集まり、立食でのパーティが行われた。

ギラッド・コーヘン大使 Wikipedia

最初に挨拶に立ったコーヘン大使は、日本語での開会の挨拶のあと、日本とイスラエルは、その伝統も生き方も全く違うという話から始めた。

両者が共にいることは、油と水、またはフムス(イスラエルひよこ豆ベースのペースト)と寿司がともにいるようなものだ。それほど違うと語り、会場は笑いでつつまれた。

「皆さんの多くが、準備もそこそこに、さっさと事を始めてしまうイスラエル文化と、非常に丁寧で、忍耐をもって詳細に準備する日本文化との衝突を経験されたでしょう。

時々、お互いに我慢し合わないといけない時があります。それは私の秘書のまりこさんが一番よく知っていることです(笑)。しかしだからこそ、両国はうまくいくのです。」と会場の笑いをとっていた。

イスラエルでは、失敗も次に活かせるのでそれも有益という視点なので、まずはやってみる式なのだが、日本は、失敗を許さない文化なので、できるだけ失敗しないようにと完璧に準備するという違いということである。

また、この日の印象的な違いは、日本の君が代が歌われたとき、だれも一緒に歌わなかったが、イスラエルの国家、ハティクバが歌われると、会場から共に歌う声が聞こえたことであった。

しかし、大きな違いはあっても、日本とイスラエルは、共通の価値観、防衛に関する課題、民主主義など多くの点を共有する国どうしである。困ったときには助け合う関係であり、常に互いをもっと知りたいと願っている国どおしだと大使は強調した。

実際、この10年ほどの間に、経済、防衛、科学、イノベーション、文化、観光(まもなくエルアル航空が日本との直行便を開始予定)など様々な分野で両国の関係は非常に深まったということである。コーヘン大使は、これからも関係がさらに深まるよう、イベントの参加者一人一人がそれぞれの分野で、両国の関係を深めてほしいと呼びかけた。

林外相 首相官邸HPより

林外務大臣は、イスラエルが建国74年を迎えたことに祝いを述べ、みなさんは常に私より年上だと語って笑いをとった。(林大臣は61歳)また戦争中に、杉原千畝氏のビザで、6000人のユダヤ人が日本を通過して生き延びたこと、一方、東北大震災の時に、イスラエルが最初に医療団を送ってくれたことに深い感謝を表明した。

浜田防衛大臣は代理を派遣。この8月にガンツ防衛相が来日したことに感謝を表明し、共に平和と同じ価値観、民主主義を追求していきたいと述べた。

その後、イスラエル大使や、日本政府代表者たちで酒樽をわり、祝い酒となった。会場には赤い桝に入った酒が配られていた。

またサプライズとして林大臣が、なんと、ステージで、イスラエル人ミュージシャンと共に立ち、ギターを弾きながら歌を歌った。なかなかお上手であったが、曲はなぜか、ビートルズの「Let it be」。

立食で出ていた食事は非常においしかった。知っている人はほとんどいなかったが、イスラエル支持で知られる中山泰秀元防衛副大臣と話す機会があった。非常に感じのよい親切な方であった。

どの国にかはわからないが、いろいろな軍服姿の人も少なからずいた。制服姿のエルアル関係の人もいて、東京直行便就航記念のチョコレートを配っていた。

珍しく小学生の一団がいたので聞いてみると、東北大震災以来、イスラエルとの交流を深めている宮城県の子供たちであった。会場では、歌を披露してくれた。

戦時中、ユダヤ難民の入り口となった敦賀からは市長とムゼウム館長など、関係者がこられていた。また八百津の杉原千畝記念館の関係者の方々にもお会いした。神戸からはだれもきてなかった。敦賀チームからは、「敦賀は通過だった。神戸こそユダヤ人たちが滞在したところだよ。がんばってください。」と激励いただいた。

敦賀関係者によると、神戸でもその関係の活動をしているグループはいくつかあるのだが、神戸市が動かないので、どうにもばらばらで、連携がとりにくいのだという。神戸市にとっては財産であるこのテーマに、市をあげて取り組む価値は大いにあるのではと励まされた。

以下は、ラピード外相(現首相)と林外相の70周年メッセージ(5月15日)

日本・イスラエル自由貿易へ王手:経済連携協定(FTA)にむけた共同研究開始

日本とイスラエルは、国交70周年を記念して、FTAに関する共同研究を開始すると発表した。簡単にいえば、自由貿易、関税を撤廃に近い状態にすることで貿易をさらに促進させることへ一歩を踏み出すということである。

FTAについては、韓国がすでに、研究期間を終え、今年5月にイスラエルとの合意に至っており、双方ともに、関税を撤廃する品目は95%を超えている。日本は経済大国世界3位なので、イスラエルとしても日本との自由貿易は大きな前進となる。

www.jetro.go.jp/biznews/2021/05/52fda7f15f41dfb7.html

また、このイベントの後の11月28日、日本の王手企業、富士通が、2023年にテルアビブに、主に通信セキュリティ技術に関するR&Dを開設し、世界的な技術者を採用すると発表した。富士通はすでにベン・グリオン大学との連携も行なっている中での発表である。

イスラエル企業と連携する企業は、三菱商事、住友商事、三井物産、旭化成、オリンパス、オリックス、キャノン、ソニーなど42社

www.nikkei.com/compass/theme/66449

*R&D(Research and Development)研究開発

新しい研究開発のために費用や人材に投資すること。イスラエルには、イノベーションに強い人材が多いので、世界の大手330社が、テルアビブにR&Dを置いている。日本は若干出遅れたが、今こうした研究への投資も進んでいる。

石堂ゆみ

ジャーナリスト、元イスラエル政府公認記者、イスラエル政府公認ガイド、日本人初のヤド・ヴァシェム公式日本語ガイドとして活動しています。イスラエルと関わって30年。イスラエルのニュースを追いかけて20年。学校・企業・教会などで講演活動もしています。